第20話 インシデント16:合同訓練の者たち
「皆、お待たせを致した。セルジオ・ド・エステールにございます。
本日よりよろしく頼む。合同訓練に立会できたこと感謝申す」
セルジオは到着すると自ら最初に挨拶をした。
「セルジオ様、本日もよろしくお願い致します」
エリオスが呼応する。
「セルジオ様、ミハエル・ド・ラドライトにございます。
お見知りおきを頂きたく存じます」
ミハエルはセルジオと目線を合せ挨拶をした。
「セルジオ様、お初にお目にかかります。
アドルフ・ド・フローライトにございます。本日よりよろしくお願い致します」
アドルフはかしずき挨拶をする。
バルドはミハエルとアドルフの従士を紹介する。
「セルジオ様、こちらはミハエル様の従士ダイナ殿にございます。
ダイナ殿は双剣術を得意とされております。
かつて『双剣の従士ダイナ』と呼ばれておりました」
「セルジオ様、ダイナにございます。バルド殿は少々大げさにございます。
セルジオ騎士団第二隊長に仕えておりました。
これよりの訓練にてよろしくお願い致します」
ダイナはセルジオの目の前でかしずき挨拶する。風に乗り、花の香がした。
「ダイナ・・・・そなたは・・・その・・・」
セルジオが尋ねてよいかをききあぐねているとダイナは微笑み応える。
「はい、セルジオ様がお察しの通り、『女子』にございます。
ミハエル様もセルジオ様と同様に『女子』でございます」
「そうか!そうであったか!」
「はい!我ら騎士と従士には生まれ落ちた時の男子、女子はいささかも関係なきこと。
どれだけ己の『弱さ』と『強さ』を知るかにございます」
ダイナは清々しい表情でセルジオに告げる。
「バルドもその様に申していた。
されど・・・・私は焦っていたのだ。先程まで・・・・」
セルジオは素直に己の持つ『弱さ』を皆に伝えた。
「セルジオ様、
今、その様に皆に己の『弱さ』を伝えられるとは素晴らしい事にございます。
皆、セルジオ様と同じ様に焦りも不安もございます。
皆、同じです。後は己で己に打ち勝つまでのこと。ご案じなさいますな」
ダイナは微笑みミハエルの傍らへ退いた。
バルドは続いてアドルフの従士を紹介する。
「セルジオ様、こちらがアドルフ様従士ルッツ殿にございます。
ルッツ殿はオスカー殿同様、弓術に長けておいでです。
従士でありながら戦場では馬を拝し
騎射を得意とされていました。
アドルフ様の騎射の師でもあります」
「セルジオ様、お初にお目に掛かります。ルッツにございます。
セルジオ騎士団第三隊長に仕えておりました。
バルド殿はお褒め下さいますが私は馬と話ができるだけにございます。
されば騎射ができるまでのこと。
いずれ馬術訓練となりました際は馬との話し方をお伝え致します」
ルッツはアドルフの傍らから挨拶をした。
「馬と話せるのか!それは興味深い!
馬以外の動物とも話せるのか?バルド!ポルデュラ様と同じだな!」
少し興奮気味にセルジオはバルドへ顔を向ける。
「セルジオ様、残念ながら馬とのみ話ができます。
ポルデュラ様と同じとは・・・・叱られます」
ルッツは気恥ずかしそうに呼応した。
「そうか。されば馬と話す術を学びたい。馬術の折にはよろしく頼む」
「皆、私は皆と訓練ができる事を嬉しく思う。
合同での訓練に私を含めてくれ礼を申す。改めてよろしく頼む」
「はっ!」
バルドを含め他7名がセルジオの前にかしずき呼応した。
その光景にセルジオはふと何ともいえない感覚を覚える。
『なんだ・・・・?この感覚は・・・・?』
隣にいるバルドを見上げる。
「いかがなさいましたか?」
「・・・・何か・・・・
皆の姿を見ていたら胸の辺りがジワリとしたのだ・・・・
どこぞ私は悪いのかと思ったのだ・・・・」
「はははは。胸の辺りが『ジワリ』となさいましたか!『ジワリ』と!」
バルドは嬉しそうに笑った。
「なんだ!バルド!その様に笑って。どこぞ悪い訳ではないのか?」
バルドはセルジオへ優しい目を向ける。
「ご案じなさいますな。皆の熱気が伝わっただけにございます。
皆と共に訓練ができる事をセルジオ様が喜んでいらっしゃるのです。
かつて、遠いかつて見られた光景を思い返しておいでなのでしょう。
喜ばしいことにございます」
「そうか・・・これが『喜ぶ』と言う事か・・・」
セルジオは胸に手を当て、自身に言い聞かせる様に呟いた。
「その様にして、一つ一つにございます。一つ一つ感じていかれればよいのです」
「わかった!バルド感謝申す」
セルジオはバルドを再び見上げ、訓練の準備に入る。
「皆様方、弓射訓練より入ります。まずはお一人づつ静止にて10本から。
凹凸壁面を北へ向かい移動します」
ルッツが号令をかける。
各々の従士が長けた武具と武術の指導役を担う合同訓練が始まった。
バルドは少し離れた凹凸壁にハヤブサがとまっているのを見つける。ポルデュラの使い魔だ。
『ポルデュラ様、セルジオ様はここまでこられましたぞ。
胸が『ジワリ』としたそうにございます!我らの杞憂はなかったことになりますな』
バルドは凹凸壁にとまるハヤブサに心で語りかけた。
『うむ。そう申したであろう。日々の行いが心の土壌を肥沃とするのだと』
ポルデュラの声が聞えた様に感じているとバルドを呼ぶセルジオの声がする。
「バルド!何をしている!弓を放つ体勢を見てくれぬか!」
「これは失礼を致しました。承知致しました。
『重心』はいずこにございますか!」
バルドは弓矢を構えるセルジオに足取り軽く駆け寄るのだった。




