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アークライセンス  作者: 植伊 蒼
第3部‐閃光は海を越えて‐
59/259

1章『真夏の訪れ』:5

 乾いた風が踊る、赤茶けた荒野の渓谷。

 重光子が形作る青白い光の刃と、鈍い銀色にきらめく刃が火花を散らし激突した。

 光刃はアストラルが持つフォトンブレードの一方。そして銀色の刃は相対する機体が持つクナイ型の武器のそれだった。

『ふっ、せぇぇぇぇいっ!!』 

 青い光刃が激突の勢いそのままに、鋼の刃を天高く弾き飛ばす。機体の手元を離れたクナイ型の武器が宙を舞う中、間髪いれず反対側のフォトンブレードが高速で突き出された。

『くぅっ!?』

 胸の中心へ真っすぐ突き出されたアストラルのフォトンブレードを、対する白い機体がはじかれた方とは逆のクナイで辛うじて受け止める。受け止めた衝撃を利用して、そのまま大きく弧を描くように後方へ飛びすさった。

『よっ、そりゃ!』

 空中に綺麗なアーチを描きつつ、弾き飛ばされていたクナイを空いた手でキャッチ。空中で身をひねるようにして、器用にアストラルの頭部めがけてクナイを投げつけた。

 頭部アイセンサーにクナイの切っ先が突き刺さる直前で、反応したアストラルがフォトンブレードでそれをはじくが、直後にそれが起爆した。

 弾かれたクナイが榴弾のように、いやまさしく手榴弾としての役目を果たすべく大きな爆発を起こしたのだ。

『ぐぅ!! ……が、まだまだ!』

 至近距離での爆破は流石に生半可なダメージではなかったが、そもそもの爆発威力が特筆するほど高いわけではない。直撃からの起爆ならそうもいかないが、一応フォトンブレードで軌道を逸らすことはできているため、クリティカルなダメージとはならなかった。

『今のでとっさに反応してきますか。確定どころだと思ったんですけど』

 その場で踏ん張ってダメージに耐えるアストラルとは対照的に、ひらりと軽やかに着地した白い機体。ちゃっかり腰に手を当てていて、機体越しにパイロットのドヤ顔が透けて見えるようだった。

 全体的に丸みを帯びた細身のフォルムで、肩や足裏など要所に大型のスラスターが付いているためその部分だけ不自然に大きい。機体サイズは8mほどでアストラルと大差はないが、ピンとまっすぐ立っているせいで実サイズよりも大きく見える。

 全体は白地に深い緑のラインで彩られており、胸の中心の丸いコアを含めて装甲各所に黄緑色の発光部分が伺えた。忍者を彷彿とさせるたたずまいと武器に反して、その色合いは明るいものだ。

 それらがあらわすものは、すなわちアーク。

 ただし本来の26機のアークとは異なり、データ上でのみ存在する架空の番外機体。

 その名を『アナザーアーク・タイプリーフ』という。

 アークがアークたりうる最低限の要素をまとめ構築した『アナザーアーク・プロトタイプ』を、兵器としての観点から発展させた一つの形。

 近接戦闘、特に地対地白兵戦闘に特化させたスタイルながら、短時間しか噴射できないが高出力のスラスターを搭載することにより跳ねるような3次元戦闘を可能にしている。

 これを操るのは一葉。

 現状で飛鳥の師匠でもある彼女だが、登録しているアークを持たないにもかかわらずアーク操縦技術が飛鳥や隼斗に比べてもずば抜けて高い。それゆえにパワーバランスを整えるため、タイプリーフの武器はクナイ型手榴弾しか装備されていない。

