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アークライセンス  作者: 植伊 蒼
第3部‐閃光は海を越えて‐
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4章『力の在り処』:4

 そんな風に飛鳥達が暇を潰している頃、情報交換会の会場ではやっとエタニティによる研究結果のプレゼンテーションが終了したところだった。今は終了後にそれぞれの組織の技術者同士が互いの技術を持ち寄って好きに情報を交換するフリータイムだった。

 そもそもアルフレッドが提案してから基地を出るまで、安全管理関係の手続きの面で結構な時間がかかっていた。それにエタニティのプレゼンに関しても結果に関する大まかな部分を説明しただけで、研究施設やその手段に関わる重要なところは企業秘密として伏せられていたのだ。

「これで周りが揃って手放しに信用しちゃう辺りがアーク研究よね」

 丸テーブルに肘をついて、遥は呆れたようにそう言った。その視界に、二つのカップを持ったジョージが映り込んだ。

「それもエタニティだから許される話だと思うがね。MSCもそうだが、東洞もそれなりに技術協力を受けているんだろう?」

 ジョージはそう言いながら遥の対面の椅子を引くと、自分の手元と遥のもとに白いカップをそれぞれ置いた。遥が視線だけで中を覗き込むと、そこには苦そうな黒い液体が入っていた。

「コーヒーは苦手だったか?」

「いえ別に。ただ率先して飲むようなものではないわ。でもありがとう」

 そう言いながらも遥はカップの中身をほんの少しだけ口に含んで、やっぱり苦かったのか一瞬顔をしかめた。

「そりゃ当り前のようにブラックなんて持って来られてもってモンでしょー。はいこれどーぞ」

「あらフレデリカ、あなたいたのね」

 つれないことを言いながらも、遥は差し出されたシュガースティックの口を切ってコーヒーの中に流しこむ。だがそこで、砂糖をかき混ぜるためのスプーンを持っていないことに気付いた。

 ふと前に視線を戻すと、持っていたレモンティーの入ったカップをテーブルに置いて、ピンクと水色の安っぽいプラスチック製スプーンを顔の横で軽く振っているフレデリカの姿があった。

「そういうこと言っちゃうお子様は底に溜まった砂糖に顔をしかめるべきよねー」

「くっ……、ああもう、悪かったわよ。ごめんなさい。だからそれをちょうだい」

「はいはいどうぞー」

 指先だけで器用に放り投げられた小さなスプーンをキャッチして、遥は手元のカップに突っ込んだ。悔しそうな顔で底にたまった砂糖をかき混ぜる遥と、それを横目にケタケタと笑うフレデリカを交互に見て、ジョージは一言こう言った。

「これのどっちがお子様なのかという話なんだがな…………」

「そういうこと言っちゃう嫌な大人にはスティック5本プレゼントー」

「わっ、こら! やめたまえ、ってあああああああ!!!!」

 なぜ持っていたのか全く謎なシュガースティック5本の口を同時に素早く切ったフレデリカを前に、ジョージのブラックコーヒーは抵抗むなしくだだ甘へと味を変えてしまう。

 軽く涙目になったジョージと勝利宣言よろしくドヤ顔を浮かべるフレデリカを眺めて、遥は二人に聞こえないようにボソッと呟いた。

「この中なら私が一番大人だと断言でき――」

「…………」

「――なんでもないわよ? というか味覚テロはもうやめなさいな!」

 無言で白衣のポケット取り出されたタバスコを目にしては、流石の遥も恐怖を感じざるを得ない。引きつった顔でカップを身体の後ろに隠す遥に、フレデリカはドSチックな視線を向けつつ、ジョージと遥の間の椅子に座った。

 体力をごっそり奪われた感覚にめまいを覚えながらも、遥はなんとか口を開く。

「フレデリカはアルケインフォースの方に行かなくていいの? あちらはあちらで今回のエタニティの話を踏まえて開発会議の方針決めを行っているんじゃなかったの?」

「んー、まぁそうなんだけどさー。あれ意味あると思う? ウチの開発は結局やることが変わらないからほとんど意味ないわよ。エタニティが今回あれだけ重要そうな内容の発表に踏み切ったのは、自分達以外にあれをうまく活用できる組織はいないと踏んだからでしょ? アルケインフォースやMSCは方向性が違うからともかくとしても、アンタら舐められてるんじゃない?」

