序章
主人公無双系ではないです。
異世界転生ものでもハーレムでもありません。
ご了承の上ご一読ください。
時は江戸時代。長く続いた戦国時代は終わりを告げ、泰平の世と変わっていった。征夷大将軍である時の徳川公は、二度と戦国の世にならないために、自分の持つ財力と人脈を使って戦争の原因を探らせた。その結果、驚くべき事実が明らかになった。
然したる戦争の原因は、無論、強者たちの『天下を取りたい』という野心であるが、それを誘発し、刺激したのは七本の刀の存在だった。
七本の刀は『天下七刀』と呼ばれ、他のどの刀よりも優れていた。『この刀さえあれば天下が取れる』と錯覚するほどに優れた刀だった。この刀を手に入れたが故に、天下を取ろうと大名達が立ち上がったのだ。時には、それらの刀自体をめぐり隣国に戦争を仕掛けた者もいた。それこそが、戦国時代の原因だった。徳川公はそのように結論づけたのだった。
徳川公は悩んだ。危険な刀が世に残っているなら、また戦国時代になりかねない。刀狩りなんてしたら、かえって天下七刀の存在が世に明らかとなってしまう。悩んだ末に出た結論は秘密裏に刀を収集することだった。幕府は秘密裏に各地の藩主にのみ接触して、七刀を集めるように命じた。刀の価値を知らない藩主達は、褒美である金や土地、出世に釣られて、密かに七刀を探しだした。しかし、一向に七刀は見つからなかった。
幕府や各藩主達が血眼になって探した結果、全国から集められたのは、七刀ではなく七刀の情報のみだった。分かった情報は、七刀は作者が皆別だということ。作者は一様に当時の朝廷や幕府を憎んでいたと言うこと。彼らが作った七刀と呼ばれる刀は、名のある剣豪のもとに渡り、いつの間にか消息を絶ったということくらいだった。
幕府は、七刀を手に入れるために、あらゆる報酬を用意し、家来達や藩主達の背中を押した。だが、天下七刀を見つけることは出来なかった。