3章『Bluff and Brave』:1
今回の戦闘はホライゾンの武装が特に複雑なので、分からない場合は第4部の登場機体解説を確認する事をお勧めします。
猛ダッシュでアストラルの格納ブロックに突撃した飛鳥は、顔の前に右手を掲げ、アストラルのコックピット内へと走りながらテレポートした。
ふわりと身体が舞う感覚の直後、直立状態のシートにすとんと全身が収まった。
「うっし」
正面のタッチパネルに手の平を叩きつけて機体を起動させると、飛鳥は早々にシートを座席型に変更する。
固定具によって身体がシートに固定され、モニタに高速で文字が流れる。
その時、外部からの音声通信が入ってきた。
『本郷泉美、ホライゾン。出撃するわ』
「あのバカ、仕事が早えんだよ!」
文句なのかどうかよく分からないことになっているが、とにかく泉美に先に出撃されてしまったことに、飛鳥は顔をしかめた。
「いきなり攻撃したりはしないと思いたいけど、あれで自信家だしな。……とにかく俺もさっさと出撃しねーと」
機体のシステムが変わったことを知らせる旨のメッセージがいくつか現れるのに片端から確認ボタンを押して行くと、その途中でまた新たな通信が入った。
『アスカくん』
「一葉さんすか?」
手元のコンソールから一瞬中央モニタに視線を映して、そこに表示された一葉の顔を確認する。すぐに飛鳥が手元の作業に戻ったのを確認したが、一葉は構わず続ける。
『アスカくん、言い忘れていたことがあったので少し説明しますね。作業は続けてもらって結構です。火器管制システムは新しいものになって、問題なく動作するようにはなっていますが、オーバークロックの最適化がまだなので念のためにシステムはロックされています。何が起こるか分からないので、ロックを解除して使用したりはしないでください』
「オーバークロックは使えないのか……はい、わかりました」
『あと、先ほど伝えたとおり、痛覚リンクの強度が4になっているので、被弾時に痛みを感じることがあると思います。あくまで疑似的な痛みなので、怪我にはつながりませんからそこは安心してください』
「それはわかってます」
『はい。そして最後に、機体が戦闘モードになったらこちらからは通信が送れないので注意してください。今はVNATから映像を送っていますけど、戦闘が始まるとセキュリティによって阻まれるのでそれはできません。それとこの船はあくまでアークを乗せて海を移動するためのもので、出撃できるようにはなっていても本質的に戦闘行動を考慮されていません。実際に出撃したら、基本的にアーク間でしか通信が行えないものと思ってください』
「つまり、オペレートがないってことですか?」
『ええ、そうなります。申し訳ないです』
「大丈夫っすよ、こっちでなんとかするんで。……よし、準備完了!」
だらだらと続いていたメッセージ全てを確認して、飛鳥は全身をシートに預けた。腕や頭も神経接続のリング状パーツに固定され、視界が一瞬暗転した後、アストラルのカメラからの映像が映し出された。
ぐっ、とアストラルが身をかがませると同時に、格納ブロックのハッチが開いた。
『進路クリア。発進できます』
「オッケー! 星野飛鳥、アストラル。出るぜ!」
ブースター噴射の突風が格納ブロック内で暴れまわる中、アストラルが高速で船から出撃した。
「くっ、肌がピリピリする……。痛覚リンク上げたからかコレ?」
上へ向けて大きく飛び上がりながら、飛鳥はコックピットの中でそう愚痴る。疑似的な感覚なのは間違いないが、これまでずっと設定を2にしてきた痛覚リンクをいきなり4に変えたことで、やや過剰なほどに周囲の空気感のようなものまで感じ取ってしまっているようだった。慣れるまで少し時間がかかりそうだ。
「あいつらは……?」
大きく高度を上げたアストラルは宙返りをしながら辺りを見渡す。現れた二機は船の前方にいるはずだ。
船の向こう500メートルほどの位置に、クランブルとナチュラル、そして相対するホライゾンの姿があった。
「そこか!」
ブースターを噴射して、アストラルは自由落下していた機体を彼らに向け大きく加速させる。
