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奇跡の水



「これでいい? もしかしたらキミたちとは作り方が違うかもしれないのだけど」



 世界樹(ユグドラシル)から戻ってきたルーニーはどこから取り出したのか、硝子壜(ガラスビン)にコルクのようなものを詰めた液体をエルナに渡す。ぼんやりと発光しているせいか、金色の液体のように見える。



「すごい……初めて見ました。星と月の灯りをそのままビンに閉じ込めたみたい……」



 うっとりとしながらエルナが言う。

エルナに渡された硝子壜(ガラスビン)を恐る恐る解毒術師の女性が受け取る。



「伝承通り光り輝いていますね……。私が昔一度見たときはこのようには輝いておりませんでした。 解析の魔法をかけてもよろしいですか?」


「うん、お願いするよ。解毒まで行かなくても体力消耗くらいは防げると思うんだが……」



 ここへきて若干自信を失い気味のルーニー。大河がフォローするかのように会話を続ける。



「しかしよくガラスのビンなんて持ってたな?透明なガラスって高いイメージあるけど」


「昔ね、朝露を採取したいってドワーフに掛け合ったことがあるんだ。朝露を分けてあげるって約束でね」


「あれ程のクリスタルガラスは貴重でしょうな。このカラシア=ヨーク諸国連合やユグドラシルに住むドワーフも透明度の高いガラスの製作法は秘伝の技術としているそうです」



 ウォードが幾許か驚きながら教えてくれる。世界樹にはドワーフが住んでるのかな?と大河が疑問に思っていると、鍛えられた若手の兵士、といった感じの男性グリスが続けて説明してくれる。



「ユグドラシルはここから北、その名の通り世界樹(ユグドラシル)を含む、レニオス大森林が国土の大半を占める国家です。エルフやドワーフ、獣人などが中心となって形成されている国で、王がいない統治形態をとっています」



 グリスも薬が手に入りよほど嬉しいらしく、白い歯をニカッとだして答えてくれた。



(亜人国家か……。共和制ってことか? やっぱり差別とか弾圧があったりすんのかな。獣人とか友達になってみたいけどな。撫ぜたら嫌がったりされるかな)



「タイガ様はユグドラシルにもご興味が?」



 反対側からミリーが水を運んでくる。



「あ、ありがとう。そうだなあ、獣人とか会ったことないし、エルフにも会ってみたいかな。あ、っていうか、様付けで呼ばれるの、なんか慣れないというか、窮屈なんだけど……」



「ほっほ、タイガ様やルーニー様はお客人ですから。仕方ありませんな」



 ウォードが水を取り分けながら笑う。なんだかなぁと大河が思っていると、ビンを見ながらブツブツ呟いていた解毒術師が立ち上がる。



「解析……できました。奇跡です。あの少しの水に山ほどの木と水のマナ、星月の光もきっと考えられないほどの高地で浴びているのだわ。星月の祝福を受けたマナのなんて神々しいこと。素晴らしい、素晴らしいわ!! それに濃密で生命力に溢れる樹の蜜。それだけでもどんな病でも治せそうなほどです。 研究者にこれを見せたら誰もが自分の資産を投げ出してでも買いたいと思うはずです!」


「よかった、効き目はありそうかい?」


「ライル君はこれを飲んだら人間じゃなくて精霊になってしまうかもしれないですよ、間違いなく効き目があります。もう必要な魔術はかけてあります。エルナ様、どうぞ」



 ビンから小さなカップに移された『精霊の妙薬』を大事そうに抱えるエルナ。ウォードとグリスがゆっくりとライルの身体を起こす。すぐにライルの元へ歩き、ほんのりと輝くその液体をライルの口元に寄せる。



「ライル、タイガ様とルーニー様が貴重な薬をくれたのよ。飲んで」


「あ……がと……ござ……ます……」



 ライルは目でこちらに礼をする。こんな時に律儀な子だと大河は思う。その小さい口でコクリ、と薬を飲む。ぽうっ、とライルの全身が光に包まれる。



「これ……リンゴ……ジュース……?」



 みんなが顔を見合わせ微笑む。余程美味しいのか、半死半生の病人にはきつい量かと思っていたがすぐに小カップの分を飲んでしまった。苦しそうだった呼吸も少しずつつ落ち着きを見せる。



「うん、効いてるね。って見ればわかるわね」


「よ、かった……」



 解毒術師が脈を取りながら伝えると、エルナの頰に銀色の雫が落ちる。何故かつられて大河まで泣いていたのを見て、ミリーとグリスもクスリと笑う。



 医師は魔術で『精霊の妙薬』を小さいボール状にして宙に取り出し、それを霧状にして傷口に直接塗り込む。紫色に変色していたライルの腕は、少しずつだが肌色を取り戻して行く。



(はぁ~医療用なのか? あの霧吹きの魔法。 器用ってか、便利だな)



「少し落ち着いたら止血の魔術を解いて、腕の傷の治療をいたします。ここからは我々だけでも問題ありませんので、皆さまお食事でも取られてはいかがですかな?」



 薬師と解毒術師も頷く。

 治癒の魔術も見てみたい気はするが、確かに安心したらドッと疲れが出た。皆も同じようなものらしい。



「薬は量、足りそうかい?」


「これだけあればヒュドラの猛毒をもう1回食らっても平気ですわ」



 ルーニーと解毒術師の会話でみんなが笑いに包まれる。

ライルだけはピクリと表情を強張らせたが。さすがにあんな思いをするのはもうゴリゴリだ、ということであろう。



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