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精霊は誤魔化さない



(悪意は感じない、ウォードもそう言っていたけど……)



 金髪の美少女は普段誰も立ち入らぬ森林地帯の更に深く奥に人がいることを訝しんでした。衣服も汚れているが、明らかにこの辺りの文化とは異なる。

 しかし、魔族が離脱したのは紛れもなく彼らのおかげだろう。エルナの第六感も、警鐘は鳴らさない。




「あの……精霊使い様、でいらっしゃいますか? その、助けていただいてありがとうございます」



 大河は今も恨めしそうに腕組みをし、ぜってーわざとだ、とぶつくさいいながらルーニーを睨みつけていたが、気を取直し声をかけてくれた女性に向き直る。

 先程木の上からは気付かなかったが、声をかけてきた女性のあまりの可愛らしさに一瞬言葉を忘れる。



 戦いで若干汚れはしているが、スラリとした身体に小さな顔。太陽か満月かと見紛うほど輝く金色のロング・ヘアー。極め付けはその瞳である。もし美の女神がこの世に顕現したらきっとこんな眼をしているに違いないとさえ感じる翡翠の色を宿した眼。神秘的でありながらもどこか暖かみを感じさせる面影。

 恐らく3日間眺め続けたとしても飽きが来ないであろうその少女を直視してしまい、大河は言葉が出てこない。




(ファンタジーすっげええええええええ!! これはアレか!? 美形だと噂のエルフってやつなんじゃないか!?!?!?)



 エルナの特長には、見目麗しいという点以外エルフとの共通性は特段なかったのだが、神秘的な美少女という印象が大河を勘違いさせたのだろうか。



「あ、あの……大丈夫、ですか?」



 何か自分が不躾なことをしてしまっただろうか、とおずおずと声をかける金髪の少女エルナ。

すると、何故か横からルーニーが口を挟む。



「ウン、この子は意外と丈夫なんだ!」


「君のせいだからね!? 落ちたの!?!?」



 最早条件反射となってしまった突っ込みで、大河はやっと現実に舞い戻った。

エルナは急に(Q)ツッコミが(T)来たので(K)ビックリしている。



「あ、と……ゴメン! 俺は大丈夫。助けたってのも……正直最後何が起きたかすらわかってなかったから!! ってかルーニーの空間から出るとさみーな!」


「いやぁ折角の大河の必殺技、ファイティング・シャイニング・デンジャラス・タイガ・アローの出番がなかったね」


「知らねえよなんだよその小学生の考えた必殺技みたいなの!!」


「そうだね、まずボクが大河を持つ」


「俺は持たれる」


「そしてボクが大河を射出する」


「果たしてどうやってだ」


「大河は錐揉み回転をしながら進み、速度はマッハを超える」


「ライフリングされてんの!?」


「大河は光り輝き、最終的に断熱圧縮により燃え尽きる」


「へへ……燃え尽きちまったぜ……真っ白にな……」


「立て! 立つんだ大河ァァァ!!!」



 目の前の美少女はそんな俺たちの茶番を見て、少し考える仕草を見せる。

 しまった、つい乗っかってしまった、変人に思われるかもしれない、大河が危機を感じると少女が口を開く。



「……かなり、強そうな必殺技、ですね……」


「……いや、実際そんなことしないからね?」


「えっ、しないのですか!?」


「信じてたの!?!?」


「えっ、しないの!?」


お前(ルーニー)が信じるんかい!!」



(この()……ヘンな子だ!?)



 でも可愛い、とへにゃりとしてしまう。



「そちらの猫?ちゃんは、神格をお持ちの大精霊様とお見受けしますが……。仲がとてもよろしいのですね」


「え、神格? 大精霊? 大とかつく精霊なのお前?」


「そりゃそうさ。自我を宿しあまつさえ言葉を解する精霊なんて殆どいない。元が植物や小動物の妖精なんかならまた別だけどね。ボクみたいにマナから生まれた純精霊でしかも自力で世界に存在を留められる精霊なんて、ホント極一部だから! まあ神に準ずる存在ってことなのだ!」



