眠り姫と神と深層領域
身体がふわふわしてる。
まるで、プールに浮いてるような、水の中を漂ってるような感覚・・・・・・
でも、周りは真っ暗。明かりも何もない。
まるで、箱か何かの入れ物に、もしくは窓も何もない部屋に閉じ込められたような・・・・・・そんな真っ暗さ。
何でこんな風になってるんだろう?
私・・・・・・どうしてたんだっけ?
学校にいたような・・・・・・
少し先の暗闇に何かの『揺らぎ』が見えた気がした。
陽炎みたいだけど、ごくわずかなもの。
私の手のひらくらい?
(ようこそ、『眠り姫』)
『揺らぎ』の辺りから声が届いた気がした。
声、というよりはテレパシーみたいな?
テレパシーを感じた事は一度もないんだけれど。
「誰?」
とりあえず口に出してみる。
テレパシー使えないし・・・・・・とか思ってる私はわりと余裕あるのかもしれない。
きっと夢だと思うし。明晰夢?
(私は『ADAM』 貴女方の認識で言えば『神』が一番近いでしょう)
「神様?」
何か、昨日聞いたフレーズ・・・・・・思わず空渡君が思い浮かぶ。
(あぁ、『魔法使い』が昨日貴女に言っていましたね。『神様になったようだ』と)
口にしてないのに・・・・・・と思ったけど、テレパシーなら分かっちゃうよね。
いや、ホントにテレパシーかどうかは分からないけど。
って、『魔法使い』って、空渡君の事?
(そうですね・・・・・・貴女の認識では『空渡大地』です)
空渡君、『魔法使い』って呼ばれてるんだ。
さすが夢。ファンタジーな感じ。
(此処は夢ではありません。貴女の意識領域という意味では近いものですが)
んん?どういう事?夢じゃないの?え?何これ?
(貴女は先程気を失いました。覚えていますか?)
え?えーと、何だっけ?あ、ケータイで写真見てて・・・・・・変な写真があって・・・・・・苦しくなって・・・・・・
(私が貴女に宛てた『過去』を見たのです。『外の世界』と『箱庭』の両方の貴女の『過去』を)
『過去』?『外の世界』?『箱庭』?何?どういう事?
(ここは、私がある目的の為に創り出した『箱庭』の1つです。パソコンの中に作ったゲームの世界、とでも思ってもらえれば分かりやすいでしょう)
あなたは一体何なの!?
(先程も言いましたが、私は『神』です。世界を創れる程度に)
じゃあ、その神様がどうして私に?
私、死んじゃうの?ドラマとかで良くあるみたいに。
(まずは、貴女の事を説明しましょう。彼らが秘匿している貴女の秘密を)
私の・・・・・・秘密・・・・・・?
って、彼らって誰?
(彼らとは、『箱庭』の管理者。それから『魔法使い』)
『箱庭』の管理者?創ったのはあなたなのに、管理者は別?
空渡君も関係者なの!?
(『魔法使い』は貴女の秘密を『偶然』知ってしまいました。世界の仕組みを・・・・・・『箱庭』の事を知ってしまった時に)
あれ?『箱庭』と私の秘密って関係があるの!?
・・・・・・もしかして、私も『魔法使い』とか?
(『魔法使い』に成りたいのなら、叶えてさしあげますが・・・・・・この『箱庭』は今や貴女の為の世界だと言っても過言ではありませんから)
私の為の世界?ますます分からない。
そういえばさっき『眠り姫』って・・・・・・
(『外の世界』の貴女は、『ある時』から眠り続けています。嫌な表現だと思うかもしれませんが、生きているのか死んでいるのか分からない状態で)
・・・・・・それは、事故か何かで眠り続け・・・・・・
突然、赤い感触が私を包んだ気がした。痛い、熱い、怖いイメージ。
手が、足が、身体が、顔が熱く焼けるような感覚。
おもわず悲鳴をあげ・・・・・・
(深層領域にはまだ記憶されていましたか・・・・・・。『フィルター生成 阻害率90%』)
薄布のような何かで身体が包まれるような感覚。途端に焼けるような感覚が薄れていく。
微かに温かい感触があるが、先程に比べれば何てことはない。
今のは・・・・・・
(無理に思い出そうとすれば、今のようになりますよ。『あの時』の感覚はまだ貴女の内に記録されてるようですから)
どういう事?
(管理者は貴女のトラウマにならない様、『あの時』の記憶を操作しました。残念ながら、深層領域までは操作出来ずに『あの時』の感覚だけが残っていたのです)
記憶操作!?何それ!?いつ!?何で私が!?
(では、お見せしましょう。『あの時』貴女に何が起きたのか。貴女が何をしたのか)