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とある騎士の遠い記憶  作者: 春華(syunka)
第2章:生い立ち編1~訓練施設インシデント~
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第22話 インシデント18:因縁の対決

戦闘訓練が本格的に始まり8ヶ月が経とうとしていた。シュタイン王国は実りの季節を迎えていた。


バルドは訓練に度々(たびたび)『狩り』を取り入れた。生きた『獲物』を一瞬の一撃で仕留める事、遠征時の食料調達を身に付ける事、そして組織構成に合わせた指揮統制が取れる事の3つを目的としていた。


「セルジオ様、本日の『狩場』はサフェス湖湖畔にまいります。

西門よりエステール伯爵家領内を抜け西の森からサフェス湖へまいります。

獲物はウサギとカモにございます」


バルドは狩場と獲物を伝えると携帯する武具と調達する調理具はセルジオに準備をさせた。



『狩場』への道中は馬を使う。捕った獲物はその場で血抜きをして持ち帰る。狩りから血抜き、持ち帰るまでの工程で必要な物を準備させる事も全体のイメージが能動的な絵図面で構想できるかの訓練であった。


「同行者はエリオス様とオスカー殿にございます。

オスカー殿と私の調整はできております故、エリオス様とのご準備は不要にございます」


バルドはセルジオに徐々に判断させる内容の種類を増やしていた。


「承知した。武具と調理具の準備ができ次第、バルドに確認してもらう。頼む」


ガチャッガチャ・・・・


セルジオはバルドが伝えた内容から武具と調理具の準備を始めた。


「承知しました。

私はベアトレス殿と持ち帰る獲物の話をしてまいります故、

戻りましたら確認をいたしましょう」


カツカッカツカッ・・・・

バタンッ!


バルドはセルジオの居室隣にある武器置き場と簡易訓練所を兼ねた部屋を出るとポルデュラの居室隣にあるベアトレスの部屋へ向かった。


ベアトレスは乳母の役目が終わると引続き女官としてセルジオに仕えていた。


セルジオが訓練施設を出る7歳を迎えるまではポルデュラ、バルド、ベアトレスの3人でセルジオの成長を見届け、守る誓いを立ててから3年と半ばが過ぎていた。


トン、トン、トン


ポルデュラの隣室、ベアトレスの部屋の扉を叩く。


「はい、どうぞお入り下さい」


ベアトレスが部屋の中から返事をする。

扉を開くとポルデュラの姿があった。


「ポルデュラ様もこちらへお出ででしたか・・・・

これよりセルジオ様とサフェス湖湖畔まで狩りにまいります。

獲物はウサギとカモにて、血抜きをして持ち帰ります故、

今宵の食材と思い伝えにまいりました」


「バルド様、感謝申します。楽しみにしております。

ポルデュラ様、今宵はウサギのスープが食せます」


ベアトレスは嬉しそうにポルデュラへ告げる。ポルデュラはベアトレスへ微笑むとバルドへ真剣な眼差しを向けた。


「バルド・・・今日の狩りだが・・・・ちと嫌な予感がしての。

使い魔を放った。使い魔を同行させる故、そのつもりにしておれ。

それと・・・・西の屋敷へは今日の狩りの話はしてあるか?」


「はい、エステール伯爵ハインリヒ様から

セルジオ騎士団団長へお話が行っているかと・・・・

直接、私から西の屋敷へは話しておりませんが・・・・」


「うむ・・・・では、私から西の屋敷へ使いをやろう。

西の森からサフェス湖湖畔までの風がザワついているのでな・・・・」


ポルデュラは『風』を操る魔導士であり、風の精霊シルフに仕える魔導士でもあった。そのため、ポルデュラは風の微妙な動きの違いも感じ取る事ができるのだ。


「・・・・風がザワついておりますかっ!

エリオス様とオスカー殿も同行致しますが・・・・」


バルドは思案する。


「うむ。同行者があった方がよかろう。

人数は多い程よい。気を抜くでないぞ。バルドっ!」


「はっ!承知致しました。ポルデュラ様、感謝申します」


バルドはポルデュラへ礼を言うとベアトレスの部屋を後にした。


パタンッ!


