3章『バースト・ドライブ』:4
そこから先の戦いは、もはや別の次元のものだった。
両者が駆けだす。
その加速を生むためだけに、大地が数メートルもえぐり取られる。
初速は既に音速を超えていた。
黒の影と緑の閃光が、両者の中間点で激突する。
ゴアッッッ――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!
その余波だけで、周囲の地形が丸ごと吹っ飛んだ。ただぶつかり合っただけで、半径数十メートルにわたる巨大なクレーターが発生する。
それほどの莫大なエネルギーの中心点にいながら、ぶつかり合うアストラルとフラッシュには傷一つない。それどころか、ぶつかり合ったままさらに前へ前へと力を押しつけ合う。
アストラルの腕には巨大化したフォトンブレードが、フラッシュの腕には緑の重光子が集まってできた重光子刃があった。
フラッシュの能力は本質的には光量子制御能力なのだろう。その能力の一端がフラッシュダイブという瞬間移動として表れており、バースト・ドライブによってその領域がある程度解放されたということ。フラッシュの腕に纏う重光子刃はそれによって構築されたものだ。
押しつけ合った刃同士がずれた瞬間、2機は弾かれたようにすれ違う。
一瞬にして100m近い距離を離したところで、アストラルは即座にフォトンライフルに持ちかえ、振り向きざまに発射する。
放たれた光弾はそれまでのフォトンライフルとは一線を画す威力だった。増加した発射反動をリミッター解除した腕部アクチュエーターで抑え込み、背中を向けるフラッシュを正確に狙い撃つ。
ブロウアップカノンにも匹敵する弾速で射出された光弾は一瞬にしてフラッシュの眼前まで迫るが、直後にフラッシュが緑の粒子に霧散する。
その瞬間にはすでにアストラルの目前に曖昧な輪郭のフラッシュが居た。遠方のビルの外壁が大きく消し飛ぶのには目も向けず、機体を構築し直し重光子の刃を突き出す。
機体をひねり紙一重で刺突を回避したアストラルは、そのままの勢いでフラッシュの頭部を踵で蹴り飛ばそうとする。フラッシュはさらに霧散、そしてアストラルの背後に突如として表れる。
振るわれる重光子の刃を、蹴りと同時に持ちかえたフォトンブレードで受け止めると、緑の閃光が走りアストラルの周囲にフラッシュが現れる。
前後左右どこからともなく現れる度に振るわれる重光子の刃を、アストラルはたった二つのフォトンブレードで全て捌いていく。前触れなく襲いかかる秒間3回を超す斬撃の嵐さえものともしない。
そして背後に現れたフラッシュが緑の重光子刃を突き出した瞬間、アストラルは両足で真上に飛び上がった。攻撃を空振ったフラッシュの頭上から、銃口を押しつけるようにして右のフォトンライフルを撃ち放った。
だがフラッシュも即座にフラッシュダイブを発動、一気に数十メートルの距離を移動する。フラッシュがもといた場所の地面が吹き飛ぶ煙幕を、ブロウアップカノンの光弾が突き破った。
飛来する光弾を手前5mで視認したアストラルは、これを左のフォトンブレードで切り裂く。爆裂した重光子弾が重い衝撃をまき散らし、土煙を一気に薙ぎ払った。
その空いた穴を通るように、さらにブロウアップカノンが撃ち込まれる。アストラルはビームブースターを真下に噴射して回避、一息にビル群を見下ろす高さまで飛び上がる。上昇しながら左手もフォトンライフルに持ちかえた。
アストラルはバースト・ドライブ発動によって、ネックだった出力の不安定さが解消され空中を飛行することができるようになっていたのだ。
