表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アークライセンス  作者: 植伊 蒼
第3部‐閃光は海を越えて‐
80/259

エピローグ Ark-Memory_Nightmare_1

 俺が最初に感じたのは、熱さだった。

 手をついた地面が、酷く熱を持っていることに気付いた。

 視界は暗い。両腕に力を込めて重たい身体を持ちあげても、やはり視界は暗いままだった。

 眼は閉じていない。ただ周囲が暗いだけだ。

 それが暗黒ではないことは、荒れ果てた地面の様子が微かに見えることで分かる。

 やがて目が慣れてくると、大地と空の境が見えるようになった。

 見上げた空はおぼろげな雲が浮かび、その隙間から青黒くぼんやりとした光を放っている。

 見下ろす大地は荒れ果てたざらつきに満ちていて、錆びた鉄のように赤茶けていた。

 ここは、どこだ?

「ここは、どこだ?」

 見渡したところで、果てしなく続く地獄のような景色しか見えない。

 何があった?

「何があった?」

 何があれば、こんなにも恐ろしい景色が生まれるというのだろう。

 世界が死んでいると、比喩なくそう感じられるような景色だった。

「皆は……?」

 あれ、皆って誰だ?

 これは俺じゃない。俺の言葉じゃない。

 そうだ、俺じゃないはずだ。この夢の俺は俺じゃない。

 そう認識した瞬間、フラッシュバックのようにいくつもの景色が飛びこんでくる。

 砂漠、夜の星、青い地上の星、光、文明の欠片。

 けれどここには何もない。微かに感じられた文明の息吹が、この世界からはまるで感じられない。

 どうなってんだ……?

「どうなっている……?」

 口をついて出た言葉は、俺の意志とは少し違う。

 ならこれは何だ。

 ただの夢か? 本当にそうか?

「おい、どういうことなんだ……」

 そうだ、これは記憶だ。俺ではない誰かの記憶だ。その幻想だ。だからこれは俺の声じゃない。

「……戦いは終わったはずだろ?」

 答える奴なんていやしないのに、こいつは何を言っているんだろう。

 視界が回る。周囲を見渡しているんだろう。

 そうして、俺の感覚がこの記憶の主から完全に外れたことに気付いた。

 空を見ている。

 見渡して、そして一つの文明があった。

 血のように赤い月を背にして立つ――――

 アスト、ラル……?

「アスト、ラル……?」

 その時初めて、世界の臭いを感じた。

 ――ああ、これが死の臭いか。


 方舟は、そうしてまた悪夢を見せる。

 あるいはこれは、とある男の絶望の記憶だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