勉強会は……蜜の味?
小説初心者です。
あまり書きなれていないタイプの主人公を書いたので違和感があるかもしれません。書きなれていないというより想像をしていない、といったほうが正しいかもしれません。
そういうのは受け付けない、という方はブラウザバックをしてください。
そして毎回のことながらタイトルが……
思いつくときは思いつくけれど、今回はなかなか頭をひねりました。
その結果……微妙な仕上がりになりました。すみません。
「恭太君?」
先ほどまで紙に字を書く音が続いていたのにいきなり途切れた。
それだけなら何か考えているだけだろう、と思えたのだけれど、なぜかその間が長く私は気になって顔を上げた。
シャーペンを持ちつつ、テーブルに両腕を乗せた態勢で舟をこいでいた。
「もう、恭太君ったら」
そういいつつそっと恭太君を横にさせ、勉強中に寝てもいいようにとあらかじめ用意しておいた枕代わりのクッションに恭太君の頭に寝かせるように置き、タオルケットをかける。
恭太君は私より1歳下で、今年中学3年生の受験生だ。
私と恭太君はいわゆる、恋人……というもので、あまり勉強が得意ではないから勉強がはかどらない、といっていた恭太君に私は「私が教えようか?」といったところすごくうれしそうにはにかんで「よろしく!」と即答された。あの時の恭太君の顔を思い出すと思わずニヤけて…………えーっと、とりあえずそれで私は恭太君に勉強を教えることになった。
でも、私も高校生に上がり、勉強が今までよりちょっと難しくなって、あまり恭太君ばかりに構うことはできないから二人で一緒に勉強しようということになった。
ここ1週間、恭太君は勉強があまり好きではないにもかかわらず、一生懸命勉強した。
私もそんな恭太君のために、と中学のころのノートを渡したり、私が当時使っていた参考書も渡したりした。だけれど私が「これ読んでね」と言って渡してしまったせいでどこかまめな恭太君は、睡眠時間を削ってまでそれを読む羽目になってしまった。
それに気づいたのは情けないながらも今日の事で、目の下に若干クマがあるような気がして、気になって聞いてみてはぐらかされかけたけど何とか聞き出したら参考書やノートやらを見ていたからだ、と言っていた。
だから今日は寝不足なようだから勉強会は中止にしようとしたのだけれど、恭太君が断固拒否したため結局恭太君が寝不足なままこの勉強会は始まった。
でも夜更かしをしてしまって途中で眠くなってしまう可能性もあると考え、私はあらかじめクッションとタオルケットを用意した。
その時恭太君は「そんなのいらないよ」とちょっとむきになっていたけれど……やっぱり用意しておいたよかった。
恭太君はまだまだ中学生でその顔は幼い。笑う時もそうだけど、寝顔もとっても幼くってすごくかわいい。
正直恭太君の顔はとても整っている、とか、すごくかわいい、なんてことはないけれど、いつも笑顔で明るくて、そのやんちゃだけれど元気いっぱいな姿に心惹かれる女の子は少なくない。
だから、たまに不安になる。
とっても素敵な人が現れて、恭太君に告白して、そして恭太君がもしその人を好きになっちゃったら? って。
恭太君の気持ちを信用していないわけじゃない、でも、人の気持ちが絶対に変わらない、なんて保証はどこにもないから。
そんな風に嫌な想像をめぐらせていたら、とても不安な気持ちになり思わず寝ている恭太君の手をつかむ。
ギュッと手を握ったら、恭太君もやさしく握り返してくれた。
そのことにドキッとして、もしかして起こしたかな? と思い顔をのぞいてみたけれど起きている様子はなかった。
よかった、とほっとしたと同時にとても胸が温かくなった。
寝ていて無意識とは言えど、私の手を握り返してくれたことがとてもうれしかった。
温かい恭太君の手のひらを、自分の手のひらで感じつつそっと目を閉じる。
大丈夫、恭太君はここにいる。
そう自分に言い聞かせて、不安な気持ちを押しとどめる。
勝手に不安になって、優しい恭太君に心配かけさせちゃいけない。
いつだって恭太君は私にまっすぐに気持ちを伝えてくれるから。
