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とある騎士の遠い記憶  作者: 春華(syunka)
第3章:生い立ち編2~見聞の旅路~
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第60話 カリソベリル騎士団5:勝敗の行方

ザッザザッ!!

ザッザザッ!!


主審の号令にセルジオとエリオスは木剣を構えた。


セルジオは左脇へ木剣を据える。エリオスは右脇へ木剣を据えた。


「ふぅぅぅぅ・・・・」

「ふぅぅぅぅ・・・・」


セルジオとエリオスは呼吸を合わせる。


ゴッ!!!

ゴッ!!!


次の瞬間、木剣を構える方向へ土を蹴った。


ザザザッ!!!

ザザザッ!!!


2人は左右へ離れたかと思うと一気に(きびす)を返した。


ズザザッ!!!

ズザザッ!!!


対峙するフェルディへ向け左右から突進する。


ズザザッザッ!!!

ガキンッ!!!

ズザザッザッ!!!


ズザザッザッ!!!

ガキンッ!!!

ズザザッザッ!!!


左右からフェルディの両手に携えられた木剣へ切り込みを入れるとそのまま対角線上に北へ向けて走った。


「・・・・うっ・・・・」


正面から2人が切り込んでくると考えていたフェルディは左右からの同時の攻撃に戸惑いを見せた。


しかも敢えてフェルディが握る木剣目掛けて切り込んできている。


低さを活かして両足への攻撃がされると踏んでいたフェルディはセルジオとエリオスの動きを掴みかねていた。


北へ向け疾走したセルジオとエリオスの姿を捉えようと身体の正面を北へ向ける。


ズザザッザッ!!!

ガキンッ!!!

ズザザッザッ!!!


ズザザッザッ!!!

ガキンッ!!!

ズザザッザッ!!!


既に目の前まで来ていたセルジオとエリオスは北側へ正面を向けたフェルディの木剣を先ほどと同じ様に左右から切り込みを入れた。


グラリッ・・・・


あまりの勢いにフェルディの足元がふらついた。


「・・・・うっ・・・・これはっ・・・・」


瞬く間に視界から外れるセルジオとエリオスの姿を体勢を整えながら探す。


ズザザッザッ!!!

ズザザッザッ!!!


フェルディはセルジオとエリオスが同じ様に左右から突進してくる姿を捉えた。


「そうそう、同じ手は食わぬぞっ!!!」


ズザザッザッ!!!

ガキンッ!!!


ブンッブンッブンッ・・・・

カランッ!!!!


ズザザッザッ!!!

ガキンッ!!!


ブンッブンッブンッ・・・・

カランッ!!!!


フェルディは大きく左右に木剣を振るうとセルジオとエリオスが握る木剣を弾き飛ばした。


スタタタタッ!!!!

スタタタタッ!!!!


弾き飛ばされた木剣を見向きもせずにセルジオとエリオスはそのまま対角線上へ走り抜ける。


シャッ!!!

シャッ!!!


走り抜けるのと同時に腰に携えられた木製の短剣を鞘から抜いた。


ズザザッザッ!!!

ズザザッザッ!!!


ブワンッ!!!!


フェルディへ向き直るセルジオの身体から青白い炎が大きく湧き立った。


ズザザッザッ!!!

ズザザッザッ!!!


ワンッワンッ・・・・


エリオスの身体が白銀色の膜に覆われてる。


ザワッザワッ・・・・

ザワッザワッ・・・・


青白い炎を湧き立たせたセルジオと白銀色の膜に覆われたエリオスの姿に場外からどよめきが湧いた。


「・・・・ほう、あれが古から伝わる青白き炎ですか・・・・」


カリソベリル伯爵がポツリと呟いた。


「・・・・」


セルジオの実父、エステール伯爵ハインリヒは無言でその姿を見つめていた。


「・・・・」


カリソベリル騎士団団長フレイヤは2人の当主へチラリと目を向けると戦闘の続きを静かに見守った。


ズザザッザッ!!!