 えっへんと胸を張るルーニー。ウンウンと頷く美少女。



「へえ、そういうもんなの。名前、マナ太郎にすればいいのにね」


「なんだとう!」


「あの、そうだ、大変失礼なことを! 私はエルナ、エルナ・ヴァン・ノバーナと言う占星術師です。この度は襲われているところを助けていただき、本当にありがとうございます」


「あ、ああ……! 挨拶が遅れて申し訳ない。俺は山内大河と申します。こっちはマナから生まれたマナ太郎。よろしくお願いいたします」


「ボクはルーニーだい!」



 頭をグイーッと下げる。ルーニーにも頭を下げさせようとするが、デンプシーロールで反撃される。



「ルーニー様……に、ヤマウチ……タイガ様、ですか? あまりこの辺りでは聞かない響きですが……?」



 聞きなれない響きに、エルナは首を傾げた。



(しまった、偽名のほうがよかったか? 苗字があるのは貴族くらい、とかいう世界の可能性もある訳だし)



「ん、あーそうか。えっと、そうだな。説明が難しいんだけど、俺の住んでた国ってものすごぉ~~~く遠いところで」


「遠い……というと神聖国やミュルーズ王国のほうでしょうか? 帝国の方……ではなさそうですが……」



(やっべえな、人がいるって先足だっちゃったけど、自分のことありのまま説明してもいいのか?

 この子たちが悪い人たちには見えないけど、「異世界から来た」、なんて言って面倒なことになるとかは十分あり得る……!)



 大河はルーニーをチラリと見る。



(ルーニー、何とか誤魔化すんだ!!)



 ルーニーは俺のアイ・コンタクトの意図を読むと、小さくコクリと頷く。



「神聖国やミュルーズはこの大陸の反対側の別大陸にある国で、もちろん大河の生まれた日本とは何の関係もないから安心して!!」

「そうじゃねぇええええええええええええええ!!!!!!!!」



 大河は爽やかに親指を立て、笑顔を浮かべるルーニーに頭からスライディングする。



「そうじゃねえ! そうじゃねえんだよこのあんぽんたん!! お前俺の心読めるんじゃねえのかよォォォ!!!!!!」


「失礼だな、ボクだってTPOくらい弁えて心を読むさ」


「むしろ今読んで!?!?!? 誰が説明してくれって言ったんだよォォォン!!??」


「うわぁすごいななんか。額から血出てるよ大丈夫?」


「引いてんじゃねェェェェェェ!!」



 わざとか、わざとなのかコンチクショウ。大河は思わず血の涙を流す。

目の前の美少女はそんな俺たちの茶番でクスリと笑う。

 大河はポッと顔を赤らめた。



(天使や……天使がここにおるんや……!)



「ご、ごめんなさい楽しそうにしているところを」



 どこがじゃ。



「で、でも申し訳ありません。ニッポン、という国は耳にしたことがありません。不勉強で恥ずかしいです……。ここから、遠い国なのですね……」



 エルナは少し物憂げな表情を浮かべる。

大河がその表情をみて、どうしたのだろうとか考えていると、今度はルーニーがエルナに尋ねた。



「そういえば、キミたちこそこんな森深くで何をしてたんだい?」



(おお、いいじゃんルーニー、ウヤムヤ大作戦だな?)



「……そうですね、私たちの目的をお話しする前に約束していただきたいことがあります。

 助けて頂いた恩がありますので信用致しますが、私たちの目的は決して他言しないでください」


「別に他に話す相手もいないもの、ねぇ?」



 ルーニーがこちらを見ながら同意を求める。



(余計な事いうんじゃないよ! ……とはいえ、エルナ達に明確な目的があるなら、俺が異世界人と知ってもそれに価値を感じて無茶をするなんてこともないか? つーかむしろ俺に価値があるって前提が間違ってる可能性も高いよな。だったら素直に話して保護してもらうほうが……)



 大河が普段使わぬ脳を無理に稼働させようとしている中、エルナの形の良い唇から声が紡がれる。



「この森に現れたある人を保護すること。それが私たちの使命です」



もし「続きも読みたい」「ここをこうすればいいのに」「とりあえず頑張れ」と思っていただけたら、下の項目からブクマ登録やレビュー、評価、感想を頂けるとモチベーションガンガンあがります。


次への活力になります!


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