「……でしょうね」

 カップに口を寄せながら、遥はフレデリカから視線を外した。

 この共同研究に参加している日米の組織において、エタニティが専門としているエネルギー分野で競合する可能性があるのは、アークに関して総合的に研究を行う東洞財閥アーク総合研究機関だけだ。そう考えれば多少は警戒してもよさそうなものだが、エタニティの人間にそういった様子はなかった。

「でも実際のところは無限エネルギーのシステムそのものを開発するのがエタニティで、それを取り込んだ商品を作るのが東洞って住み分けはできてるのよ。もちろん企業間の信頼ありきだけど、システム開発後の短期間の技術独占を条件に、エタニティの研究には東洞からも資金援助が行われているの。つまりはそういうこと」

「なんだそういう裏事情あったのねー。でもでも、アンタら自分で結論に辿り着くってそういうプライド無いの? それとも利益が全てとか言っちゃう人? それって研究者としてどうなのよ」

「……意味もなく煽らないでくれるかしら?」

「ごめんごめん」

 睨みつけられたフレデリカは、両手を上げてからかうようにウインクをした。呆れたように溜息をついて、しかし遥は律義に質問に答える。

「私たちの本分はロストテクノロジーを活用して世界の技術、そして生活の水準を向上させることにあるのだから、原理の解明自体にこだわりは無いのよ」

「結果主義って奴? それも一理あるかなぁ。テレポーターなんて気の触れたものを実用しちゃうだけあって、シビアな考え方してるわね。あれ原理分かってないのでしょう?」

「……空間的性質が全く同じ二つの空間を用意して、それぞれを空間αと空間α´としα側に観測者を配置する。これらは観測上の空間的性質が同じであるから、観測者にはαとα´を区別をすることはできない。その二つの空間が共に一切の外的干渉を断つと、それぞれの中で何が起こっていても外からは観測できなくなる。その上で観測者を点aから点bへと動かすのだけど、このとき観測者は移動先がb´に差し替わっていても気づかない。そしてこの状態では外部からは中身が移動していても認識できないから、観測者が点aから点b´へと移動しても理論上何も問題ないというわけ」

「何それ思考実験?」

「テレポーターの基礎理論」

 水が流れるようにすらすらと解説してのけた遥に、フレデリカも感心したように何度か頷いた。要は『世界は観測することで成り立つ』という理論を突き詰めたものだが、やはり科学というよりはファンタジーの領域に近いだろう。

 そこまで聞いて、フレデリカはふと首をかしげた。

「……あれ? アークのテレポーターは量子テレポーターとか言ってなかった? 既存の理論の派生だと思ってたけど」

 不思議そうに尋ねるフレデリカの顔を見て、遥は心底呆れたように溜息をついた。

「そんなのデコイに決まっているじゃない。商品化させればどれだけの利益が出ると思っているの? 技術も理論も独占するに決まっているわ。全ての領域で情報をやり取りしているわけでもないのだし」

「東洞は相変わらず万能ねー。でもでもさ、それ私に言っちゃって良いワケ? これでも頭回る方よ?」

「それ以前に私の説明が真実だという根拠があるかしら? というか、あなたどうせ興味ないでしょう」

「あらら、バレてーら」

 頭を掻きながら恥ずかしそうにしたフレデリカは、ぴょこんと身を乗り出すようにして話を戻した。

「つかつか、そのテレポーターの話。基礎理論はいいんだけどさ、それって装置の各パーツの作用とかよくわかってないんでしょ? アンタらそれよく実用化できるわね」

「そもそも巷で流行ったような、人体を分解データ化して移動先で再構築するような手法じゃないわ。あくまでも観測者という存在がそれを維持したまま移動するのだし、方式上失敗しても移動できないだけで異次元に放り出されるわけでもないのだから安全性にも問題はないのよ」

「はー、なるほどねぇ。言いたいことは分かるんだけどさ、その基礎理論って机上の空論じゃない? 全く同じ性質の空間を用意するのも、外的干渉の一切を断つのもどちらもあらかじめ仮定しておくような項目でしょ? 実際には無理よ。アトエネルギー学的観点では、限りなく0に近いエネルギーの変化も、時間の流れを無限大に引きのばせばそれを認識できる存在が必ずいるという結論が出ているわけだし」

