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とある騎士の遠い記憶  作者: 春華(syunka)
第3章:生い立ち編2~見聞の旅路~
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第55話 ラドフォール騎士団43:次の地へ

ブルゥゥゥゥ・・・・

カツッカツッカツッ・・・・


バルドが握る手綱の間でセルジオは姿勢を正した。


「セルジオ殿、エリオス殿、バルド、オスカー我らが同道できるのはここまでだ。これより先はそなたらで進むのだ。なぁに、半月もすればアロイスと合流できよう。案ずることはないぞ」


ウルリヒが馬上から微笑みを向けた。


ラドフォール公爵領を出立するセルジオらに大地の城塞東の城壁門までウルリヒと第一隊長ベアテが付き添っていた。


ウルリヒは名残惜しそうにバルドの前で馬に跨るセルジオを見つめる。


火焔の城塞で初めて会いまみえてから一月(ひとつき)セルジオとエリオスが急に大人びて見えた。


「セルジオ殿、くれぐれも無理を通してはならぬぞ。そなたを守る守護の騎士とバルド、オスカーの事をよくよく考えるのだぞ。今は役目を優先せずともよいのだ。まずは皆が無事にセルジオ騎士団西の屋敷へ戻る事が何よりの役目だ。よいか、身に危険を感じたなら迷わず逃げよ。命を懸けるのはまだまだ先の世の事と考えるのだぞ」


カツッカツッカツッ・・・・


ウルリヒはセルジオが跨る馬へ馬を寄せた。


「はっ!ウルリヒ様、西の屋敷を出立する際に第一隊長ジグランより同じ事を諭されました。私はその意味する所が解りませんでした。されど、ラドフォール騎士団3つの城塞で様々な事柄を学ばせて頂き、今は少し解った気がしています。己独りでは何も成す事は叶いません。皆の力添えがあってこそ成す事が成せるのだと解りました。その時々で一番に優先することが何かを考えること、そして、今は師に守護の騎士に助けを求める事こそ私がすべきことだと思っています」


セルジオは深く青い瞳を輝かせウルリヒの深い緑色の瞳をじっと見つめた。


ウルリヒは手綱を握るバルドへ嬉しそうな顔を向ける。


「バルドよ、そなたの主は見違える程、成長したな。そなたが、いや、そなたやエリオス殿、オスカーもがセルジオ殿を何より大切に想う気持ちが解ったぞ。これより先も我らと共にセルジオ殿を青き血が流れるコマンドールの支えとなろうぞ」


「はっ!ウルリヒ様、馬上より失礼を致します。あり難き言の葉、そして、ラドフォール騎士団での数々のお計らい感謝申します」


バルドは馬上で左手を胸にあて、ウルリヒへ頭を下げた。


バルドに倣い、セルジオ、エリオス、オスカーも頭を下げる。


「よいよい、さっ、そろそろ出立致せ。このままではそなたらを連れ帰りたくなる。大地の城塞に長く留めておきたいのだ。のう、ベアテ。そなたも寂しくて仕方がないのであろう?」


ウルリヒの隣で馬に跨るベアテは目を潤ませていた。


「・・・・はい、セルジオ様とエリオス様のお世話をさせて頂き、光栄に存じました。お二方共、全てにおいて熱心でいらっしゃるので、ついついあれもこれもと・・・・うぅ・・・・しっ失礼をっ!」


ベアテは震える声で話を止めた。


「何を泣いておるのだ。出立に涙は禁物ぞ。この先、会えぬ訳でもなかろう。しっかり致せ」


口ではそう言うもののウルリヒはベアテに微笑みを向ける。


「・・・・はっ!面目次第もなく・・・・」


「ベアテ殿、数々のご指導を感謝申します。次にお目にかかる時までにベアテ殿よりお教え頂きました事を(そら)んじられる様になっておきます」


セルジオはベアテに礼を言った。


「・・・・セルジオ様・・・・楽しみにしております。皆様、ご武運を」


ベアテも左手を胸にあて頭を下げた。


「では、大地の城塞東の城壁門を開けるとしよう。開門っ!」


ウルリヒが大きな声と共に馬上より左手を門に向けてかざした。


ガコンッ!!

ギィィィィィ・・・・

ガコンッ!!!


大地の城塞東の城壁門が開かれた。

シュピリトゥス森が眼下に見える。


「このまま真っ直ぐに進めばよい。シュピリトゥス森がそなたらをラドフォール公爵領の東の大門まで案内してくれる。達者でな。また、会おうぞ」


「はっ!」


セルジオ、エリオス、バルド、オスカーは揃って呼応した。


カツッカツッカツッ・・・・

カツッカツッカツッ・・・・


大地の城塞東の城壁門を2頭の馬がくぐり切ると後ろで扉が閉まる大きな音が聞こえた。


ガコンッ・・・・

ギィィィィ・・・


出立の際は振り返る事は不吉とされている。セルジオは扉が閉まる音に馬上で大声を上げた。


「ウルリヒ様っ!ベアテ殿っ!感謝申しますっ!また、いつの日かお会いできる日までお達者でっ!」


バタンッ!!


扉の閉まる音でセルジオの声がウルリヒとベアテに届いたのかは解らなかった。


バルドがそっとセルジオに耳打ちする。


「大事ございません。きっと、セルジオ様のお声はウルリヒ様とベアテ様に届いています。感謝のお気持ちと一緒に」


バルドはセルジオの頭に口づけをした。


「では、オスカー殿、ラドフォール公爵領東の大門まで早がけとまいりましょう」


「承知しました。緩やかな下り坂ですから小一時間程ですね」


オスカーがバルドに呼応する。


「左様ですね。では、まいりましょう。はぁっ!」


パカラッパカラッパカラッ・・・・・


「はぁっ!」


パカラッパカラッパカラッ・・・・


二頭の馬が真っ直ぐに伸びたシュピリトゥス森の街道を疾走していくのであった。

今日もお読み頂きありがとうございます。


ラドフォール騎士団第一の城塞、大地の城塞を後にしたセルジオ一行。


次に向かう先は・・・・


いよいよ、物語が次のステージへ動き出します。


次回もよろしくお願い致します。

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