ズザザッザッ!!!


北側から青白い炎を携えたセルジオが、南側から白銀色の膜に覆われたエリオスが木製の短剣を構えフェルディへ突進した。


「短剣では私を討つ事はできぬっ!!!」


フェルディは両手を身体の正面で交差すると突進してくるセルジオとエリオスの頭上目掛けて大きく振り下ろした。


ドカッ!!!!

ドカッ!!!!


フェルディの振り下ろした木剣の剣先が地面に突き刺さる。


「うっ!!!どこに!!!」


ダンッ!!!!

ググッ!!!!


ダンッ!!!!

ググッ!!!!


振り下ろされた木剣を足場にセルジオとエリオスは宙を舞った。


フェルディが身に付ける革製の胸当ての間に片方の木製の短剣を射し込む。


フェルディの腰に足を掛けると首筋に前後から木製の短剣の切っ先を押しあてた。


スチャッ!!!!

スチャッ!!!!


「・・・・うっ・・・・」


フェルディは何が起こったのか暫く把握できずその場で直立していた。


セルジオとエリオスは声を揃えてフェルディへ降参をほのめかす。


「フェルディ様、お命落しました」


「・・・・うっ・・・・こっ・・・・これはっ・・・・うっ・・・・」


降参の言葉が出るまでは戦闘は続いている。


ググッ!!!!

ググッ!!!!


セルジオとエリオスはフェルディの首筋前後から押しあてた木製の短剣の切っ先を離すと首の左右に短剣の刃をあてた。


再び降参をほのめかす。


「フェルディ様、お命落しました」


既に勝敗がついていることは誰の目にも明らかだった。


主審が近づきフェルディへ降参の意向を確認する。


「フェルディ様、既に勝敗は出ているかと思いますが、いかがいたしますか?このまま続けますか?」


主審は敢えて降参の言葉を使わずに戦闘を続けるかの確認としたのだ。


カリソベリル伯爵によって仕組まれ、手合わせが御前試合となった。


カリソベリル騎士団第一隊長であるフェルディもその企みは知っていた。

そして、まさか敗けるとは思ってもみなかったのだ。


それもあっと言う間に応戦らしい応戦をすることなく一方的に敗けた。


いくら青き血が流れるコマンドールの再来と謳われるセルジオとその守護の騎士であるエリオスだと言えども所詮(しょせん)はまだ子供だ。


子供相手に御前試合などと思っていたし、少し木剣を交えてそれらしく見せればカリソベリル伯爵も気が済むであろうと考えていた。


ググッ!!!!

ググッ!!!!


徐々に強く木製の短剣が首筋の左右から押し込まれてくる。


セルジオとエリオスの表情にもはや子供とは思えずにいた。


タラリッ・・・・

ゴクンッ・・・・


フェルディはこめかみから冷たい汗が流れるのを感じると固唾(かたず)を飲む。


「・・・・ふぅ・・・・参りました・・・・」


フェルディは降参をした。


主審はコクリと頷くと手にした木剣を掲げた。


「この度の御前試合!勝者はセルジオ騎士団っ!

敗者はカリソベリル騎士団っ!

双方、御前にて礼を尽くされよっ!」



うわぁぁぁぁぁ!!!!

うおぉぉぉぉぉ!!!!


主審の勝敗宣言に場外から歓声が上がった。

【春華のひとり言】


今日もお読み頂きありがとうございます。


あっと言う間に終った御前試合。


セルジオとエリオスの連携は見事なものでした。


相手が誰であろうと全力を出し切るのが騎士道なのでしょうが、今回はフェルディさん、お気の毒でした。


全力を出そうにも躊躇しますよね。


改めて『侮ることなかれ』を肝に銘じたいと思います。


次回はカリソベリル伯爵ベルホルトの企みが明らかになります。


はてさて、彼の思惑とは・・・・


お楽しみにして頂けると嬉しいです。


次回もよろしくお願い致します。

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