遠方でブロウアップカノンを構えるフラッシュに向けて、アストラルは両手のフォトンライフルを交互に連続で発射する。フラッシュは両手に重光子刃を発生させながら迎え撃つ。
フラッシュは迫り来る青の光弾の嵐を重光子刃で弾きながら、背中のブロウアップカノンで空中のアストラルを正確に狙い打つ。アストラルは空を自在に舞いながら白の光弾を回避しつつ、回避の合間に刺すような射撃を断続的に繰り返す。
怒涛の攻撃を続けながらも、両者ともに一発たりともかすりもしない。肉眼では捉えられない程の凄まじい物量で弾幕が展開されるも、あるいは刃に弾かれ、あるいは空を裂くばかり。
その状況で、アストラルは突如としてフラッシュに向け突撃した。ビームブースターによる加速もバースト・ドライブの恩恵によって跳ねあがっている。
アストラルが突撃した2秒間にも、実に5発もの光弾が発射されていた。それらすべてを紙一重で回避して、アストラルはフラッシュに肉薄する。
その目の前で着地したアストラルは、アスファルトを巨大なひびが入るほどの威力で踏み砕きながら、突撃中に持ちかえていたフォトンブレードで掬いあげるように切り裂いた。
だがフラッシュを縦に真っ二つに切り裂く軌道を描いていた青い斬撃は、その後方の地面をバターのように切り裂くにとどまった。斬撃の余波だけで地面に数十メートルもの傷をつけるという異様な光景が広がる。
フラッシュが現れたのはアストラルの背後だった。
頭部を狙ってふるわれる緑の重光子刃を、アストラルは振り返りもせずにしゃがんで回避する。追撃の足払いを上半身をかがめたままジャンプしてかわすと、空中でくるりと一回転。もう一方の重光子刃を振るおうとするフラッシュの腹部をフォトンブレードで突き刺そうとする。
しかしやはり腕を繰り出した時にはそこにフラッシュはいない。アストラルはビームブースターを噴射し、ワンパターンにも後方に現れるフラッシュから大きく距離をとりつつ高高度へと上昇した。
振り返り上空からフォトンライフルをばら撒いてみるも、フラッシュは持ち前の機動力でもって地上をジグザグに走りまわり、アストラルの攻撃の隙間をかいくぐっていく。
『どーした! まるで当たらねぇぞ!!』
地上を踊るように駆け抜けて、フラッシュはアストラルの下方へと潜り込みすぐさまブロウアップカノンを発射する。
空中でひらりと身をひるがえしたアストラルは両手のフォトンライフルを吸着アームに収めると、両腰のプラズマバズーカを掴んで真下を向いた。
「ちょろとちょろとよく動く! そんなに自信があるなら、こいつを避けてみろよ!!」
プラズマバズーカの砲口が火を噴いた。
ただし、一度や二度ではない。
実に5秒にも満たない時間に、三桁を超える数の雷弾が一斉に放たれる。
バースト・ドライブによって一時的に強化された砲身耐久をも焼き切りかねないほどの勢いで発射される雷弾の嵐。それぞれがビル一つを消し炭に変える威力を秘めた青の閃光が、驚異的な弾速で降り注いだ。
プラズマバズーカから放射状に放たれた膨大な数の雷弾は、アストラルの真下から半径500m程の大地をまとめて呑み込んだ。フラッシュへの着弾など関係はない。どこへ逃げようとももはやプラズマの海だ。
瓦礫さえ吹き飛ばす圧倒的な破壊が、人工島の一角を完全に消し去ってしまう。熱された大気は灼熱の地獄と化し、文明の模造はほんの数秒で原初の惑星の姿へと塗り替えられる。
そこに残ったのはアストラルの居る高度付近まで立ち上る煙と、焼けただれたアスファルトとコンクリートの残骸―――
そして緑の光。
認識と同時に引き金を引いた。
ドッッッッッ―――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!
