表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/33

第二十二話『誤解』

 暫く走ると巨大な門が見えてきた。あれがきっと王様がいる所に違いない。門の前には銀の鎧を纏った二人の門番の兵が立っていた。


「魔物だ……!」


「止まれ!!」



 手元に持っていた槍で道を防いできたが関係ない。助走をつけて強く地面を蹴って大きくまた飛ぶ。あっという間に門番二人の頭上を飛び、城に繋がっている門をくぐり抜けた。城の中には大勢の兵がおり、目の前に突然現れた黒い狼に兵たちは騒然とする。


「魔物が城門侵入した!これ以上城の奥には決して入れるな!」


 ぞろぞろと城から兵が現れ、周りを囲まれて槍を向けられた。


「おい、背中に誰かいるぞ!」


「あれは……シーク隊長じゃないか!?」


 一人の兵が私の背にいる男に指差した。


「お前ッ……!隊長を離せ!」


 奥にいた兵の一人のそばかすの青年が白銀に光る槍先を私に向ける。だが、その手は強気な言葉とは反対にガタガタと恐怖に震えていた。


『待って!彼が病気で大変なの!お願い助けてあげて』


「ウゥッ…!!」


 必死に呼び掛けてみるが警戒している人間たちはひそひそと話すだけで誰一人として私の側にはよって来なかった。


「はぁ……はぁっ……!」


(このままじゃ、この人の命が危ない……!!)


 背中にある熱がどんどんと上がっていくのを感じた。もうこれ以上は危険だと判断すると私は相手に敵意はないと示す為、じっとその場で大人しく大きな体を伏せて低姿勢な体勢を取った。だが、それと同時に大勢の兵たちは飛び掛かってきた。


「口元に気を付けろ、こんな鋭利な牙で噛まれたら一溜りもない」


「噛まれないよう誰か口輪を持ってこい!」


「黒い魔物なんて、なんて不吉な……」


 兵たちに乱暴に毛を引っ張られたり押さえつけられて、私は悲鳴を上げて拒絶の意思を示すがそれでも人間たちは私の毛を引っ張るのを止めなかった。


『痛いッ…!!やめて、抵抗なんてしないから……!』


「キャウン……!!」


 ただ彼を助けたい一心でここに来るまで気付かなかった。この国に住む国の人が私にどういった目を向けていたのか。町人や貴族、城で働く兵や使用人など。皆の瞳に恐怖、怯え、怒りの色が見えた。今までそんな感情を真っ直ぐと向けられたことがなく、目の前にいる人間たちがどんな強い魔物より怖くて動けなくなった。人間たちはその隙に私の口を無理やり地面に抑えつけると口輪をつけ、手足もロープで強く縛り付けた。


「シーク隊長……!よくぞご無事で!おい、誰か!隊長を医療室へ運ぶのを手伝ってくれ!」


「………??」


 兵たちは私の背から男を引きずり降ろし、生還を喜んでいた。意識が熱で朦朧としている彼は今の現状が理解できていないのか虚ろな目をしていたが最後に目が合うと哀しそうな目で此方に手を差し伸べてきたがその手は此方に届くことはなく、私は彼と引き離されて地下にある暗い檻の中に閉じ込められてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新おつかれさまです やっぱり捕まった あとは隊長さんの意識が戻ってからですね。
[一言] 再開と同時に、いきなりピンチ?に。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