 つまり、この機体は一葉専用のモデルというわけだ。

『そりゃ先輩から学んでるわけだし、そういう小手先の攻撃に直撃なんてしないですよ』

『これはまたなんというか、喜ぶべきなんでしょうか?』

 二人がそんな軽口を叩いていると、向かい合った二機の足元がほとんど同時に吹っ飛んだ。

 アストラルの足元には巨大な砲弾が、タイプリーフの足元には紫色の閃光が高速で突き刺さったのだ。

 前触れもなく放たれた攻撃だったが、どちらも後方に大きく跳び下がることで難なく回避に成功していた。

 アストラルがふわりと地面に着地したとき、アストラルに向けて迫撃砲を撃ち込んだバーニングのコックピットから、隼斗が通信を送ってきた。

『余裕か、アスカ?』

 バーニングはタイプリーフの後方、崖のようになったところの上からアストラルに左腕のガトリングと右腕のバズーカ砲の砲口を向けてきていた。

 飛鳥はそちらを確認し、ニヤリと口の端を釣り上げた。

『無駄口叩いてても当らない程度には、かな』

『言ってくれる!』

 飛鳥が煽った直後、バーニング遠距離から大量の砲弾をばら撒いて来た。

 しかしそこは高機動が売りのアストラル、遠方からの弾幕など当る理由の方が無い。くるりくるりと踊るように弾丸砲弾を回避していると、アストラルの頭上を再度紫の閃光が駆け抜けた。

 それはアストラルに攻撃を加えていたバーニングの肩口へとてつもない弾速で直撃し、派手な爆音と閃光をまき散らした。

『隼斗も随分余裕じゃない。私のことも忘れないでもらえるかしら?』

『……すいませんね、会長』

 直撃した割にはさして大きなダメージとはなっていなかったらしいバーニングの目が、光を放った元へと向けられた。

 渓谷の対岸で大型の重光子ライフルを片手に持った、金色の機体。

 操縦しているのは遥だった。

 アストラルを基準に考えれば、そこそこの巨体だ。全高は9m弱とこれもアストラルとほぼ差はないが、胸部や脚部などのずんぐりとしたフォルムが機体を大きく見せている。何よりも目立つのは、その背に負った機体の全高よりも巨大な砲であろう。

 濃淡のある金色をベースとした配色に、銀のラインが装甲の縁を飾っている。それだけでは単なる成金カラーだが、その内にあるコアと発光体の深い青の輝きが全体の色合いを落ち着いたものに仕上げている。

 これもまたアナザーアークの一つ、遥専用機である『アナザーアーク・タイプムーン』だ。

 どんなアークのジェネレーターに対してもある程度の出力を発生させられるという遥の特性を考慮した結果、その専用機である機体の出力は瞬間的にはアストラルにも匹敵するほどのとてつもないものとなった。

 アストラルにおいては火力と機動力にまんべんなく割り振られているそのエネルギーだが、このタイプムーンにおいては機動力を捨て火力へ極端に割り振られている。

 それ故に、武装はどれをとっても高威力。

 片手に持った高出力重光子ライフルだってバーニングの肩装甲を大きくえぐってしまうような威力なのだ。

『援護サンキューっす、遥さん!』

『ええ、バシバシ撃ち抜いてやるわ』

 アストラルが後方のタイプムーンに向けて親指を立てると、タイプムーンも同じように得意げに親指を立てて答えた。

 タイプムーンが片手に持った重光子ライフルをまっすぐタイプリーフに向ける。答えるように、タイプリーフが空いた手を腰に回して新たなクナイを取り出した。

 両手にクナイを逆手持ちしたタイプリーフが、伸びをするようにつま先立ちをする。一見余裕を見せているようにも感じられるが、関節のバネを利用して柔軟な加速を生みだすタイプリーフにおいて、この姿勢は即座に駆けだすために最適な姿勢なのだ。

 つまりは、臨戦態勢。

 アストラルもその両手のフォトンブレードを静かに構える。

『それでは仕切り直しといきましょう、アスカくん。準備は良いですか?』

『聞かれなくとも。…………来い!』

 飛鳥が言い終わる刹那、つま先立ちの機体を一瞬沈めたタイプリーフが弾かれるように飛び出した。

 その圧倒的な踏み込みは百メートル近い距離をものともせず、何の比喩表現もなく瞬き一回分の時間でゼロ距離へと突入する。

 アストラルとタイプリーフの間で、光と鋼の旋風が巻き起こった。

 音速をこえる速度で放たれる2つの刃が、両者の間で激しく打ち合わされる。そのガラスを打ちつけ合ったような甲高い音は、刃の激突一回分遅れて周囲に響き渡る。

 音すら置き去りにするほどに高速で切り結んでいく二機だが、それも乱雑な暴れではない。

 タイプリーフが眉間めがけて突き出した右のクナイを、身体ごと回転させたアストラルが左のフォトンブレードで受け流す。回転の勢いそのままに、アストラルが首を掻き切るように振るった右のフォトンブレードを、タイプリーフが左の刃で下から叩き上げた。

