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プロローグ

初投稿になります。

至らない点が多々あると思いますが、宜しくお願い致します。

「おふ……」


 変な声出た。

 まぁこんなとんでもない状況に陥ったら、変な声の一つもでるさ。


 だって今の僕、ドラゴンに首から下を覆うように握られ、地上五メートルの高さに持ち上げられているんだから。

 完全にお手上げ状態。

 いや、握られているから手は上げられないんだけどな……。

 首から下は全く身動き出来ないし、仮に抜け出せたとしても、この高さじゃ逃げ場なんてない。


 タチの悪い事に僕は突然、こんな状況に陥ってしまった。

 例えばこれが色々な段階を経て、最終的にもうお手上げって事なら、それはそれで仕方ない、納得出来る。

 だけど僕の場合いきなりだぞ? 初手からだぞ?

 詰め将棋もびっくりなくらい詰んでるよ、むしろこれ詰()将棋だよ。


「ジンさん!」


 少し後ろからセシリアさんの声がする。


「だ、大丈夫」


 な訳ないでしょ。

 お手上げ状態なんだから。

 でも素直に助けてなんて言えないよなぁ……。

 僕だってもう少しマシな状況なら、遠慮なく助けを求めた。

 だけどこの状況は、助けを求めたら駄目なやつ。

 助けに来てくれた人が、そのまま被害者になってしまうやつだ。

 そうと分かっていて、しかも女性に助けを求めるなんて出来るはずない。

 意外と冷静な判断をした自分に内心苦笑しながら、僕は決めたくない覚悟を決めて眼前を睨み付けた。


 そこにあったのは、巨大なトカゲのような顔。

 視線を動かして、他の部位を確認すると。

 

 真紅の鱗、巨大な体、しなやかな尾、雄々しい両翼。

 

 ほら。

 やっぱりドラゴン。


 ゲームや物語、空想の中にしか存在しないはずの、いわゆる西洋竜と呼ばれる架空の生物が、なぜか目の前に具現していた。


 そして僕の命は、色んな意味でドラゴンに握られているって訳。


 このまま一思いに握りつぶす事も簡単なはずだけど、それをやらないという事は……もしかして食べる気なのか?

 マジ勘弁して下さい。

 生きたまま食べられるなんて、少し想像しただけでも身震いしてしまう。

 一噛みで息の根を止めて貰えるならいいとして、ちまちまと齧るように食べら……おおぅ、やめやめ。


 それにしてもこのドラゴン、僕の臭いを嗅いだり色々角度を変えて眺めたりと、一向に危害を加える素振りを見せない。

 どこから食べようとか考えているんじゃないよな? そんな事ないよな?

 ……まぁこのまま危害を加えられないってのは、流石に甘い考えだと思う。

 いつ丸呑みにされて、生きたまま胃酸に溶かさ……やめやめ。

 色々想像しても仕方がない、ここは一旦冷静に状況を整理してみよう……。

 

 僕が今いる場所、それは王都ローランドの中央広場。

 ここは半径五十メートルくらいありそうな馬鹿でかい広さで、石畳できちんと舗装されている観光名所オーラ出しまくりの、非常に美しい広場。


 比較的自由に動かせる首を左右に振って周囲を見渡すと、二十メートルほど距離を空けて、王都の人々がこちらを伺っている。

 って言うか、僕を見ていた。

 完全に晒し者だな……。

 

 時刻は昼を過ぎた辺り。

 中心部なだけあって人通りも多く、ざっと二百人近くはいると思う。


──変だな。


 目を丸くして驚いている人や、オロオロと戸惑っている人はいても、怖がっている人は一人もいない。

 すぐ側にドラゴンがいるのに、誰も怖がらないって……明らかに変だ。

 ほら、そこの女の子、笑顔で僕に手なんか振ってるし……。

 更に言えば、誰一人として逃げようとしない……普通ありえるか?

 

──あっ!