空気を破裂させる音が空に轟き、その音が届くとほぼ同時、アストラルはホライゾンの傍らにいた。
「まだなにもやってないだろうな」
『うっさい』
通信で適当な事を言い合いながら、正面にいる二機を見据える。
『オレンジの方がクランブル、水色のほうがナチュラル』
「ん、了解」
『……足引っ張るぐらいなら引っ込んでてくれていいわよ』
「はん、冗談じゃない」
軽口はともかく泉美の言葉が正しいのなら、というか正しいのだろうが、オレンジのごつい方がクランブルで、アストラルと大体同じ程度の機体サイズの方がナチュラルということだろう。
クランブルは丸みのない角ばった形状で、色はオレンジと黒を中心として随所に白いラインが入っている。発光体は黄色の光を放ち、コアは赤い色に染まっていた。形状やら色やら諸々含めて、どこか建築重機のような無骨な印象さえ抱かせる。10m近い巨体もそれに拍車をかけていた。
しかし何よりの異様はその左腕か。腕の肘近くまでを覆い隠すほどの位置から、地上で腕を下ろせば先が地面に付きそうなほどの場所にその先端がある、巨大な円錐形のドリル。太さはそれほどでもないが、長さやそもそもドリルという存在そのもの、そして他に何か武器らしきものを装備しているようには見えないことが、異常なまでの存在感をもたらしていた。
もう一方のナチュラルはクランブルとは対照的に丸みを帯びた、例えばイルカやサメといった水生の哺乳類を彷彿とさせる、生物的なフォルムをしていた。水色をベースとしたカラーリングに黒色で奇妙な模様が描かれている。発光体の色は黄色でコアの色は白だった。機体サイズは8メートル程度とほぼアストラルと同サイズだ。
目立つのは背部の背びれのような、恐らくは推進装置と姿勢制御装置を兼ねた推進ユニットと、その両隣から翼のように広がるひれ状の武装ユニットだ。
背中の武装ユニットには特にカモフラージュの意図も見えない長い砲と、その横に供えられた片側3門のミサイルランチャーの存在が伺えるが、飛鳥にとってはどうにも隣にいるクランブルのドリルの存在感が猛烈過ぎてインパクトが薄かった。
見た目の印象があまりにもアンバランスな二機に、飛鳥はコックピットの中で微妙な表情を浮かべる。
慎重に身構えるアストラルと、空中でも妙に余裕を感じさせる優雅な立ち姿のホライゾンに、オーストラリア側の一体、クランブルがその左腕のドリルを向けた。
ギロリと機体のアイカメラを向けながら、わざわざスピーカーモードにでも設定したらしいコックピットからの音声でこう言った。
『ハッハッハッ、マジかよアストラルにホライゾンだぜ期待通りだ!』
音声はどうやらアストラルが勝手に翻訳でもしたようで、日本語で聞こえてくる。のだが、その音声は妙に野性的な女性の声だった。
これは初回起動時に設定された搭乗者ごとの固有言語法則などというものに従って翻訳されているのだが、毎度のことながらご丁寧に細かい口調まで作られている。謎な技術である。
(この情緒豊かな翻訳って意味あんのか……)
『無いわよ』
「やっぱそうだよな…………えっ?」
何も言っていないはずなのに隣から返事が聞こえてきて、飛鳥は一瞬遅れてその事実に気が付く。
アストラルの頭部がぐりんと横に向けられるが、ホライゾンは変わらず正面の二機を見据えたままだった。
「……あれ、俺口に出してた?」
『いいえ』
「……って、あ! お前、読心能力俺に向かって使うなよ!」
『さぁ、何のことかしら』
ホライゾンにだけ向けた通信で飛鳥が文句を言うが、泉美は適当にそう言ってはぐらかしてしまう。
しかしホライゾンの読心能力がアストラルに向けられていたのはまず間違いない。何か変なことを考えていると後ろから撃たれてしまいそうな予感に、飛鳥の背筋に冷たいものが走る。
だがその思考も、続くクランブルのパイロット、カミラからの言葉で遮られた。
『うーん、いいねぇ。腕試しってなレベルじゃないけど、こりゃ全力で行かせてもらえそーじゃん』
「……? おいちょっと待ってくれ」
言葉に不穏なものを感じ取った飛鳥が、慌てて外に向けて声をかけるが、カミラは無視してこう続けた。
『よっしじゃあさっそく! や・ら・せ・て・もらうさぁ!!』
(――――――ッッ!?)