さらに追撃のプラズマバズーカ。今度は的を絞って集中的に叩きこむ。
光のレールのようになったそれは立ち上る分厚い土煙をさえ焼き払い、淡く漏れる緑の光に吸い込まれるように飛び込んだ。
命中、飛鳥は確信していた。
だが緑の光が三たび弾ける。そこから100m近く離れた空中で再度の閃光が走り、ややぼんやりとした輪郭のフラッシュが現れる。
即座にそちらに砲口を向けたアストラルは迷わず発射。
しかし命中と同時、フラッシュの姿が光の中に消える。直後に現れたのは左のプラズマバズーカの火線上。そちらが直撃した途端、今度は右の火線上へと瞬間移動する。それと共に、徐々に機体の居る位置を上へ上へと上げていく。
「アストラルのプラズマバズーカの砲弾を踏み台にしてるのか!? 接触したエネルギー体を起点に別の場所へフラッシュダイブを――――」
バースト・ドライブによる能力の強化。
その一つが、重光子弾やプラズマ弾といったエネルギー体に触れたとき、それを踏み台としてフラッシュダイブを発動させることができるというもの。
これまでの攻撃の回避もこれで行なっていたのか。
飛鳥は一瞬でそこまで推測を立てる。だがもう遅い。
アストラルの目と鼻の先に現れたフラッシュは、首を刈る角度で重光子刃を振り抜いた。
しかしそれもアストラルは機体を真後ろにのけぞらせてこれをギリギリのところで回避する。頭部装甲の鼻先数ミリを重光子刃が通過するが、当っていないということに変わりはない。
目の前を緑の重光子刃が通過するのを確認して、アストラルはビームブースターを噴射した。与える推力は右は前、左は後ろ、つまりは回転。
攻撃を回避した勢いで逆さまになった状態のまま、独楽のように高速で回転する。広げた脚を思いきり振りまわし、重光子刃を振り抜いて無防備となったフラッシュの胴体へと叩きこんだ。
足から伝わる確かな手応え。
緑の粒子に包まれたフラッシュが下方へと猛烈な速度で吹き飛ぶ。プラズマバズーカによって焼き払われた場所から少し離れたところへとまっすぐ突き進んでいった。
アストラルの攻撃はエネルギー体が主だが、アストラル自身は物体である。フラッシュの能力発動の条件、あるいはパイロットであるフレッドの認識の問題があるのだろうか。
「アストラル自身はエネルギー体じゃないからな、お前はそこを足場にすることはできないんだろう。格闘戦は通るってことなんだろ!」
ならば地面へ叩きつけるダメージも通るかと考えた飛鳥は、空中を超高速で落下していくフラッシュを注視する。だがフラッシュは空中で強引に足を曲げると、地面に着弾する直前に足裏を大地に擦りつけた。
直後に閃光。フラッシュダイブによって移動した先は、そこからほんの数メートル上方だった。
慣性を失い、重力だけに引かれたフラッシュはゆっくりと地面に足を付けた。
『フラッシュダイブは発動前の自身の運動量を消失させる。こういう使い方もできるのさ』
落下時に地面に足を着け、短距離のフラッシュダイブを発動させる。そうすれば蹴り飛ばされた落下の威力を消し去ることができるということだろう。
アストラルは唐突にフォトンライフルを両手に掴むと、フラッシュに向けて2挺を並べて構える。銃口に光が集い、一瞬の溜めの後に巨大な光弾が強烈な反動と共に発射される。
プラズマバズーカ同様武器そのもの耐久が強化されているのか、通常なら自壊してしまうほどの出力だった。
だがやはり光弾がフラッシュに命中した瞬間、緑の粒子に霧散する。地面が大きく吹き飛ばされる横で、粒子がフラッシュの形に収束する。
『そいつは当たらねーっての』
この様子では恐らくはビームブースターによる攻撃も同様だろう。となればバースト・ドライブを発動しているフラッシュにアストラルの遠距離攻撃はその一切が通らない。
近距離戦でも似たようなものだが、格闘だけは通ることが分かっていた。
ドンッッッ!! と空気を叩いて、アストラルがフラッシュの元へと飛び込んだ。その両手に武器は無い。フラッシュにダメージを与えるためには、武器を使うことができないからだ。
フラッシュの頭上から、音速を大きく上回る速度で襲い掛かった。ビルの一つぐらいなら軽く撃ち崩せる程の威力を秘めた一撃が、フラッシュの脳天へと繰り出される。
