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とある騎士の遠い記憶  作者: 春華(syunka)
第3章:生い立ち編2~見聞の旅路~
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第56話 カリソベリル騎士団1:好奇の眼・歓迎の眼

カコッカコッカコッ・・・・

カコッカコッカコッ・・・・


石畳の上を進む蹄の音が心地よく感じる。


ラドフォール公爵領を出たセルジオ達は次の2週間を5伯爵家序列第三位のカリソベリル伯爵領で過ごした。


カリソベリル伯爵領はシュタイン王国王都の東側に位置していた。


石材加工や木材加工等の工業を主要産業としていて、加工された製品は王国内の石畳や居城、城壁等に使用されると共に国外へも流通させていた。


所領の南を流れるオプシティ河河岸付近では養鶏と養豚等の畜産と大麦、えん麦栽培の畑を利用した養蜂(ようほう)をも手掛けていた。


セルジオ騎士団やラドフォール騎士団の城塞が自然の地形を利用した岩盤城塞なのに対し、カリソベリル騎士団城塞は平地に建てられた石造城館だった。


軍事機能と防御性に重きが置かれた城塞しか知らないセルジオとエリオスにとって政治的機能に重きが置かれた開放的で装飾が施された城館は居心地が悪く感じられた。


5伯爵家はラドフォール公爵家と共に祭事に当たる王家星読みの儀にその当主と騎士団団長が参列する。


そのため青き血が流れるコマンドールの再来に関する王国としての対応策も重々承知していた。


ラドフォール騎士団程ではないが、セルジオ達は歓迎された。

ただ、カリソベリル伯爵家当主までが騎士団城館にわざわざ足を運びセルジオと守護の騎士であるエリオスとバルド、オスカーを訪ねてきた。


青き血が流れるコマンドールの再来と(うた)われるセルジオをどこか好奇の眼で見るカリソベリル伯爵にバルドとオスカーは細心の注意をはらっていた。



カリソベリル騎士団城館の北側広場が訓練場になっていた。


平坦な地形の所領内での訓練のため、訓練場広場に土手を造り、馬で駆け下りる馬術訓練場まで造られていた。


特に騎射(きしゃ)の訓練に重きが置かれており、60頭程の馬が飼育されていた。


バルドとオスカーはセルジオ騎士団団長からの密命である今回の各貴族騎士団巡回に際しての裏の目的である内部調査を怠らないよう日々の訓練を利用しその情報収集に務めた。



薄暗い夜明け前、カリソベリル騎士団の騎士と従士が訓練に入る前にセルジオとエリオスは日課の訓練に入っていた。


シュッシュッシュッ!!

シュッシュッシュッ!!


朝靄(あさもや)を切り裂く様な歯切れのよい音がする。


セルジオとエリオスは横に並び短剣を両手でさばきながら前進する。

短剣での双剣術の構えの訓練だった。


「セルジオ様、右肩が上がり過ぎです。

上に上げるのではなく肩を前に押し出し前進するのです。

そのままでは身体の中心を狙われます」


シュッ!!!

カンッ!!!


バルドの声にオスカーがセルジオの胸を目掛けて短剣を放つ。


セルジオはスッと右へ身体をよけると胸目掛けて放たれた短剣をかわし、短剣で叩き落とす。


ジワ・・・


オスカーの放った短剣がかわし切れずにセルジオの左腕にうっすらと血が滲んだ。


ザッザッザッ・・・・


オスカーがセルジオに近づく。


「セルジオ様、短剣に毒が仕込まれていればお命落しましたぞ」


パンッ!!

シャッシャッシャッ・・・・


オスカーは包帯を腰に据えている小袋から取り出すと血の滲むセルジオの腕に巻いた。


「バルド殿、続きを頼みます」


セルジオの包帯を巻き終えたオスカーが再びバルドへ訓練の再開を依頼した。


「承知しました。

では、セルジオ様、エリオス様、もう一度初めの型からまいりましょう。

昨日、訓練しました体術も合わせた双剣術でまいります」


「はっ!」

「はっ!」


セルジオとエリオスは2人の師に呼応する。


シュッシュッシュッ!!

シュッシュッシュッ!!


セルジオとエリオスは体術をまじえた双剣術の型を再開していた。



ザッザッザッ・・・・

ドヤドヤドヤ・・・・


朝靄(あさもや)が晴れ、訓練場の小山に朝陽が射す頃にカリソベリル騎士団の騎士と従士が訓練場に姿を現した。


セルジオ達は訓練を中断し、場外へ出るとカリソベリル騎士団団長フレイヤに挨拶する。


「おはようございます。訓練場を使わせて頂きました。感謝もうします」


フレイヤは第一隊長フェルディと第二隊長ジーニーを伴いセルジオの前に進み出た。


フレイヤは無表情でどことなく冷たい感じがする。セルジオは少し前までの自分自身の表情を見ている様だと思いながらフレイヤを見上げる。


「セルジオ殿、おはよう。暗いうちから訓練とは精が出るな。

これより我らと共に訓練をしてはどうだ?

そなたとエリオス殿に是非、手合わせをと申している騎士がいる。

どうだ?手合わせを願えるか?」


ニコリともせず無表情のままセルジオを見下(みおろ)すフレイヤに好奇の眼をセルジオは感じていた。


よどみなくすぐさま呼応する。


「はっ!

我らと手合わせいただけます事、感謝もうします。あり難くお受けいたします」


セルジオとエリオス、バルド、オスカーはフレイヤの前にかしづくと手合わせを承諾した。

叔父であるセルジオ騎士団現団長からバルドやオスカーからも諭されていた事だった。


他家貴族騎士団でセルジオとエリオスの力量を試そうと手合わせを願い出てできたなら躊躇なく受けろと。

そして、度肝を抜いてやれと。


「そうか、快諾してくれるか。頼もしい事だ。

ではまず、私の両翼をもぎ取ってみよ。

なに、手合わせだ。命までは取らぬ故、安心致せ。

フェルディ、そなたから行け」


フレイヤは右隣にいた第一隊長フェルディへフェルディの顔を見ることなく指示を出した。


「はっ!承知しました」


フェルディは一歩前に進み出ると膝をおり、セルジオとエリオスの目線に己の目線を合わせた。


「セルジオ様、エリオス様、第一隊長フェルディがお相手させて頂きます。

手加減は致しません。どうぞ、お二方も存分にお力をお出し下さい」


フェルディはにこやかにセルジオとエリオスへ手合わせの挨拶をした。


「はっ!我ら持てる力を全て出す所存にて、なにとぞよろしくお願い致します」


セルジオとエリオスはフェルディに頭を下げた。


フレイヤがその光景を見てニヤリと口を歪めたのをバルドとオスカーは見逃さなかった。

今日もお読み頂きありがとうございます。


次の目的地、カリソベリル伯爵領に入りました。


騎士団の居城の違いに戸惑うセルジオとエリオス。

今も昔も百聞は一見に如かずですね。


沢山の知識と体験から大きく成長してくれるのだろうなと楽しみにしている一方で、様々な思惑に翻弄されることなく、前進して欲しいと願うばかりです。


次回もよろしくお願い致します。


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