 バク転をしつつその場でアストラルの頭部を蹴りあげようとしたタイプリーフだったが、アストラルは即座にビームブースターで斜め上へ離脱する。

 上空で高速の宙返りをしたアストラルは、バク転の途中で逆立ちのようになっているタイプリーフに狙いを付け、即座に両腰のプラズマバズーカを発射した。

『もらった!!』

 強烈な反動が機体を襲うが、威力をある程度セーブした一撃では姿勢が決定的に崩れることは無い。

 放たれた雷弾が正確にタイプリーフの元へ突撃するが、直撃の寸前、タイプリーフは両腕の力だけで真上に飛び上がるという離れ技をやってのけた。

『当りません!』

『そしてこっちももらったよ』

 反動でも姿勢は崩さなかったとはいえ、即座に機体が動くわけではない。ビームブースターのリチャージさえも間に合わないそのタイミングで、バーニングの片脚部から放たれた4発のミサイルがアストラルの目前へと迫っていた。

『っ、まずッ!?』

 対応できない飛鳥の喉が干上がった直後、アストラルの両横から飛び出した紫の6条の閃光が突如屈折、飛来するミサイルを残さず撃ち抜いた。

 タイプムーンが両肩に装備した計6門の曲射重光子砲だ。

 威力はさほど高くないが、発射時点で設定をしておくことで任意の場所で好きな角度に曲がる重光子レーザーを放つことができる武器だ。設定は発射時点で行うため敵を追尾するなどは不可能だが、曲がるレーザーによる戦術の広がりは非常に大きい。

『バックアップは任せて。行って、アスカ君!』

『了解!!』

 弾頭の爆発によって眼前に広がった分厚い煙を突き破って、アストラルがタイプリーフの元へと高速で接近する。

『そうはさせるか! 量子コンピューター起動、FCSブースト。バースト・ショット!!』

 即座に反応したバーニングが進攻を止めようと後方から大量の弾幕を展開するが、アストラルはビームブースターの推進を細かく調整することにより、高速移動をしつつ滑らかなジグザグを描き全てを回避していく。

 亜音速を維持したまま、鉛の豪雨を突き破る。

『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!』

 飛鳥の雄叫びを応えるように全速力で突き進むアストラルは、右のフォトンブレードをタイプリーフの胸元目掛けまっすぐに突撃した。

『つっ、くぅぅぅ!?』

 不安定な姿勢のまま、両手のクナイをクロスさせて辛うじて受け止める。

 機体のパワーだけで言えば、アストラルよりもタイプリーフの方が上だ。だがこれほどのスピード、地面についていたはずのタイプリーフの足が宙を泳いだ。

 爆発にも等しい推力を放ち、アストラルのメインブースターが一層のきらめきを放った。

 途端にタイプリーフに襲い掛かった凄まじい力は、そのまま機体を後方へと押し出してしまう。2機がまとまって高速で低空飛行を始めるが、受け止められたフォトンブレードも、それ以上の現象を起こすことはできない。