だがやはり直撃の瞬間、フラッシュはアストラルの後方へと瞬間移動した。当たる前にフラッシュダイブを発動すれば、どのみち攻撃を受けることはないからだ。
フラッシュは瞬時に両手に重光子刃を発生させると、地面へめり込むほど勢いよく突撃したアストラルの背中に迷いなく斬りかかる。アストラルが回避できなければ、直撃は確実だ。
しかしアストラルはこれに反応した。その場でくるりと身をひねり、突き出された右の重光子刃を回避する。直後にくりだされた左の重光子刃による斬撃を右腕の装甲で強引に受け止め、フラッシュの腹部を思いきり蹴とばした。
自身が攻撃中だったからか、フラッシュダイブの使用は間に合わない。尋常ではない威力の蹴りは、さしたる重量差もないはずのフラッシュを紙屑のごとく吹き飛ばす。
重力による落下など全くないとでも言うように、恐ろしいほどまっすぐに飛んで行ったフラッシュは後方のビルに背中をしたたかにぶつけた。砲弾ほどの激突はそれだけで機体をビルの外壁へとめり込ませる。
ビルに打ちつけられたままとどまったフラッシュに向かって、アストラルはビームブースターを噴射して高速で突撃する。一切速度を落とさぬまま懐へと潜り込むと、機体の全重量を乗せた拳を打ちこんだ。
ビルにめり込んでいたフラッシュを外壁ごと殴り飛ばす。半壊していたビルを凄まじい速度で突き破って、フラッシュが弾丸のようにさらなるビルへと突撃した。ガラガラとけたたましい音を立てて、ビルが下から崩れていく。
相当なダメージを与えただろうが、恐らく撃墜には至っていないだろう。アストラルほどではないにしろ、フラッシュも機体性能自体はある程度底上げされていることは飛鳥も感じていた。それが防御面に表れている可能性も高いだろう。
案の定、前方で土煙を薙ぎ払ってフラッシュが立ちあがった。
『やるじゃねぇか。まさかここまでやるとはな……』
「この出力のアストラルを相手にしてる段階でお前も似たようなもんだ。だがこれじゃあ埒が明かないよな」
『ああ。だから一気にケリを着けよう。時間もないことだしなぁ!』
言うや否や、フラッシュは一直線に駆け抜けてくる。何のひねりもない突撃だが、それ故に圧倒的な加速力。一瞬にして至近距離まで接近したフラッシュは、武器を持たないアストラルへ向け両手の重光子ブレードを全力で振り抜いた。
クロスするように振り上げられた二つの重光子刃を、アストラルは身をかがませて回避する。両腕を広げたフラッシュへ向け、機体を跳ね上げながら肘を突き出す。
直撃の寸前、フラッシュはフラッシュダイブを発動させてアストラルの後方へと回り込む。そして間髪いれずに重光子刃を突き出した。
アストラルは身をひねって回避し、機体ごとぶつけるように拳や足を叩きこむ。フラッシュはその背後を取るように瞬間移動をすると、凄まじい早さで重光子刃を振り抜く。
怒涛の連撃が両者の間で交わされた。
アストラルの拳もフラッシュの重光子刃も、どちらも細かく相手を捉える。だがいずれも大きなダメージを与えることなく、攻撃の余波だけで周囲の地形を徐々に崩壊させていく。
「チィッ!!」
だがやはりどこかに限界は来る。
状況によっては攻撃を重光子刃で受け止められるフラッシュに対し、常にダメージを最小限に抑えつつ反撃をしなければならないアストラルでは、強いられる選択の難易度が大きく違う。
飛鳥は全方位から放たれる斬撃の嵐を処理しきれなくなり、ビームブースターを噴射して後方へ大きく加速した。胸元をフラッシュの刃がかすめるが、それ以上の追撃は無い。
出力上昇によってビームブースターの推力も大幅に上昇している。1秒にも満たない時間で1000m近くの距離を離したアストラルは、そこで体勢を立て直す。
むき出しとなっていた黒い装甲には数えきれないほどの浅い傷が付いていて、フレームにまで及ぶほどの深い傷もいくつかある。
アストラルが両足を地面についた瞬間、フラッシュも駆けだした。そのままビルの壁に機体を沿わせると、坂道を登るような気軽さで垂直の壁を駆けのぼった。
「壁を垂直に!?」
『いくぜ、フラッシュダイブ!!』
フラッシュが緑の閃光に包まれ、現れた先は別のビルの壁。そこを踏みつけ、さらにフラッシュダイブを発動する。ビルとビルの合間を亜光速で移動しながら、忍者のようにでたらめな軌道でアストラルの元へと迫り来る。
(これじゃ、どのタイミングで仕掛けてくるか分からない!)
