表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

入学式とセーラー服と鉛玉

突然、暗幕でも取り去ったように周りの景色が暗闇から変化した。


目の前には青い空と白い雲の群れ。

そして、下には街並みが広がり・・・・・・え!?

ちょ、ま、わた、私、浮いてる!?



(落ち着いて下さい。『世界の記憶』を再生しているだけです。実際に宙に浮いている訳ではありません)



・・・・・・そういえば、私の姿も見えないし・・・・・・まだ、私の意識の中ってことね?



(そうです。『ここ』で再生する方が分かりやすいと思いまして。)



もう、何でもアリなのね・・・・・・さすが神様。



(私でなくとも『世界の記憶』の再生程度なら簡単に出来ますよ。『箱庭世界の記憶』で『関係者』なら、という限定付きですが)



私にも出来たりするの?



(そうですね・・・・・・『魔法使い』になれば可能でしょう)



そっか・・・・・・考えとこ。



(さて、『あの時』の『あの場所』へ行きましょう。貴女の『運命の刻』へ)



まるで早送りされたかの様に周りの景色が流れる。

気が付くと、何処かの学校の上空にいた。


ここは・・・・・・見覚えがあるような、ないような・・・・・・



(ここは出川(いでがわ)高校。外の世界の貴女が通うはずでした。正確には入学式には出ましたが)



入学式の後に何かが起きたの?



(時系列順に見ていきましょう。現在の時刻は午前8時を少し過ぎた頃。入学式は9時からなので、そろそろ新入生や保護者が登校してきます)



もしかして、あの写真は今頃・・・・・・?



(時間的にはもう少し後になりますか。何分、皆さんが同じように校門で写真を撮るので、順番待ちの様な列が出来てしまってますから)



あ、ホントだ。なんか並んでる。



(礼儀正しいというか、何というか。不思議なものですね、日本人というものは)



こういう時は自然と列を作っちゃうから。国民性?



(それが悪いとは思いませんが・・・・・・この瞬間にもトラックが突っ込んでくるかも知れないのにのんきですね、皆さん)



えぇ!?トラックが!?大惨事じゃない!?



(突っ込んできたら、の話です。この時間帯は何も起きません)



なんだ・・・・・・ビックリしたよ・・・・・・。

工事のトラックとかが多いから、てっきり・・・・・・。



(そうですね。今日は学校の内外で工事が多いですから。学校周辺では電気・電話線工事。学内では体育倉庫と運動部のクラブ棟の建て替え工事が続いています)



そういうのって、新年度始まる前に終わるんじゃ・・・・・・?



(予算的なものや工事の都合などで遅れてるようですよ。まぁ、体育倉庫等が実際に完成するのは次年度半ばでしたが)



え?あ、過去だから・・・・・・。



(それはさておき、そろそろ貴女の番ですね。見てみますか?)



・・・・・・何か、恥ずかしいからやめとく。ビデオ見せられるより恥ずかしいよ。



(そうですか。では、時間を少し飛ばしましょう。)



周りの景色がまた早送りの様に流れる。

今度は体育館の天井付近から入学式の会場を見下ろしてる。

会場後ろ半分の保護者席はほぼ埋まり、横の壁際では先生方がスタンバってる。

前半分の席にも新入生が座り、声量小さく周囲と話をしている。



(現在の時刻は9時2分前。間もなく入学式が始まります。)



あ、『私』発見。中央通路の後ろから3番目なんだ。

うわ、何か緊張してる・・・・・・私まで緊張しちゃうよ。



(あれは緊張している演技でしょう。貴女はそれぐらい余裕が有りました。色々と・・・・・・)



演技?・・・・・・あ~・・・・・・



(覚えがあると思いますよ。大天照(おおあまてる)学園の入試も同じことをしてましたからね)



知ってるんだ・・・・・・



(私だけではありません。貴女の両親もその辺りの事はご存知・・・・・・まぁ、高校入試に関しては予想レベルですが。総代などに選ばれたくない、目立ちたくない、妹のハードルを上げたくない、という理由であらゆる試験を平均75点に抑えるのは如何でしょう?)



