第4章 至高VS急造-2
本日2話投稿、この話は2話目です。ご注意ください。
『――皆さん、先日起きた異世界バルバドニア・サンディカニア王国によるAWS――召喚魔法による邦人拉致事件をご記憶でしょうか』
ニュースの画面に、「AWS(Another World Summoning):異世界からの召喚魔法による邦人拉致」とテロップが出る。
『そのサンディカニア事件で、バルバドニアの特定排除対象者、歯車の魔王ジャジャラヴァキを見事討ち取ったのも彼女――オーソドクス征徒会長弥勒玄魅嬢でした。今回、二度目のお手柄というわけです』
今度は、「特定排除対象者(通称・魔王)」、「歯車の魔王ジャジャラヴァキ」のテロップが浮かぶ。
『《闇の司祭》の異名を持つ彼女は、いくどか異世界転生を繰り返したため、現在はいくつかの異世界において実在が確認されている種族・ダークエルフの容姿を持っています』
『いつまでも若く美しいと言われる幻の種族ですね。私も転生権が手に入るなら生まれ変わってみたいです』
と、コメンテーターの横に座っている人気女優が言った。
『転生権の中でも、とくにエルフと呼ばれる長命種族のものは桁外れの値段が付きます。さらに稀少と言われるダークエルフへの転生権が世に出たら、天井知らずの高値が付くでしょうね』
『金持ちは転生権を使って若返り、お金をさらに稼いでますます裕福になる。金で寿命が買えることに関しては、宗教団体からも禁止すべきとの声が上がっています』
『とはいえ、清心教の教祖の例もありますからね』
画面下に「清心教」のテロップ。その右肩に小さく表示されている「より詳しく」という文字に意識をフォーカスすると、
《清心教教祖転生事件:3年前、異世界転生は仏の教えに背くものであると説いて人気を博した新興宗教「清心教」の教祖が、信者から集めた金で転生権を購入し、異世界へと転生していたことが発覚した事件。》
と、テレビの上の空間にM/Vでテキストが表示された。
『彼女が手にした異世界クロウ=チャーティアへの召喚権ですが、AWSOのオークションにかけられるとの情報が入っています。
片道、使い切り型ではありますが、特定召喚ですので、勇者能力を手に入れることができます。
専門家によれば、召喚権の価値は、最低でも500億を下回ることはないだろうとのことです』
『夢のある話ですけど、私は戦うのはちょっと怖いですね……見知らぬ異世界に赴くAWSOの干渉官の皆さんには本当に頭が下がります』
『まさしく現代の英雄というべきでしょう。小学生の将来なりたい職業ランキングでも、AWSO干渉官はぶっちぎりの1位を維持しています。異世界の存在が知れ渡る前、十年以上に渡って公務員がトップだったことを思うと、隔世の感がありますね。あの頃の日本は、マスコミも街も本当に暗い雰囲気で――』
そこから始まったアナウンサーの昔話を、女優がニコニコ笑顔で聞き流していく。
……これ以上は身のある話は聞けそうにないな。
俺はギアに命じてテレビの電源を切らせると、オーソドクスの制服を手早く着込んで家を出た。