第三話『独り立ちします』
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この小説をお読み頂きどうもありがとうございます。まだ始めたばかりですがもうこんなに色んな方に評価をしてもらって嬉しいばかりです。恥ずかしい面もありますが、創作意欲が湧いてきますね(σ*´∀`)
色々と拙い部分もある文ではあると思いますが、これからも気楽に読んで頂ける小説を作っていきますのでよろしくお願い致します。
時の流れというのは早く、あっという間に四百年経っていた。風景も四百年も経てば多少変わったりもしたが、故郷の匂いだけはいつまでも変わることなかった。そして私もついに独り立ちする時がきた。
『道中、気を付けて行くのですよ』
『うん』
『体を壊さぬよう気を付けて、決して変なものは口にしないように』
『………うん』
『怪しい魔獣や魔物に声を掛けられても、絶対についていっては駄目ですよ』
『…………』
(もうこのやり取り何回目?)
さっきからずっとこの調子である母。何度も繰り返されるこの言葉のループにどうしたものかと私は頭を抱えた。いつもクールで賢い母は一体何処へいってしまったのだろうか?まさかここまで一人娘の巣立ちに動揺するとは。
(それにしたって少し取り乱し過ぎでは?)
母のあまりの動揺っぷりに私はもう苦笑いを浮かべるしかなかった。
『後、絶対に人間には近付いてはいけませんよ』
『はーい』
もう耳にタコができるほど聞かされたその話。釘を刺すように何度も言われた言葉に適当に返事をしていると。
『返事はしっかり!そんな事では直ぐにこの厳しい自然に淘汰されていますよ!!』
「グルウゥゥッ!!!」
『は、はいっ!』
「ウォンッ!!」
すぐに母の厳しい叱責が飛び、慌てて私は指揮官に敬礼する軍人の様に耳と背筋をピンッと伸ばし元気に返事をするよう吠える。
『………何か困ったことがあればいつでも呼びなさい。母はいつでも貴女の味方ですよ』
『うん………。ありがとう、母さま』
母の穏やかな声音と慈愛の眼差しに思わず別れを実感してしまい、泣きそうになるもぐっとここは堪える。
『どうかお元気で』っと私は母の頬にすり寄り、ここまで育ててくれたことへの感謝の意を示す。今生の別れという訳ではないが、やはりいざ親元から離れるのは不安の面もある。けれどきっと大丈夫!
(暮らす術の知恵や魔法も狩りの仕方も完璧に習得した。後は私の力次第ッ………!!)
勇気を出して一歩踏み出すと、どんどんとそのスピードは早くなり見知った大地を駆け抜けていく。後ろは一回も振り返らなかった。私はそうして新天地を求め、この親しんだ故郷から見事に巣立っていった。
………………………………………
『さてと………私は何処にお家を作ろかっな?』
寒い所が苦手なので比較的に暖かくかつ暑すぎない場所がいいなっと。私は過ごしやすそうな気候の土地を求めて西へと渡っていった。暫く走っているとすっかり見かけない景色になる。
そこから先はとても楽しかった。長い荒野を抜けると水辺を好むモンスターが多く暮らしている湿地帯になり、火山が活発に動く火山地帯を通った時は火を操るモンスターたちが沢山住んでいた。
確かに過酷で危険な旅ではあったけど、母の話でしか聞いたことのないモンスターに出会ったり興味深いものがいっぱいだった。やがて私はある山岳を見つけた。そこは水も綺麗で食べ物にも困らないまさに理想の地であった。
『よし、ここに巣を作ろう!』
長い旅の末にようやく自分の居場所を見つけた私は、すぐにここで新生活をすることを即決し、この山に長い間、腰を据えることになったのである。