第二十五話『隠れんぼ』
(ふぁれぇ?)
暗く狭い戸棚の中で一人の少女が目を覚ました。
「ふぁ~……!ここは………」
少女はまだ眠たい目を擦りながらも朧気に記憶を呼び起こした。今日は珍しく腹違いである妹が遊びの誘いで声をかけてきた。彼方から話しかけてくれることはなく、彼女は嬉しくつい二つ返事で妹の誘いに乗った。それで一緒に隠れんぼをしていたのだが、日々、分単位に組まれるお稽古や勉強に疲れてしまい少しうたた寝をしてしまったようだ。息抜きぐらいならと少しだけ遊ぶつもだったのだが結構な時間眠ってしまったいたようで、焦った少女は戸棚の中からすぐ出ようと扉に触れる。
「あれ……?」
入る時までは簡単に開け閉め出来ていた扉が今は固く閉ざされている。どうやら扉の向こうに何かがつかえてしまったらしい。
「誰か、誰かいないのー!!」
何度も扉を開けようとするが少女の力では扉はびくともしなかった。力一杯扉を叩いて誰かに知らせるが生憎少女が入った部屋は運が悪く、東の一番端にある客間の一室で舞踏会など大勢の来賓が来る時以外はあまり使われぬ部屋であった。特にこの寒い時期には祝い事もないなので人の出入りは滅多になかった。
少女が扉を開けようと必死になっている最中、微かに空いた部屋の扉の隙間からは不穏な黒い煙が忍び寄ってきていた。
…………………………………
「えっー!?シーク隊長、あの魔物に会いに行くつもりなんですか!」
「あまり耳元で大声を出すなコニー」
「えっ、あ、すいません………」
耳元で大声を出すコニーに対し、シークは眉をひそめる。
「でもどうしてあの魔物に会おうとするですか?」
「………あの魔物には色々と恩がある。それを、このままにしてはおけないないだろ」
自由に動かない体を半ば無理やり動かしながら魔物が幽閉されている牢屋へと向かっていると反対側から一人の兵が慌てて走ってくる。
「火事だー!」
煤にまみれた姿で大声を出して周囲に知らせる。火事の話が広まると城内では動揺と不安でざわつき始めた。シークは走ってきた兵を捕まえる。
「どうした!」
「シーク騎士隊長、大変です!王宮内で火事です!」
「なんだと?!現場の状況は!」
「はっ!報告致します!ただいま火の鎮火に動く者と使用人たちなどを安全な所に避難誘導する者に分かれ、最善を尽くしています!王様と妃様は城外にと避難されております」
「よし、皆が避難できるよう火の勢いを押さえ時間を稼げ!なるべく水魔法や土魔法が使える兵で取りかかれ!避難した者で怪我や体調を崩しているものは奥へ運んで治癒魔法が得意な兵で班を編成して治療にあたるんだ!」
「かしこまりました!」
シークが的確な指示を下すと兵は矢のように走り、城にいる兵たちに作戦を伝える。
「隊長、俺たちも……!」
「あぁ」
シークたちは一度、現場の状況を確認するために火事の発生源にと進路を変えた。