バルドの後ろ姿を見送り、部屋の扉を閉めるとベアトレスはポルデュラを見つめた。


「ポルデュラ様・・・狩りは取りやめにした方がよろしいのではないですか?」


ベアトレスは不安を隠せない。


「案ずるな、ベアトレス。バルドが付いておれば心配はない。

いずれ・・・・いつかは超えねばならぬこと。後は天のみぞ知るだ。

セルジオ様を生かそうとするならば天はセルジオ様へ微笑みを向けるであろう。

信じるより他あるまい。我らは獲物をゆっくりと待つとしよう。

なぁに皆の想いが通じるわっ!」


そう言うとポルデュラはベアトレスが入れたお茶を美味しそうにすすった。



パカッパカッパカッ・・・・


西の森を通り、サフェス湖湖畔に近づくと森の木々の切れ間から水面のきらめきが覗く。


「バルド!美しいのう・・・・」


セルジオは馬上で(たずな)を握るバルドへ顔を向ける。


「はい、美しいですね。

サフェス湖の水面の色はセルジオ様の瞳と同じ色にございます。

深く青く透き通っております」


バルドは振り向くセルジオの瞳を見つめ微笑む。


「そうか?私の瞳はあの様に美しいか?礼を申す」


セルジオは素直に呼応した。


パカッパカッパカッ・・・・

ブルルルルッ・・・・

カツカッカツカッ!


バルドは馬を止めると後ろからつき随うオスカーへ声をかける。


「オスカー殿、そろそろ、馬より降りますか?

森を抜ける前に馬止めを致します。

馬の(いなな)きに驚きカモが逃げてしまいます故」


バルドはセルジオを抱えヒラリと馬上より降りた。お互い重心の取り方は慣れたものである。


ストンッ!


抱えたセルジオを地面に下すと再びオスカーへ声をかけた。


トサッ!


「オスカー殿、この辺りで馬止めを致し、湖畔まで歩きましょう」


「承知しました」


カツカッカツカッ!

ブルルルルッ・・・・


「どうどう・・・・」


スタッ!


オスカーは自身が先に馬より下りると馬上のエリオスへ手を差し出した。


「さっ、エリオス様、馬より下りて下さい。これより歩きサフェス湖へ向かいます」


「承知した」


ガチャ・・・・

ストンッ!


エリオスは差し出された手を取り、馬上より下りた。


「キィィィィーー、キィィィィィーーー」


エリオスが馬上より下りると同時にハヤブサの声が森に響いた。

ピクリッ!


馬止めをし弓矢と短剣を携帯したバルドが突如、殺気を帯びる。


「バルド!いかがした?」


セルジオがバルドへ問いかけをするやいなや3人の口ひげを携えた男が風下から姿を現した。


かつてバルドがセルジオの居室窓から見かけた男たちだった。


『マデュラの刺客!』


スチャッ!

ザッザザッ!


バルドは腰の短剣を抜き、戦闘態勢に入った。


「バルド殿!これは!」


オスカーも短剣を抜き、バルドと態勢を合わせる。


「マデュラの刺客にございます!」


バルドはオスカーに耳打ちする。


「かなりの使い手と見受けますなっ!」


オスカーも殺気を帯びる。


「我ら2人であれば何の事はございませんが、

セルジオ様とエリオス様がおいでです。狙

いはセルジオ様故、オスカー殿、エリオス様と共にお逃げ下さいっ!」


バルドはエリオスとオスカーを逃がし、1人で応戦する覚悟をしていた。


「バルド殿、逃げても逃げおおせません。

ここは2人で応戦する他、道はございませんっ!」


オスカーは刺客を(にら)む。


バルドは戦闘態勢のままセルジオとエリオスへ叫んだ。


「セルジオ様っ!エリオス様と後方の木の上へっ!」


バルドはセルジオとエリオスが戦闘に巻き込まれない様に木の上に退避するよう指示する。


ザサザッ!


「承知したっ!」


セルジオはエリオスを伴い、バルドとオスカーが戦闘態勢を取る後方の木の上へ身を隠す。


「これでひとまず、戦闘に集中できますな」


オスカーはバルドと顔を見合わす。


「では、オスカー殿、まいりますかっっ!!」


ザザッザッ!


言った瞬間バルドは体勢を低くし、マデュラの刺客1人へ向かった。


ザザッザッ!


バルドの言葉を合図にオスカーも同様に別の一人へ向かう。

カンッ!カンッ!カンッ!!!

カッカツカンッ!!!


剣の交じり合う音が森の中に響く。


カンッ!カンッ!カンッ!!!

カッカツカンッ!!!


バルドとオスカーは短剣で応戦していた。マデュラの刺客は『剣』を抜く。シュタイン王国では『剣』は騎士団所属の騎士と従士以外の携帯は許されていない。


バルドは剣を抜いたマデュラの刺客を睨みつける。


「またしてもっ!国の定めを犯すかっっ!」


バルドは短剣を交えながら叫んだ。


『短剣と剣では部が悪いっ!』


オスカーを見るとオスカーも苦戦をしている。

バルドはハッとする。


『今1人はいずこに行ったっ!?』


応戦しながら辺りの様子を(うかが)う。3人目の刺客がセルジオとエリオスの退避している木の方へ歩みを進めていた。


「セルジオ様っっ!!!お逃げ下さいっっ!!!」


バルドの声が森に響いた。


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