 そこでアストラルは、何の前触れもなく右手を後ろに引いた。

『えっ?』

 押される力を失いふわりと宙に漂ったタイプリーフ。対してアストラルは、タイプリーフという余計な重量を手放したことで、さらなる加速をその身に宿す。

『せぇやッッ!!』

 離れた二機の間隔を一瞬にして詰めたアストラルは、すれ違うようにしてタイプリーフのどてっ腹に左の回し蹴りを叩きこんだ。

『ぐっ!?!?』

 タイプリーフが、暴風を受けた紙きれのように薙ぎ払われる。

 そしてそれが吹っ飛んだ先は、銃口を構え未だに砲撃によって援護を行っていたバーニングの元。

 二つの巨体が勢いよく激突し、辺りに絶大な衝撃波がまき散らされた。

『遥さん!』

『分かってるわ、食らいなさい!!』

 二機が固まっているポイントを狙い、タイプムーンが両腰の圧縮プラズマ砲を構える。

 一瞬の溜めの後、タイプムーンの腰から巨大な赤いプラズマ弾が放たれた。アストラルほどではないにしろ、こちらもかなりの威力だ。

『食らいはしない……!』

 うなるような言葉を発した隼斗は、タイプリーフを抱えた姿勢のままクローラーでバーニングを横に滑らせた。その直後、2機の居た場所を赤い雷弾が突き抜け、後方の大地を着弾時の爆発が抉り取った。

『助かりました、隼斗君』

『問題ないですよ、このくらい』

 抱えていたタイプリーフを地面に下ろしながら、バーニングを操る隼斗はそう答えた。

 タイプリーフは黙って両手のクナイを構えると、その一方を素早くアストラルへと投げつけた。

『当るわけが――――』

 そう言ってはじき返そうとした飛鳥の視界が、突然分厚い煙に覆われた。タイプリーフが遠隔操作で、アストラルの手前でクナイを起爆させたのだ。

 そしてその煙を食い破って、バーニングのガトリング弾が襲い掛かる。

『なっ、く、くそ!』

 煙幕のせいで直撃まで反応できなかったアストラルは、ガトリング弾が断続的に直撃する衝撃でその場に縫い止められてしまった。

『ちっ、それ以上は!!』

 舌打ちをして遥がタイプムーンの重光子ライフルを使ってバーニングの砲撃を止めようとするが、バーニングは器用に左右へ滑り妨害をかわしつつアストラルへとガトリングを打ち込み続けていた。

 身動きの取れないアストラルの懐に、煙を突き破ったタイプリーフが潜り込んだ。

『破ッ!!』

 機体を突き抜けるほどの衝撃波を生みだす凶悪な掌底が、アストラルの腹に深々と打ちこまれた。

『ぐふっ!?』

 運動量を丸ごと交換したかに見えるほど勢いよく弾き飛ばされるアストラル。その吹き飛ぶ機体目掛けて、タイプリーフは流れるような動作で片手のクナイを投げつけた。

 クナイは直接突き刺さることはなく、アストラルにぴたりと寄り添うような位置で起爆する。

『ぐぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!』

 大きなダメージと共にアストラルは爆風で大地に叩きつけられた。

 そしてその上から、その刃をつきたてようとクナイを持ったタイプリーフが急降下してきた。

『くっそ、なんのっ』

 転がるように飛び退いたアストラルの居た場所を、クナイの鋭い刃が突き抜けた。荒野に突き刺さった刃は大地にヒビを入れるほどの威力を伴っていた。

 慌てて飛び起きたアストラルと、両手にクナイを持ち直して再度突撃したタイプリーフ。

 両者の間で、再び荒れ狂う刃と刃が舞い踊った。だが今回は、最初からタイプリーフが押していた。

 勢いに乗っているタイプリーフと、体勢を立て直そうとするアストラル。どちらが有利かは言うまでもないだろう。

 アストラルが押されている状況に目ざとく反応したタイプムーンが、バーニングから放たれる機銃の掃射を受けながらも両者の間に割り込むように曲射レーザーを発射した。連続攻撃を切り上げて後方へ飛びのいたタイプリーフへ食いつくように、屈折したレーザーが襲い掛かる。

 タイプリーフは機体をねることでこれを冷静に回避するが、ここで生まれた一瞬の空白を使って今度はアストラルがタイプリーフへ襲い掛かった。

『うぉぉおおおぉぉぉおおぉおおお!!!!』

 今度こそ何も考えずがむしゃらに、それこそ嵐のような連撃を繰り出していく。

 余裕のある状態ならば話は別だっただろうが、一手遅れたこの状況ではタイプリーフも正確な対応をすることはできない。途切れない斬撃の嵐に、じりじりとタイプリーフが追いこまれていく。