 思い出した……。


 このドラゴン……僕が中央広場に来た時、ここで寝ていたんだ。

 僕が勝手に像だと勘違いしていただけで、最初からここにいたんだ。

 突然の事で混乱してしまい、こんな大事な事を忘れていたなんて……。

 王都の中央広場にドラゴンが寝ているなんて、かなりぶっ飛んだ話だけど間違いない。


 そして全ての状況を総合すると、とんでもない答えが出てしまうんだけど……。


 【このドラゴン、いつも広場にいたんじゃないか?】


 ……自分でも突拍子もない推測だと思う、でもそうだとしか考えられない。

 そして日常の事ならば、ドラゴンに危険性はないという事になり……。

 え、あれ?

 じゃあ何で僕はこんな目にあっているんだ?


「ほうほう。怯えず睨み返すとは中々どうして、可愛い顔をしておるのに度胸があるのぉ。妾にそのような目を向ける人間はそうおらんぞ。ククク」


 思考の迷路にはまり込んでいた時、ドラゴンは唐突に口を開いた。

 食事的意味じゃなくて、会話的意味で。

 微笑むように目を細めるドラゴンの声は、巨体とは裏腹に人間と同程度の声量で、しかも女性の声だった。

 いや、もうこの際声量とか女性だとか、あまつさえ声優の誰に似た声だとか……は少し考えたいけど、まぁそれは一旦置いといて。

 ここで重要なのは言葉が喋れる、会話が可能だって事。

 会話が出来るのならば、何か打開策も見出せるかもしれない。

 ……こういうのは最初が肝心だ。

 舐められたら相手のいいように話が進んでしまう。

 最初に、「僕に手を出すと火傷じゃすまないぜ」と、分からせなければいけない。


「すみません、もしかして眠りを妨げた事に怒ってらっしゃいますか? もしそうだとしたら申し訳ありませんでした。悪気はなかったのです」


 ドラゴン相手に強気に出るとか、僕が火傷じゃすまないぜ?


「寝てなどおらんぞ、ずっと起きておった。もちろん怒ってもおらん。むしろスキップしたくなるほど機嫌がよいぞ」


 ドラゴンのスキップってどんなんだよ……。


「と言う事は、僕を食べる気はないって事ですか?」

「当たり前じゃ。妾は人間など食べん、そんな気色悪い事言うでない」


 何言っちゃってんのこいつ、みたいな目で見られた。


「……じゃあ手を離して貰えると嬉しいのですが」


 こんな時どんな表情をすればいいか分からないので、僕は笑えばいいと思った。

 精一杯の笑顔。

 今ならばスマイルでお金が取れるかもしれない、そんな会心の笑み。

 汗が頬を、静かに流れ落ちていく。


「なんじゃ、折角ロマンティックに抱擁しておるというのに、意外と照れ屋じゃのぉ。あまり乙女に恥をかかせるものではないぞ」

「どこが抱擁だよ! これどう見てもMajiでKuwaれる五秒前だよ!」

 

 つい全力でツッコミを入れてしまった……。

 だけどドラゴンは僕のツッコミに機嫌を悪くする事なく、むしろなぜか満足そうな笑みを浮かべながら、拳を地面に降ろして拘束していた力をそっと緩めた。


 地面に足が着いているという安心を感じながら、僕は数歩下がってドラゴンを警戒する。

 危険はない気もするんだけど、まだ完全に安心出来ない。


 そんな僕の警戒なんてお構いなしに、ドラゴンはここからが本題といった感じで――。


「さて婿殿。それでは妾と子を成そうか」


 そんな言葉を吐いたのだった。


 とりあえず危険は去ったと思っていいだろう。


 ……でも。


 ドラゴンに子供を作ろうと迫られた僕は一体どうしたらいいのかな?



お読み頂きありがとうございます。

文章の変な所、変更したほうが良い部分、感想等お待ちしています。


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