飛鳥の回避は攻撃をしてくるタイミングを予測しているからこそ成立するものでもある。これほどでたらめな行動をされては、目の前に現れたとしても対処がワンテンポ遅れてしまう。
明確な対策は無い。せめて防御の手段を増やそうとフォトンブレードを手に持った瞬間、フラッシュが一際強い光を放った。
現れたのはアストラルの斜め上、機体重量を乗せて両の重光子刃を思いきり振りおろす。
アストラルはとっさにこれを右のフォトンブレードで受け止めた。
絶大な衝撃波がまき散らされ、アストラルの足元のアスファルトが大きくめくれ上がる。振り下ろされる刃の威力は尋常ではなく、リミッターを解除したはずのアストラルの腕が押し負けるほどだった。
「ぐぅらああああああああああああああああ!!!!」
『オォォォォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』
刃の間から断続的に放たれる光の波動が、周囲の全てを薙ぎ払おうとする。
刃を押しつけてくるフラッシュの力は半端ではなく、飛鳥は頭の奥にわだかまる違和感に意識を向ける余裕がない。
(直線、的な……攻撃! 狙いは、なんだ!?)
全力で刃を押しとどめようとするが、震える腕が一瞬自分側に傾いた瞬間それを受け止めきるのは無理だと感じた。
「くっ、ハァアッ!!!」
この状況から逃れようと、左のフォトンブレードをフラッシュの胴体向けて全力で突き出す。だがやはりフォトンブレードもフラッシュダイブの発動条件を満たすのだろう、刃を振りおろしていたはずのフラッシュが緑の閃光に包まれる。
「っ、後ろか!」
腕を突き出したまま、直感だけで首を後ろに向ける。
しかし、そこにフラッシュはいない。
『違うな、ここだよ!!』
フラッシュが居たのは、アストラルの足元。直後にフラッシュがアストラルを凄まじい威力で蹴りあげた。
強烈なダメージと共に上空へ打ちあげられたアストラルへ向け、フラッシュはブロウアップカノンの砲口を向ける。ダメージで動けないであろうアストラルには、回避はできない一撃。
危機的な状況に、飛鳥が危険を感じたその時――――
フラッシュの光が消えた。
『クソ、バースト・ドライブのタイムリミットが……っ!!』
緑の粒子が一気に収束し、バースト・ドライブを発動する前のフラッシュの姿に戻る。
それだけではない。
見れば、フラッシュの発光体が放つ光が極端に弱まっていた。フラッシュは砲口をアストラルに向けたまま、追撃の一撃を放とうとはしない。
(バースト・ドライブは、発動後に性能劣化がある……? なら、それはアストラルもか)
「だったらこの瞬間に決める! アストラルチャージッッ!!」
空中で身をひるがえしたアストラルが、その右腕を天高く掲げた。
斜めに広がるビームブースターとプラズマバズーカ、そして漆黒のアストラルの全身が青白い光に包まれる。
バースト・ドライブの発動に匹敵する絶大な力が周囲の大気を押しのける。バーニングに対して使用した時とは比較にならない巨大な青い光が、アストラルを中心に全方位に放たれていた。
アストラルの腹部から、6方向に白い閃光が放出される。光が回転し、渦を巻くように収束し始める。