「だからそれを押し通すのがアーク技術の異常なところなんでしょ。温度計数の実測値が0な金属とかはあなた達アルケインフォースも使っているじゃない。あれだって理想物質の類よ?」

「常温超伝導現象のアレ? 確かにハイブリッドアサルトライフルとかには流用しているけどさー、あれだってまだ元素の性質の全容すら分かってないのよ。とりあえず使えるから使っとけっていうのは科学者としては邪道だと思うのよねー」

 言うだけ言って、フレデリカはぐでーんとテーブルの上に突っ伏した。遥はそちらには目も向けないで、甘味の加えられたコーヒーのカップに口を近づけて、呆れたように呟く。

「そもそもあなた科学者じゃなくて兵器開発者じゃない」

「まーそーですけどー。しっくりこないのよねー」

 諭されてもやはり納得できないのか、フレデリカは額をテーブルの上に擦りつけて子供のようにぐずってしまう。だがやはり遥はそちらには一瞥もくれようとしなかった。

 代わりに、対面でカップを持ったまま茫然としているジョージに目を向けた。

「難しい話はお嫌い?」

「ああ、いや、そういうわけではないんだが、こうスラスラと話されると流石に理解が追いつないな。……そもそもボクはエタニティの説明もうまく理解できなかったからなぁ」

「『アーク波』のこと? あれは知っておいた方がいいと思うのだけれど」

「概要は理解したが、媒介するもののない純粋なエネルギーだったか? あの辺りが良く分からなかったよ。というかまさか、ボクらの知らないエネルギーが、この世界に初めからあっただなんてね」

 ジョージはお手上げだとばかりに両手をヒラリと広げて、自嘲気味な笑みを口元に浮かべる。当然ジョージもエタニティの説明は聞いていたわけだが、遥やフレデリカと違って一度で全てを理解できたわけではない。

 というかそもそもアーク研究に直接携わっているような、言ってしまえば多少頭のおかしい人間たちをターゲットにした説明だったので、こと感性に関しては一般人相当のジョージにとってはかなり難しい話だったのだ。

「とはいえ内容としてはアークの根幹に関わる部分だし、把握しておくにこしたことはないわよ?」

「ボクはともかくとして君たちはあれで理解できたのかい? 正直途中から何の話をしているのか分からなくなってしまったんだが」

「私は特に問題なかったわ。フレデリカもそうでしょう?」

「余裕よー。大事なことだからもう一度言うけどこれでも頭は回る方ですしー」

 不満げな表情を残したままだったが、フレデリカもようやく顔を上げてそう言った。普段から子供っぽい態度の彼女だが、これでかなり優秀な方なのだ。でなければ20歳そこそこでアルケインフォース社内において、一部門である叢雲ユニット開発を主導はできない。

「……教えてもらえるかな? さすがに恰好がつかない気がしてきたよ」

「言うと思った」

 くすっと笑うと、遥はポケットからケータイを取り出して何度か操作し、それをテーブルの真ん中に置いた。拡大された投射ディスプレイに表示されたのは、エタニティが説明に使っていたグラフだった。

「これは?」

「エタニティのアトエネルギー観測技術によって観測された、外部との干渉を遮断した空間の総エネルギー量の推移よ。やっぱりこうして見るとエネルギーの波ははっきり見えるものね」

「確かにこれは…………。本来ならこのエネルギー総量はフラットでなければならないのだろう?」

「ええそうよ。光、熱、放射線の類や音なんかの力学的なものの一切を遮断しているわけだからね。どういう方法かは知らないけれど、絶対零度で粒子運動も停止させていたみたいだし。計測誤差という見方もできるけれど、電子一つが存在しているかどうかを判断できるレベルの精度を持つアトエネルギー観測でそれはないわけだから。漏れたエネルギーとしたらこれほど綺麗な波形を描き続けることもないわよね」

 エネルギー観測技術というのは、特定空間内に存在する物質等を含めたあらゆるエネルギーの総量を観測する技術のことだ。現在のこの技術の最高峰は、電子一つが持つエネルギーより小さな誤差しか生まない程の精度を持つアトエネルギー観測というものだが、これはエタニティの独自技術である。

