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第十四話『出会い(後編)』

 

「近づくな………!」


 地を這うように静かに怒りを帯びた低声にびくりと体が震えた。


「ッ……どうせお前も俺も喰う気つもりだろ………!」


『え、えっ……??』


 切れ長な翡翠色の瞳が威嚇するように睨み付け、ぴりぴりと肌を刺してきた。何度も経験をしてきたから分かる。これは明確な『敵意』だった。突然の敵意に思わず心配して近寄ろうとした私の足も強張り、歩みを止めてしまう。


「お、れは………こんな所で、喰われるわけには………」


 でもその言葉の節々は弱々しく男性はまた意識を失ってしまった。男はぐったりとしており、すぐには目覚めそうにはなかった。


『びっ、びっくりした~……!な、なんだったろう今の………』


 人と初めて顔を合わせて出会い、向けられた表情が激しい怒りと拒絶の意識に私は一瞬この男の人をどうしようか迷った。このまま見なかった事にするのもまた自然の摂理の一つである。だがどうしてだろう。この男性の、あの宝石のような吸い寄せられる綺麗な瞳をもう一度見てみたいとも思った。男性を起こさぬように、音を立てないように忍び足で恐る恐る様子を確認するために近寄って覗いてみた。


『うわっ………!綺麗な人だな……』


 改めて倒れている人間の男性を顔をじっと見る。白い肌に太陽のように光る綺麗な蜂蜜色の金髪、一本一本整えられているような長い切れ長な睫毛とまっすぐとしたすらりとした鼻。まるで精巧に作られてた人形みたいによく整っており精悍な顔立ちであった。


『ま、まぶしい!………』


 これが人間で俗にいう『美男子(イケメン)』という属性にあたる生物なのであろう。なんだかもう次元が違う生き物にも見えてきた。眩しすぎて耳で目を覆う。


(まぁ、今は実際に本当に違う生き物なんだけどね)


 冗談も程々にし改めて男性の容態を観察する。顔の細かな傷はただの草などで切った擦り傷で頭の怪我もどうやら鋭利な石で切ったようで出血自体も酷くはなかった。だが問題は脚で、どうやら脚の骨を折っているのか右脚を庇うように抱えており、綺麗なその顔は痛みで歪んでいた。怪我のせいかうっすらと熱も出ており頬も赤い。


 (あの人の目………、私の姿を初めて見て『畏怖』するというよりも酷く嫌っているみたいだったな)


 この大きい体のせいで恐れられるのは慣れていたが、あんな憎しみに満ちたような感情を向けられたのは初めてでどうすればいいか分からなかった。

 これ以上、お互いの為にもモンスターの私が関わらないで集落に運んで見てもらった方がいいのかもしれない。何より本人がそれを一番に望んでいる様に見えた。けれど今いる山道から集落までは距離があり、厳しい山道の中を意識のない怪我人を引摺りながら登るのもリスクがあった。


『どうしよう………』


 そもそも、前にあんな嫌な事件があった後で獣人の人たちが快く人間を受け入れてくれるかさえわからない。だからと言ってここに捨て置く事も私にはできそうにもなかった。


(姿さえ見られなきゃ大丈夫だよね……?)


 要するに問題は私の正体がモンスターということがバレるこということだ。なら、暗い夜などになったら食料をそっと置いて、昼間は気配を悟られぬよう近くでただじっと獣にちょっかいだされないよう見守っていればいい。私は男性に姿を見られないように怪我が治るまでと期限を決め、こっそりと看病することに決めた。

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