 だがその中でも一葉は、一瞬のチャンスを見出していた。

『ヤァ!!』

 気合一閃。

 振るわれる光刃をただ弾くだけだったクナイの一方が突然、うなりを上げてアストラルの頭部に向けて突き出された。

 それは一葉の見出した確信。アストラルが振り上げた右のフォトンブレードがタイプリーフの肩を貫くよりも前に、そのクナイの切っ先はアストラルの頭部を確実に貫く。

 そのはずだった。

 渦巻く突風を伴ったクナイの一撃を、しかしアストラルは首を振ってとっさに回避した。明らかに、一葉の思い描いたビジョンの外側。

 そして、飛鳥の巻き起こす予想外はそれにとどまらない。

『……見切る、チャンスは逃さない!!』

『えっ!?』

 片手を前に突き出した無防備な格好のタイプリーフに、アストラルはフォトンブレードを突き立てなかった。武器ではなくその両腕で、伸びきったタイプリーフの腕を担いだのだ。

 ぐっ、と引き寄せ、タイプリーフの機体をアストラルが担ぎあげる。柔道の一本背負いのように、相手の勢いをも利用した投げ技。

 だがそこに、バーニングの放ったカノン砲の砲弾が襲い掛かった。

 それはアストラルのカメラを通して、飛鳥の視界にも映っていた。砲弾の描く軌道は、寸分のズレもなくアストラルの腹部へと激突しようとしている。

 普通なら、タイプリーフを捨ておいてビームブースターで離脱するだろう。しかし、飛鳥はそうしなかった。この瞬間がチャンスであると、そう感じていたからだ。

『この程度ならァッ!!』

 叫び、その場で思いきり踏ん張る。強烈な衝撃が横腹を叩くが、アストラルはなんとかそれを凌ぎ切った。

『なんだって!?』

 隼斗の驚愕の言葉を聞きながら、飛鳥は笑みを浮かべていた。

『うぅゥゥらああぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァッッッッ!!!!』

 アストラルはついにタイプリーフを持ちあげ、全身の動きを使ってありったけの力で上空へと投げ飛ばした。

『きゃぁぁぁあああ!?』

 錐揉み回転しながら打ちあげられるタイプリーフは、姿勢を正すことすらままならない。そしてそれは、決着の一撃を演出した。

『遥さん、今です!』

『えぇ、任せて! 私が撃ち抜く!!』

 背中に負った砲を身体の前へと下ろしていたタイプムーンが、機体サイズよりも巨大なその砲をまっすぐに空中のタイプリーフへと向けていた。

 鈍い振動と、光が満ちる。

 それが、刹那に飽和した。

『いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええ!!!!!!』

 尋常ではない衝撃が、撃った本人ですらないアストラルやバーニングの足元をも地震のように揺らす。

 視界の全てを覆い尽くすほどのとてつもない量の閃光が、タイプリーフとその周囲の空間をまとめて焼き払った。

 超大型荷電粒子砲の一撃が、タイプリーフのコア部分以外を跡形もなく消し飛ばしたのだ。

『すっげぇ……』

 状況を演出したとはいえ、あまりの威力に飛鳥は絶句する。

 実はフルパワーのアストラルカノンはこれよりも数段破壊力が上なのだが、飛鳥はそのことにまで考えが及んでいない。

 全員の視界に、一つのシステムメッセージが現れた。

【タイプリーフ、ダメージ限界突破。

 プレイヤー4『音深一葉』 リタイア】

『やられちゃいました、ごめんなさい……』

『いえいえ、気にしないでください』

 申し訳なさそうに謝る一葉にそう軽く返した隼斗だったが、その頬には冷や汗が伝っていた。

 フォトンブレードを構えるアストラル、重光子ライフルを構えるタイプムーン。

 ここから先は、2対1だ。

『しかしこれは、なかなか厳しいぞ……?』

 隼斗はただ、シミュレーター内部で引きつった笑みを浮かべていた。

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