「こいつで終わりにしてやるぞ、フレッド!!」
『オレだって負けるわけにはいかねーんだよ。頼むフラッシュ、まだやれるだろう!!』
アルフレッドがコックピットの中で叫んだ瞬間、フラッシュの周囲から緑の光の球が発生した。ひとりでに漂う光の球は、フラッシュの両手に集まっていく。
『フォトンドライバー……。そうだ、オレはまだ負けたわけじゃない!』
この土壇場で、アルフレッドはさらなる力を開花させたのだ。
大量の光の球が、フラッシュの両手へと爆発的に集まっていく。一つ一つは弱くとも、集中して巨大化したそれらはまばゆいほどの光を放っていた。
フラッシュは光を纏うその両手を、真正面に突き出した。
アストラルはアストラルカノンだけでなく、プラズマバズーカの砲身をも両手でつかんだ。
これが、最後の一撃――――
『こいつを凌ぎ切れば! フォトンコーニックシールドォォォォオオオオオ!!!!!!』
「まとめてぶち抜けよォ!! 吼えろ! アストラルカノン・トライデント!!!!!!!!」
瞬時に形成された円錐形の巨大な重光子盾に向けて、とてつもない轟音と共に莫大な光が放たれる。
戦略兵器に匹敵する威力を誇る6連装荷電粒子砲、そして強化された耐久の限界を超える程の威力をその一撃に込められたプラズマバズーカが、同時に発射された。
激突する光と光。
先端に直撃し受け流されながらも、盾の表面を高速で削り取っていくアストラルの砲撃。
円錐の盾の後方から無尽蔵の光が集い、削られた場所を埋めようとするフラッシュの盾。
『ハアアアアァァァァァアアアァァァアァアァァァァアァアアッッッッッ!!!!!!!!!!!』
「うおォォォォォオオオォォオオオオオオォオオオオォオオオッッッッッ!!!!!!!!!!!」
叫び、そして二つの光が一際その強さを増す。まき散らされた光の余波だけで、周囲の風景が紙屑のように薙ぎ払われていく。
一瞬は拮抗したその力。
ぶつかり合うその場所で、光の盾がビシリと音を立ててひび割れた。
パリン、と。
儚い音を立てて、光の盾が砕け散る。
全てを焼き尽くす白い閃光が、未だ両手を掲げたままのフラッシュを呑み込んだ。
光も風も音も熱も物体も、そこにある何もかもがその一撃に呑みこまれる。
人工島の端の端まで、アストラルが放つ必殺の一撃が埋め尽くした。
焼け焦げた大地のその上空で、アストラルのバースト・ドライブはタイムリミットを迎えた。
バースト・ドライブ、そしてエマージェンシーモードは解除され、アストラルの装甲を再び白と赤の塗装が覆い隠す。通常状態へと戻ったことにより、発光体の色もまた本来のスカイブルーとなっていた。
バースト・ドライブの反動によって発光体は放つ光を弱々しく変化させ、推力のほとんどを失ったアストラルは飛行する力を失くして地上へと落下していく。
飛鳥の耳には、風の音だけが聞こえていた。
【アーク・フラッシュ撃破
コードF,G 取得を確認
一部システム領域に対し、管理者権限を解放】
地に落ちながら、飛鳥は、アストラルは、その手を真上の太陽へと伸ばす。
「勝ったぜ、フレッド」
拳を握った。
更新ペースを1パート/3日に調整。
つまり悪あがき。