ギュギィッ! という耳障りな音と同時にクランブルのドリルの付け根部分で火花が散り、高速回転を始めたドリルが直後にまっすぐ突き出された。
「だあっぶねッ!?」
『やっぱりね』
空気を割り割いてアストラルとホライゾン、二機の間を通るように放たれた刺突の一撃を、飛鳥達はそれぞれ即座に回避する。
左右二方向に飛び退いた二機を交互に睨みつけると、クランブルはアストラルに狙いを定めて右腕を向ける。
装甲のように見えていた腕の一部が開き、そこから機関砲が姿を見せた。
直後に銃口が光を放ち、小型の重光子弾があられのようにアストラルへと降り注いだ。
「――クソッタレ! やる気マンマンなのは敵の方じゃねぇか!!」
ここにきて、目的不明のオーストラリアの二機は飛鳥の中で明確に敵と区分された。
ジグザグに射線を回避しつつ、船に流れ弾が及ばないように大きく距離を取るアストラル。
(反応性は若干向上してる? こっちは単に痛覚リンクを上げた結果か)
機体の挙動がやや鋭敏な事に気が付く飛鳥。ヒュンヒュンと弾よけをしていても、普段から機体を加速させるために必要な一瞬のラグを考慮して機体を動かすのだが、そのラグが微妙に小さくなっている。
射撃に関してはこの分のラグ軽減でも相殺になってしまうようだが、普通に操縦する分にはいくらか動かしやすくなっていた。
カミラはコックピットの中で、その動きを見てにやりと笑った。
「見たかよ一発たりともかすりもしないぜ、やるねぇアイツ。こりゃ気合入れてかないとヤバいぜラッキー!」
『分かってたことだよ。それじゃ、ボクも始めるから』
スピーカーモードは解除して互いの間でのみ通信を繋ぎ直したカミラとラクランは、それだけ言葉を交わすと、ついに完全な戦闘態勢を取った。
半周宙返りをして、重力に任せて落下を始めるナチュラル。そのままのまっすぐに落ちて行き、頭から静かに海に飛び込んだ。
「いきなり水中……?」
怪訝な表情で眉を寄せた飛鳥だったが、思考を巡らせるよりも先にクランブルが襲い掛かってきた。
「オラオラよそ見すんなよ!」
「――チィッ、うざったい!」
振り下ろされるドリルを紙一重でかわし、機体の速度を利用して放たれた追撃の体当たりも、ビームブースターで真上に飛び上がることで回避する。
「もらった!」
体当たりを空振りして隙だらけとなったクランブルに向け、真上から両手のフォトンライフルと腰部プラズマバズーカによる一斉射撃を浴びせようとした矢先、二条の緑の閃光がアストラルに襲い掛かる。
「――――ッ!!!!」
紙一重で機体をひねることで回避を試みるが、一方の重光子ビームがアストラルの脚部を掠めた。
「ぐぅっ……!」
太ももに走る疑似的な痛みに飛鳥は顔をしかめる。
(ナチュラルか! くそ、痛みが思ったより強烈……!)