 遥はグラフの一部を拡大しつつ、話を続けた。

「そしてこの波形はもっと小さな波が大きなうねりを形作るというフラクタル的性質を持っていたのよ、ほら」

「ほうほう、これは……」

 遥が拡大して見せたのは波形の山の頂点の部分だった。それ普通なら横一直線に見えるほどに拡大されているにもかかわらず、やはり見えるのは元と同じような波形だった。

「そしてもう一度、これ。……そこからさらにっと」

 さらに山の頂上を拡大。

 だがやはりフラットになるはずのラインは波形を描いている。もうこの段階でエネルギー量の変化は原子一つの有無を判定するようなレベルになっていた。

「なるほど、こうして波をどれだけ拡大しても波が見えてしまうわけか」

「そういうこと。エタニティの言う通りならば、これは電子一つよりも小さな単位でなお波、つまりはエネルギー量の変化としてしか読み取れなかったみたいだわ。つまりはそのエネルギーを媒介する粒子が見えない、あるいは存在しない可能性さえあるということなの」

「粒子が存在しない……。だから純粋なエネルギーということなのか。そしてどれだけ拡大しても波としての性質しか示さないから『アーク』波と」

 確かめるように呟くジョージの言葉に、遥は小さく頷いた。しかし彼女が話を続けようとしたところで、フレデリカが割り込むようにこう言ってきた。

「でもでもさ、媒介するものが無いって場を持たないエネルギーとも言えちゃうけどさ、それってあり得るのかな?」

「どうでしょうね。ただエネルギーの移動はあるわけだし、場はあると考えるべきかもしれないわ。素粒子よりもっと小さな粒子が媒介してる可能性もあれば、空間そのものに満たされたエネルギーかもしれない。こればっかりは技術の発展を待つしかないわね」

「うーん、こういうのなんだかなー」

 釈然としないといった様子でテーブルに肘をついたフレデリカ。納得できないことがあると脱力するというのが彼女の癖なのかもしれない。

 その横で、顎に手を当てたジョージが何やらを思案した様子でこう尋ねた。

「確かアーク波は通常では、例えば黒い紙に光を当てれば熱が生まれるような他のエネルギーへの変換が一切ないんだったな。他のエネルギーへの変換がおこなわれる条件というのは何だった?」

「そうねぇ……。媒介する粒子があるのか無いのか分からない以上、アーク波は空間そのものが保持するエネルギーだと考えればいいわ。そして単位空間ごとに保持できるアーク波のエネルギー量は決まっていて、それがアーク波の安定領域なの。アーク波が高くなって単位空間辺りのエネルギー量が増大すると、その領域を超過した分のエネルギーが別のエネルギーに変換される。逆にアーク波が低くなってエネルギー量が減少すると、領域を下回った分他のエネルギーがアーク波に変換されるというわけよ」

「ふむふむ、そしてそのアーク波が変換される際に、任意のエネルギーに変換をコントロールすることができる装置がアークコンバーターというわけか」

「ええ、そうよ。ただアーク自体の性質を考えれば、この変換自体をある程度制御する術があるのは確実だわ」

 遥は頷くと、テーブルに置いたケータイを手に取った。もうグラフを使って説明するのは十分で、次はアークの内部機関の話になるだろう。遥はケータイを操作すると、アークのジェネレーターやコンバーターの写真を投射ディスプレイに表示して再びテーブルの上に置いた。

 そのタイミングで、フレデリカがこう言った。

「アーク波の動きを生むのはアークじゃなくて生物の特性で、アークジェネレーターによってそれを増幅してるんだったわよね。だからジェネレーターとコックピットは一体化してるんでしょ?」

「そうね。ただ正確には、アークジェネレーターは特定周波数のアーク波の動きを増幅し、かつそれを引き寄せる方向の一方通行にする性質を持っているの。ポンプみたいなものと考えたほうがいいわね」

「だったっけ。でもそれだとジェネレーターというより素直にアークポンプでも…………ダサいのはダメね」

 自分で言って顔をしかめたフレデリカの様子が可笑しかったのか、遥はくすくすと肩を震わせた。

「そもそもジェネレータという名前が付いたのはアーク波が発見される前だから仕方ないわよ。どちらかというとコンバーターの方がジェネレーターと呼べるかもしれないわね」

「ふぅん。……そしてジェネレータごとに増幅できるアーク波の周波数帯域が決まっていて、また生物はそれぞれ固有のアーク波の周波数を持っている。これが合致した人間がアークのパイロットになれるというわけね」

