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とある騎士の遠い記憶  作者: 春華(syunka)
第2章:生い立ち編1~訓練施設インシデント~
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第18話 インシデント14:騎士団団長の資質

エリオスらとの合同訓練前、双剣術の訓練を一通り終えるとセルジオとバルドは最上階回廊へと階段を上がる。


カツンッ!

ガラガラッガランッ!


カツンッ!

ガラガラッガランッ!


セルジオは(やいば)の部分が木製の剣と10本の矢が納まった矢袋を背負い、腰には短剣2口を革のベルトに装着し携帯していた。さすがにまだ3歳である。弓はバルドが持っていた。


「セルジオ様、

その様に沢山の武具を携帯されては身動きがとれますまい。

短剣のみとされてはいかがですか?」


バルドは階段をやっと登っているセルジオをたしなめる。


「我が師とあろう者がその様に甘い言葉をかけていかがする!

どこから何が襲ってくるかわからぬから

できるだけ武具を装備せよと申したのはバルドだぞ!」


確かにそうだった。

大ネズミの襲撃以来、マデュラの刺客が息を(ひそ)めているとはいえ、油断は命取りとなる。


バルドはセルジオができるだけ多くの武具を装備できる様にセルジオの成長に合わせ武具の大きさ、長さ等を調整した。そして、護身術を殺傷を目的に訓練を重ねていたのだ。


「左様でございました。失礼を致しました。

しかし・・・・セルジオ様、階段から落ちぬ様お気を付け下さいっ!」


カツンッ!

ガラガラッガランッ!


カツンッ!

ガラガラッガランッ!


軍事要塞としての役割が主体の城壁階段の一段は大人の膝丈程ある。3歳のセルジオは壁をよじ登る様にして階段を登っていた。


「大丈夫だ!『重心』が身体の中央にくる様に武具を携帯している。

階段へ向け斜め前方へ『重心移動』をすれば後ろへ落ちる事はないであろう?」


『先程の鏡の前での『重心移動』をここでも使われるか!何とも頼もしいことだ』


バルドは階段を登るセルジオを後ろから眺め、計り知れない程の吸収力を感じていた。バルドは感じた事を全てセルジオに『言葉』で伝えている。これは『心の土壌』を育む為にポルデュラから言われていた事だった。


「早速、先程の鏡の前での『重心移動』を試されているのですね。

違和感や重心のぐらつきを感じましたら覚えておいて下さい。

後ほど、鏡の前にて再度、武具と体勢の調整を致しましょう」


「承知した。バルド、すまぬな。手数をかけてばかりで・・・・」


セルジオは後ろからつき随うバルドより一段上へ登った所でクルリと後ろへ向き直り、バルドに軽く頭を下げた。


「セルジオ様、臣下(しんか)の者にその様に簡単に

(こうべ)()れるものではございません。

まして、謝罪など不要なこと。

我らは(あるじ)が存分にお役目を果たせる様、

整える事が役目にございます。お気持ちは嬉しゅうございますが・・・・

その様な時は『感謝』を表された方がよろしゅうございます」


バルドはセルジオが時折見せる大人びた仕草(しぐさ)に驚きを隠せなかった。


「そうか・・・・わかった。感謝申すぞ!バルド!」


セルジオは素直に言いなおす。


ガバッ!

ファサッファサッ!


バルドはその姿が愛おしく、セルジオを優しく抱きかかえると一気に階段をかけ上がった。


「うぅ・・・・バルドっ!

これでは階段を上る訓練にならないではないか!」


「久しくセルジオ様を抱えておりませんでしたので、懐かしく・・・・つい」


回廊への天井扉の前でセルジオをそっと降ろす。


「バルドは時折、私に甘すぎるぞっ!」


少し憤慨(ふんがい)した様子のセルジオはまだ3歳のあどけない顔をバルドへ向けた。

バルドは膝を折り、目線を合わせる。


「セルジオ様、我ら従士は騎士団団長へ命を預けます。

セルジオ騎士団は騎士と従士で80名から100名程。

騎士と従士は団長を見、声を聴き、手足となって役目を果たします」


「人を惹きつけられねば団長の器ではございません。

器でない者が団長となればその騎士団は壊滅(かいめつ)致します。

団長には騎士と従士の命を預かるお覚悟が必要です」


「それはお独りで騎士と従士を背負う事にございます。

お独りの命と引き換えに騎士と従士を守らねばならぬ時もございます。

騎士団を存続させる事も団長の役目にございますから」


「我ら騎士と従士がこの団長にならば命を預けられる、

預けたい!と心から忠誠(ちゅうせい)を尽くせると思われた時、

騎士団は騎士団としての役割を存分に発揮(はっき)でき、

団長は役目を果たす事ができるのです」


「セルジオ様は人を惹きつける素養をお持ちです。

ならば後は我らの想いをお受け下さい。

それは『度量(どりょう)』というものにございます」


バルドは騎士団団長の『資質』の話をした。セルジオが自分の能力を過信しない為、自分自身の能力のみで騎士団の役割が果たせると思わぬ為、何より生き急がない為、初代セルジオが残した『強い無念』の根源をセルジオには抱かせない為だった。


「・・・・わかった。感謝であったな。

バルド、私を抱きかかえ階段を上がったこと感謝申す!」


セルジオは左腕を胸にあてバルドに礼を言う。


「はっ!」


バルドは膝をつき、かしずいた。


「では、セルジオ様、エリオス様方との訓練にまいりましょう」


バルドは天井扉を開けセルジオを回廊へと誘うのであった。


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