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百合っぷるかもしれない親友と靴箱の白いモノ

おかしい。何かがおかしい。


ぶつぶつと小声でつぶやきながら、通学路を歩く。

幸い、回りには誰もいない。


何がおかしいのかがわからないけど。

少なくとも私の記憶と母や美羽の記憶が違う。


財布の中身を確認したが減った様子もなく、買って帰ったとは考え難い。


・・・・・・誰かにもらった?一体誰に?


首を振り、考えを消す。


『昨日は家に帰るまで1人だった』

先生の用事も下校も。誰かに会った記憶はない。


・・・・・・やっぱりおかしい。下校中に誰の姿も記憶に残ってない。

多少遅かったとはいえ、普段なら挨拶を交わす近所の人達を誰も見ないはずがない。まぁ、そんな日もあるかもしれないけど。


何か見落としがないか、昨日の帰り道を歩いてみる。


・・・・・・さっきから後をつけられてる気がする。

もちろん通勤通学の時間帯だから、気のせいな可能性が高い。

自意識過剰とゆーか、ちょっと過敏になってるんだろうか?


「みれなん、おっはー!」


気を取り直して学校へと向かう私の背後から声が掛けられる。


「あきちゃん、おはよ」


クラスメイトの春原秋乃(はるはらあきの)ちゃん。

座席が前後でとっても仲良し。


「ぶつぶつ言いながら、何難しい顔してたの?」


・・・・・・見られてたらしい。かなり恥ずかしい。


「あははは・・・・・・ちょっとね」

「何よぉ・・・・・・お姉さんに話してごらんなさいな」


あきちゃんの誕生日は私の1日前。時々お姉さん風を吹かせたがる。

記憶が~なんて言えないし・・・・・・。


「変な夢見てベッドから落ちちゃった」

「ほっほー、ヘンな夢ねぇ」


あれ?何かあきちゃんのイントネーションがおかしかった?


「どんな夢よぉ?」

「うぅ・・・・・・その笑顔が怖いよ、あきちゃん」

「ほらほら、お姉さんに白状なさーい」


あきちゃんが両手をワキワキさせながら近寄る。

苦手なんだよね、アレ。


「なんか、知らない男の子を追いかけてるの。走ってるのにだんだん離れてって。で、ベッドから落ちちゃった」

「なーんだ。もっとエロエロな夢かと思ったのに」


あからさまに落胆ポーズをしながら、溜め息をつくあきちゃん。

私、そんな夢見ないし。


「もぉ、そんな訳ないでしょ」

「で、その夢のイケメンが気になってんの?」

「まぁ、イケメンさんなのかなぁ。ちょっとタイプっぽかったし」


途端にあきちゃんの顔色が変わる。


「マジ!?誰!?リアルの誰よ!?」

「だから、知らない男の子だってば」


妙に興奮してるっぽいあきちゃんに苦笑してしまう。


「おはよう」

「おはよー」


あきちゃんと話してる間に正門のところまで来ていた。

特に変わったトコはなかった・・・・・・のかなぁ。話してたから確認出来てなかった、が正解かな。

思わず小さく溜め息をついてしまう。


「はっ!?まさかの恋煩い!?」


あきちゃんが大声で叫んだので、みんなの視線が一斉に集まる。

反射的に素知らぬ顔をして急ぎ足になる。

もぉ、恥ずかしいなぁ・・・・・・


うっかりあきちゃんを置いてきぼりにして、急いでその場を後にする。

とりあえず昇降口まで来れば安心・・・・・・


「み~れ~な~ん、ちょっと~」


う、後ろから黒いオーラが迫ってきた。


「置いてくなんてヒドいなぁ、お姉さん悲しい」


目許を制服の袖口で押さえながら、あきちゃんが迫ってくる。


「だって、大声で変な事言うんだもん」


「だからって置いてかないでよ。あー、恥ずかしかった」


それはこっちの台詞なんだけどなぁ、と心の中で呟く。

とりあえず、上履きに履き替えて・・・・・・



ん?



下駄箱の扉を開けると1通の封筒。

え?何?まさかの!?


反射的にあきちゃんを見る。幸いにも気付いてない。



これは・・・・・・もしやの・・・・・・恋文とゆーものでしょうか。

人生初にちょっと感激と戸惑い。


手紙を素早くスカートのポケットに入れ・・・・・・ようとして落としてしまった。

マズい、あきちゃんに気付かれる。


「ん?みれなん、ヘンなポーズしてどしたの?」


足元に落ちてる封筒には触れず、落としたままの格好で固まってる私を気にする。


・・・・・・何で?

あきちゃんなら、間違いなく拾い上げてからかうはず。

なのに何で?

もしかして、あきちゃんのイタズラ・・・・・・はないか。


「うぅん、何でもない。」


とりあえず拾ってしまおうと封筒に手を伸ばすと、宛名が目に留まる。


『萌黄 美澪奈 様』


とても達筆な文字・・・・・・途端に衝撃が走る。

頭の中で何かが割れるイメージ。



この字は・・・・・・空渡君の・・・・・・空渡君の字だ。



幾度となく目にした、彼特有の綺麗な筆跡。


『忘れていた』彼の事が頭の中に蘇ってきた。


昨日の放課後の事。


彼が魔法を使った事。


そして、今朝見た夢。





「空渡君!!」


走りながら、思わず叫ぶ。

その声が届いたのか、遥か先を歩く彼の足が止まる。

しかし、どうしてだか距離が縮まらない。


「空渡君!!」


再び叫ぶと、足を止めた彼がゆっくりと振り返る。

いつの間にか二人の距離が僅か数メートルまで縮まっていた。

はっきりと見える彼の表情。とても哀しそうな笑顔・・・・・・どうしてだろう。胸が締めつけられる。


「どうして私を置いてくの!?」

「キミが大事だから」


私の発した言葉にまるで幼子の様に左右に首を振り、拒絶の意を示す。


「何で!?意味わかんないよ!?」


「・・・・・・もう一度会いたいのなら、手紙を探して。昨日の僕が遺した手紙を」


はっきりと聞こえた、彼の言葉。何かを決断したような重く絞り出すような声。

同時に彼が差し伸べた手を取ろうとした瞬間・・・・・・





昨日、彼が私に魔法を掛けたのと今朝の夢にはきっと何か関係があるはず。

後で、彼に聞いてみよっと。


とりあえず封筒を拾って教室へと急ぐ。

百面相をしてたっぽい私にあきちゃんは何も言わなかった。

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