とっさに攻撃が来た方向に視線を向けると、肩から上だけを海面から出したナチュラルが、翼のような武装ユニットを肩越しにこちらへ向けていた。
『そこ!』
身をひるがえすアストラルをよそに狙撃銃をぶっ放すホライゾンだったが、銃口を構えた時点ですぐに海中に飛び込んでいたナチュラルには届かない。
派手に水しぶきを上げる海面から、今度は6発のミサイルが飛びだした。
「こいつ……ッ!」
「ハッハー、ウチもいるんだぜ!」
飛来するミサイルに気を取られたアストラルへ向かい、クランブルが再び襲いかかる。
突き出される回転ドリルまでは辛うじて回避できたものの、直後に放たれたサマーソルトはギリギリで持ち換えた左のフォトンブレードで受けとめるのが限界だった。
巨体に見合わぬ俊敏性から放たれた一撃は、ガードの上からアストラルを大きく弾き飛ばす。
姿勢を崩すアストラルに、3発のミサイルが襲い掛かった。
「んなろっ!」
高速で飛来する小型ミサイルへ向け、砲撃モードのビームブースター2門と右のフォトンライフルを構え素早く発射した。
狙いを定める余裕などなかったが、更新された火器管制システムの影響か、放たれた光線と光弾は接近するミサイルの弾頭を正確に打ち抜いた。
同タイミングでホライゾンも自分に向かって飛来していた3発のミサイルを、実弾と重光子弾を二つの銃口から交互に発射するデュアルサブマシンガンという軽機関銃型の武器で冷静に迎撃していた。
しかし直後にそのミサイルの爆煙を薙ぎ払って、クランブルがそちらへ現れた。
(マズい――――)
泉美の操るホライゾンは、本来は超長距離からの狙撃に特化した機体だ。アストラルとの戦闘の際は、ホライゾンが持つ読心能力と泉美の驚異的な操縦技術によって対応していたが、近接戦闘はむしろ苦手な部類で、格闘戦などそもそもできるようになっていない。
「させっかよォ!」
ドバンッ! と激しく空気を叩きビームブースターの最大出力でもってクランブルへと突撃する。
アストラルの眼前では、デュアルサブマシンガンの迎撃などものともせず、クランブルが今まさに巨大なドリルによる刺突の一撃を放たんとするところだった。
「もらいだ嬢ちゃん!」
激しく回転するドリルの先端がホライゾンのコアに直撃するその寸前、アストラルの亜音速のとび蹴りがクランブルの脇腹に激突した。
『あんた……』
ドリルを回避しようと身をひるがえしていたホライゾンの中で、泉美が驚いたような声を上げる。
だがそれも一瞬の事。即座に切り返したホライゾンが、開いている手で腰の後ろ側から『ハヤブサ』と名付けられた重光子炸裂砲を手に取った。
『当てる!』
とび蹴りを受けて怯むクランブルへ向け、機体を後退させながら即座に発射する。
放たれた白い光弾がクランブルの右胸に吸い込まれるように着弾した。直後、弾体を構成していた重光子が連鎖的に炸裂、一瞬にして崩壊した全重光子から大量の熱エネルギーや運動エネルギーがまき散らされた。
それは着弾したクランブルのみならず、そのすぐそばにいたアストラルまで巻き込んで吹き飛ばした。
「うわっ!?」
足元から来る予想外の衝撃に、アストラルは大きくバランスを崩す。その瞬間、肩の装甲ギリギリの位置をナチュラルの重光子狙撃砲による緑の砲撃が掠めた。
回避行動をとれないタイミングにもかかわらず外れた攻撃に飛鳥が疑問を感じる前に、その閃光はアストラルの後方、ホライゾンの左脚を捉えていた。
『くぅっ!』
歯噛みする泉美は、すぐさまホライゾンの左脚部の損壊を確認する。装甲に欺瞞された姿勢制御スラスターの一つが焼き切られていた。
『しまっ――』
ホライゾンがそこに気を取られた瞬間、被弾に怯んでいたクランブルが体勢を立て直し、強引にホライゾンへ向けて加速する。
「しつっけぇぞ!!」
右手のフォトンライフルをその場で構え、アストラルを横切ろうとするクランブルのコアへ向ける。
だがそれを予期していたかのように、アストラルへ向けナチュラルから重光子狙撃砲による砲撃が放たれた。紙一重でこれを回避するも、そのせいで牽制のために構えていたフォトンライフルは明後日の方向へ向いてしまう。
「ハハッ、ナイスだラッキー!」
狙撃砲による照射ビームの射線が消えるや否や再加速したクランブルの背が、飛鳥の眼にはいやに小さく見えた。
(させ、ねぇ――ッ!)