それは・・・・・・その・・・・・・



(まぁ、その辺りは私には関係のない事ですから。・・・・・・そろそろですよ)



え?何が?と思った瞬間、突然体育館の照明が消えた。

停電?



(停電と言えば停電ですね。人為的に起こされた停電ですが)



えぇ!?人為的!?何で!?



(他にも学校周辺の携帯基地局や電話回線など通信手段も遮断されました。今この学校は外部と連絡の取れない陸の孤島と化しています)



意味がわかんないんだけど・・・・・・連絡手段を閉ざしてどう・・・・・・うっ!!


ズキンと頭が痛む。思い出すな、知るなと言われてるみたいに。



(それはこれから分かります。ほら、役者が登場しますよ)



体育館の後ろ正面出入口から覆面をした集団が入ってきた。

手には・・・・・・銃!?何!?



(テロリストですよ、ただの。今年の新入生の中には政府要人や高級官僚の縁戚が多いみたいですから)



えっと・・・・・・要求を飲ます為の人質ってこと?



(そして、彼らの一番の狙いは・・・・・・)



3人が後ろの出入口を封鎖し、3人のテロリスト?達は手に持った何かをチラッと見て、新入生の方へ駆けて行く。残りは後方から左右へ展開し、保護者席の方へ銃を構えている



(どうやら見つけたみたいですね。まぁ、見つかりやすい位置にいますから)



テロリストの1人に銃を突き付けられた生徒が・・・・・・って、『私』!?



(はい、『貴女』は人質にされます。残念ながら)



えっと・・・・・・ドッキリ?



(違いますよ。正真正銘のテロリストです。銃も本物ですよ。その証拠にほら)



パンッと乾いた音が体育館内に反響する。

体格の良い先生ーー体育教師だろうか?ーーが床に倒れる。そして広がる赤い水溜まり・・・・・・


近くにいた女子や先生が悲鳴を上げる。

パニックになる体育館内に2発銃声が響き渡った。


・・・・・・途端に水を打ったように静かになる。



(あの体育教師・・・・・・布川(ぬのかわ)という名前ですが、アッサリと亡くなりましたね)



・・・・・・なに・・・・・・がおきてる・・・・・・の・・・・・・?


テロリストが『私』の腕を掴んで引っ張っていく。


「死にたくなければ抵抗するな。1人でも騒げば・・・・・・」


『私』を掴んでいる男が後頭部に銃口を突き付ける。

静まりかえる体育館内。

男はリーダー格らしく、彼の指示で2人の生徒が人質として捕まえられた。



(あの2人は閣僚の縁戚で、身代金と彼らの仲間の保釈交渉材料として使われます)



私、関係ないよ?親戚とかに政治家とか偉い人とかいないし・・・・・・



(彼らの本当の目的は貴女の父親です。『ADAM』プロジェクトに関係していて、彼らからすればパスコードを知っていると思われる人物)



お父さんが?『ADAM』プロジェクトって?



(私が外の世界でも『魔法使い』と同じことが出来る、と説明しましたね。等価交換法を使えば、資金がある限り何だって手に入ります。武器でも薬品でも核でも)



背筋に冷たい汗が流れた気がした・・・・・・。



(例えば貴金属品を身に付けておいて、ターゲットに近づき等価交換法で武器に代えて始末した後に元に戻す、という事も可能ですよ)



そんなこと・・・・・・



(彼らはそんなこと知りませんがね。『ADAM』をエシュロンよりも遥かに高性能な情報分析システムだと思ってるようです)


(『ADAM』プロジェクトとは私によって創り出された『箱庭』を有効利用するためのプロジェクトです。

例えば『外の世界』で病気治療の特効薬の開発には莫大な時間と費用がかかります。

それを『外の世界』と同一に設定した『箱庭』で『住人』にさせることで時間と費用を大幅に浮かすことができるのです。)



テロに使われる技術じゃないんだ・・・・・・



(使おうと思えばいくらでも使えますよ。要は使う者次第です)



何でもそうだよね・・・・・・



(さて、時間を少しとばしましょうか)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