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第十三話『出会い(前編)』

 急いで匂いの元へと走ると、山道が土砂崩れによって崩壊していた。多分先日降った雨のせいだろうか。きちんと道が整備までこの道は暫く使えなそうであった。


『この道、そこそこ綺麗だから散歩する時とか使ってたんだけどな~残念………』


 散歩コースの一つだったが、壊れてしまったものは仕方ないと諦め、匂いにもう一度意識を戻す。だんだんと血の匂いが濃くなっていくと、黒い靄の姿をした影犬(シャドードック)たちが何かに群がっていた。


『なんだろう………?』


 私は視覚を集中させる。すると僅かに出来た隙間から覗くことが出来た。その輪の中心にいたのは金髪に鎧を身に纏った男性の姿だった。


「ガゥガゥッ!!!」


「……ぐうぅッ……!!」


『男の人が影犬(シャドードック)に襲われてる………!?』


 金髪の男性は必死に身を縮めて急所である頭などを両手でガードするが、男性の血に興奮した影犬(シャドードック)たちは群れで男性の全身などを噛みつき攻撃し、徐々に体力を奪い弱らせていく。


『まずい……!影犬(シャドードック)たちを引き剥がさなきゃ』


 普段は大人しく物静かで、影などの中で暮らしている影犬(シャドードック)だが血や肉を見ると一気に興奮状態となり、獰猛な魔物にと変わり果てる恐ろしい猛獣だ。人の味を覚えれば次から山の迷い人をも襲い始めるかもしれない。何より人を喰らうと、人間の良くない部分でいう『不浄』、闇の部分までも溜め込み、いずれは人に害をなす魔獣に堕ちてしまう。今まで共にこの森で共存してきた影犬(シャドードック)たち。共の森に住む仲間として人の血の味を覚えて欲しくはなかった。


『これは貴方たちの餌じゃないわ!』


 私は急いで男性に襲いかかっている影犬(シャドードック)を一匹ずつ引き剥がした。口で影犬(シャドードック)の体を持ち上げて放り投げる。


「キャウン…ッ…!!」


 興奮した影犬(シャドードック)たちは私にも襲い掛かってきたが、こっちだって伊達に何百年聖霊狼(フェンリル)やってませんとも。私は背中や手足に噛みついてきた影犬(シャドードック)たちをものともせず、簡単に振り払う。格の違いというやつを教えるためにしっかりと経験値の差を影犬(シャドードック)に見せつけた。


『ここから去れ!!』


「ウウゥゥゥ……!!」


 男性と影犬(シャドードック)の間に無理矢理割り込み、影犬(シャドードック)たちを牽制する。全身の黒い毛を逆立て威嚇を込め低い唸り声を上げた。すると流石に自分たちの方が分が悪いと判断したのか影犬(シャドードック)たちは不服そうな顔はしたが、体を黒い霧に分散し、大人しく影の中へと還っていった。影犬(シャドードック)を追い払い、男性の容態が気になり近くに寄って見てみる。どうやら頑丈な鎧を着ていたお陰か影犬(シャドードック)たちの牙からは身を守れていたらしく鎧が多少傷がついた程度で特に大怪我していなくてホッと胸を撫で下ろした。


『良かった………』


 だが草木で切ったのか顔などには細かな擦り傷があり、頭からも血が流れている。体のあちこちに土汚れが付いて、白くつい世の女性も嫉妬しそうな綺麗そうな肌も所々青紫色へと変色しており、全身酷い打ち身に襲われているのが見受けられた。


『もしかして、あの土砂崩れに巻き込まれたのかな?』


 私がじっと男の容態を解析していると、飛んでいた意識が戻ったのか男と不意に視線が合ってしまう。


『綺麗な瞳………』


 いつか人間の頃に見た宝石図鑑に載っていた『橄欖石(ペリドット)』にそっくりだと思った。『金剛石(ダイアモンド)』『碧玉(サファイア)』『紅玉(ルビー)』など幾つもの有名な宝石が写っている中、薄く淡く光るが不思議と力強さも感じるそれは、特に幼かった私の記憶に鮮明に残っていた。でも私に向けられたその瞳は驚きでも感謝のものでもなかった。


 それは『怒り』であった。


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[一言] そいえば チャドどうしてるんだろ〜
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