ビームブースターのチャージは間に合わないが、ナチュラルの狙撃砲は2門で左右別個に撃っても今ので撃ち切り。ならば追撃は無い。
通常推力を全開し、ホライゾンへ迫ろうとするクランブルに背後からショルダータックルを打ちこんだ。
「っし!」
『あっ、バカ――――』
通信越しの切迫した声にはっと顔を上げたその瞬間だった。
ドバァッ! と、タックルによって軌道のズレたクランブルとその背後にいたアストラルに、ホライゾンの重光子散弾銃『ムラドリ』による大量の光弾が浴びせられた。
「ぐぅがあああああああ!?!?」
アストラルは半身に大量の重光子弾を浴び、コックピット内の飛鳥は疑似的な痛みに、噛みしめようとした口から悲鳴じみた声を漏らす。
「おぉっと!」
対してクランブルはやはり被弾に強いのか、コアと頭部という最低限の範囲だけを左腕のドリルで守って、あとは後方へ大きく後退することでやり過ごした。
着弾衝撃に一瞬気を失いかけた飛鳥は、重力に引かれて落下していたアストラルを慌てて制御して脚を下に向ける。
上方で、散弾銃モードにするため中間から折れたような形になった狙撃銃を構えるホライゾンに、恨みのこもった視線を向けた。
「う、ぐっ……。俺ごと撃つことないだろ!」
『あんたが射線に入ったんでしょ!』
誤射に対して怒る飛鳥と同様に、ホライゾンに乗る泉美もまた射線に飛び込んできた彼に対して怒りをぶつけた。
「こんの……」
ギリリと歯を食いしばって睨みつけるが、それ以上の言及は不毛だと感じ、一旦呼吸を落ちつけてから遠方の敵を見据える。
海面から顔をのぞかせるナチュラルと並んでホバリングするクランブル。コックピットの中で、カミラは満足気に口角を釣り上げた。
「んー、意外とアタイらもやれる感じ?」
「油断しないでよ」
「ふひひ、わかってるって」
ラクランに釘を刺されるが、カミラはふざけた態度で返すだけだった。
その静止したクランブルとナチュラルを見つめて、飛鳥は一旦思考を落ちつけようとする。
(くそったれ、敵が2機でこうもややこしくなるのか。それにこの痛み……、疑似痛覚のくせに結構キツイな)
落ち着いたせいか余計に、びりびりとひりつくような痛みを感じる左半身。ムラドリ自体は全弾直撃で狙撃銃アマツバメとほぼ同等の威力となる武器だが、アストラルの装甲ではそれでもバカにならないダメージになる。
機体稼働に影響のあるレベルではないが、疑似的な痛みのほうが集中を妨げかねない要因になっていた。
先ほどの敵の連携を思い出せば、敵は2体であることを強く認識させられる。何も考えないがむしゃらな突撃は、それこそ一方的に嬲られる結果に繋がりそうだ。
(ともかく、あいつらの連携を崩していかない事には話にならねぇ。……こっちはハッキリ言って独立した一人と一人。瞬間瞬間で2対1を作られてたんじゃ被弾がかさんで撃墜されかねない)
左手のフォトンライフルを脚部の磁力吸着マニピュレータに戻し、フォトンブレードを素早く装備する。
ホライゾン戦で思い付きのもとにやってみた装備セッティングだが、手数は減るものの攻撃タイミングが極めて多くなかなか便利なスタンスなのだ。攻撃タイミングが多いというのは、裏を返せば欲張らなければ被弾が減らせるということでもある。
ともかく戦闘の中で攻略の糸口を見つけないことには、その先など無いに等しい。
ドリルを振り下ろして一気に加速するクランブルと、再び水中に全身を沈めるナチュラルに対して、アストラルも戦闘態勢の構えを取る。
(相手の能力すらまだわかっちゃいないが、やるっきゃないよな!)
腹をくくり、飛鳥は短く息を吐く。
迎え撃つべく、アストラルが前方へと突っ込んだ。