「ええ。ただその周波数自体は精神状態などでも少し変化することもあるらしいし、ジェネレーターごとに帯域の中で最も効率が良くなる周波数というのも決まっているみたい。だから精神最適化システムなんかでそれを調整するんでしょう」

「適合レベルとかもそれに関係するのかなぁ。出力とかは別の話だと思うけど」

 レモンティーを口に含んで、フレデリカは視線を宙に漂わせる。遥は持っていたカップを机に置いて、こう続けた。

「といっても、そもそもジェネレーターとコンバーターはワンセットになっていることが多いようだけれど。出力はこれらの総合値でしょう?」

「そうね。……やっぱり一部エネルギー武器にコンバーターが内蔵されているのは、アーク波のままの方が伝達効率がいいからってところかしら。他は基本電力だし。確かアークのフレーム材はアーク波を遮断できる、というかアーク波に干渉できる物質だったわよね? アークのフレーム材はパイプのようになっていたし、そこに密度の高いアーク波が蓄えられていると考えると、アークは機体全体がバッテリーみたいなもんなのかな」

「そういう表現もできるわね。アークのフレーム材が極端に強度が高いのも、受けたダメージをアーク波に変換する性質なんかがあるからかもしれないわね。この辺りは東洞で独自に調べてみようかしら……」

 フレデリカと同じように顔を俯けて、何かを思案し始める遥。彼女も研究者的資質があるからか、興味深い題材を見つけるとどう調べるかということを無意識に考えてしまうのかもしれない。

 皆一様に黙り込んでしまった中で、ジョージが遥のケータイが映し出す画像を指さした。そこに映っているのは、アークコンバーターとアークジェネレーター、そしてもう一つの装置。

「エネルギーの変換というのは、物質も含まれているんだったか。練金装置アルケミレイターはアーク波を任意の物質に変換する装置と考えればいいのかな?」

「ええ、そうよ。ただエネルギーだけで物質を作り出そうとするとあまりにも莫大なエネルギーが必要になるから、大気や地面から物質を吸収して一旦アーク波に変換、それを物質に再構成するっていうプロセスは踏んでいるはずよ。まさしく練金ね」

「……さすがアーク、何でもありか」

 ジョージは肩をすくめると、呆れたように笑ってしまう。どちらかというと、これほど突拍子もないことなのに周りが普通に受け入れていることに呆れているようにも見えた。

 そんなジョージを視界にも入れずに、フレデリカはレモンティーを飲み干してこう言う。

「これまでの研究も大概だったけど、このアーク波って本格的に物理学がひっくり返りそうよねー」

「私としてはエネルギー保存則が守られていただけマシだと思うのだけどね。……ただ、まだ全容は把握できていない。エタニティも何かを隠してはいるんでしょう」

 遥もコーヒーを最後まで飲みきると、窓の外に視線を向けながらそう答えた。

 このアーク波によって仕組みが解明されるまで、アークは無限エネルギーを生み出して動作していると思われていたのだ。これまで観測できなかっただけで過去からずっと存在していたということの方がまだ信憑性があるだろう。

 ただこれは非常に大きな発見であり、今後の世界に決して小さくない影響を与えるだろうことは想像に難くない。

 世界は一体どこへ向かおうとしているのか、アークはどこへ導こうとしているのか。

 遥の視線は、まるで窓の外の青い空に浮かぶ雲にその答えを求めているかのようだった。


 何かを憂うような大人びた表情を浮かべる遥を見ながら、テーブルに両肘をついたフレデリカがニヤリと笑ってこう言った。

「アンタさ、あの助手君が居るときの方が子供っぽいわよねー」

「……信頼できるとね、任せてしまいたくなるのよ」

「なにそれ年寄り臭い、女子高生の発言とは思えないわ。……というか、そういう子に見えないけど?」

「あれで頼れるのよ、あの子は」

「若いっていいわねー」

 茶化すフレデリカには答えずに、遥はただ窓の外を見つめていた。

すみません。次はエピローグなのですが、もう3日待ってください。

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