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人形少女は愛を知る  作者: 音夢
人形少女は保護される
2/20

第一話 人形少女は天使を見る

「……」


(ここは……どこ?)


目が覚めると、私は薄暗い部屋にいた。

でも、暗闇に慣れた私にはわかった。


ここが自分の知らない場所なんだって。


(私……なんで……?)


私の知らない世界だった。

縛られていない私の四肢。

汚れた床と正反対の清潔そうな柔らかいベッド。

冷たくない暖かな部屋。

私のいた場所よりも明るく光が入ったオレンジ色に輝く部屋。

初めて見た……光。


それは普通の人には暗くても、今の私には眩しすぎた。


(ここは天国……?それとも夢……?)


暖かいものに包まれた、私の身体。

初めて感じる温もり。


(暖かい……でも起きなくちゃ……)


もっとよく見ようと、自分の身体じゃないくらい重たい身体を起こそうと力を入れる。


(痛っ……)


だが、体をおこそうとするとズキッと体中に痛みが走った。


(夢じゃない……)


その痛みがここは天国ではないことを私に示していた。

ならここはどこなのだろう……。


「……?」


おかしい、という違和感。


(……痛いって……思った……?)


そうこのとき確かに私は#痛みを感じていた__・__#。

#普通の人__・__#なら当たり前かもしれない。

でも、私はお人形。

痛みも悲しみも、苦しみも何も感じないはずなのに……。

今はこんなにも困惑して、疑問に頭を支配している。

こんなの……知らない。


(どうして……?)


体のあちこちには細長い白い布……多分包帯、それが巻き付かれていた。

普段ならどんな傷でもすぐに治るのに、今の私には#傷が残っていた__・__#。

これも普通の人にとっては当たり前のことだろう。

でも、私にとって初めてのことだった。


今までとは何もかもが違った。

今の私は確かにあの地獄ではない場所にいる。

天国でも夢でもない、辛くてたまらない現在の世界。

でも、私は確かにあの場所じゃないところにいる。

そのことになぜかほっとした。


だから、気づけなかった。

自分の傍らで眠る少年に……。


「……!?」

(誰……?)


ふと視線を横に向けると、知らない少年がいた。

今まで会った誰とも違う。

始めてみる幼い面影を残す少年。


『夜の天使』


そんな言葉が浮かんだ。

それくらい、眠る少年は天使のように美しくて、綺麗で、凛々しかった。

柔らかな風に揺れる藍色の髪。

整った顔立ち、長い睫毛。

伏せられたまぶたの下にもきっと綺麗な瞳があるんだろうなと思った。


だから、触れてみたくなった。

恐れ多いとは思っていた。

それでも憧れた。

羨ましかった。

きっとこの少年は私と正反対の場所で産まれ、暮らしたのだと思ったから。

少しでも、救いを得られたらいいなと思った。

自分と正反対の美しさに。

その柔らかい髪に。


だからそっと手を伸ばした。

無意識だった。

でも、その手が彼の髪の毛に届くことはなくて


「……!?」


私の手は彼に捕まれた。


気づいたときには世界が反転していた。

背中には柔らかい優しい感触。

私は彼に押し倒されていた。


「……」


でも私はそんなこと気にもしなかった。

だって……。


綺麗……


目の前には輝く黄金の瞳。

私はそれを食い入るように見つめていて

彼もまた、その瞳を見開かせながら私を見ていたから。



視線が交差した瞬間だった。




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