今時の思春期の男の子なら、恥ずかしがってそういうことを言わない場合が多いはず。むしろ思春期関係なくシャイな男の子は多いらしいから、そんな中恭太君はまっすぐ思いを伝えてくれているから大丈夫。
そう自分に言い聞かせても、どこか不安になってしまう気持ち。
どうすれば、いいのかな。
「はぁ」
思わず出た溜息の重さに、私は少しびっくりした。
「あやね?」
寝起きのかすれた声、幼い口調でそういう恭太君に私はびくりと震えた。
「恭太君?」
「……彩音」
ちょっと挙動不審になりつつ恭太君に声をかけたら、恭太君はとても真剣な顔で私の顔を見詰め、そして私の名前を呼んだ。
その真剣な声にどきりとして、思わず顔をそらしたくなった。
私はその衝動のまま顔をそらそうとしたのだけれど、不意に伸びてきた恭太君の手にそれはさえぎられてしまった。
「きょ、恭太君」
情けなく震えた声が出た。それは恐怖とかそういうものじゃなく、ただ恥ずかしくてどうすればいいかわからないから。
そんな私に恭太君はそっと頬にあてていた手をどけて、ギュッと私を抱きしめた。
ポンポンと優しく背中をたたいてもらい、さっきまでの動揺はすっと消えた。
私って単純だな、って苦笑しつつ、でも恭太君の腕の中にいるととても幸せで、私は自分からも恭太君の背中に腕を回した。
「よかった」
「え?」
ぽつんとつぶやいた恭太君の言葉に、なんだかよくわからなくて驚く。
「さっき彩音、なんか泣きそうな顔してたから」
そういう勝田君の顔のほうがとても泣きそうで、その表情を見た私の胸はキュンってなった。
「恭太、くん」
「彩音、俺は彩音より年下で、子供で、頼りない風に見えるかもしれない。でもね、俺だって男だよ? 大好きな女の子を守りたいって思うから。だからもっと俺に頼って、彩音」
そういって優しく私の髪をなでる恭太君に、なぜか目頭が熱くなった。
「わ、たし」
そういった私の声は震えていた。
そして私は、恭太君の「頼って」という言葉にすっと今までの不安な気持ちが口から出ていた。
そのあと、恭太君は泣きながら話す私を、そっと慰めるように頭をなでながら話を聞いてくれた。
「…………」
「恭太君?」
話し終わってすっきりして一息ついた私は、恭太君はなんていうかな? と思いつつ言葉を待ったけれどなかなか口を開かない恭太君に焦れて顔を上げた。
恭太君は……なんだかとっても複雑そうな顔をしていた。
「あの? 恭太君」
「……俺だって」
「え?」
「俺だって不安だよ」
「恭太く」
ぽつりと小さな声でそういった恭太君は、私の声を遮って力いっぱい私を抱きしめてきた。
いきなりの展開と、抱きしめる腕の強さにびっくりして思わず硬直してしまう。
「彩音、すごくかわいいから。俺のいない高校でいつ男に言い寄られるかって、いつも不安だよ」
「そんな私別に言い寄られるなんて」
私の顔は悪い、という部類ではないとおもう。だからといっていいか? と聞かれればうーんとうなってしまうようなもので、かわいいなんて言ってくるのは恭太君ぐらいだ。
「かわいいよ、彩音はすごくかわいい。だからいつか俺のそばを離れていっちゃうんじゃって思うこともあった……俺たち、同じこと思ってたんだね」
とてもつらそうに言葉を吐き出す恭太君に口を閉じ、そして最後はふっと雰囲気を柔らかくして言う恭太君に私も思わず苦笑を漏らした。
「うん、そうだね」
「彩音」
「なに?」
「俺、絶対約束する。彩音のそばを離れるなんてしない、だから彩音も誓って、俺のそばを離れないって」
いきなりの恭太君の言葉に驚いて、呆然としてしまう。でも、言う言葉が決まっている私は一つ深呼吸をして口を開いた。
「誓うよ、恭太君のそばにずっといる。恭太君が嫌がっても、絶対離れないんだから」
そういった私の声は、今までとは別人のように自信にあふれていた。
そんな私の言葉にふっと優しく笑った恭太君は、私の後頭部に手をまわして顔を近づけた。
ギュッと目を閉じて、次の瞬間唇に来るであろう衝撃に備えたけれど、恭太君が私の耳に口を近づけ「じゃあ誓いのキスだね」と、ちょっといたずらっ子のような口調で言って、その言葉に驚いて目を開けた私にやさしくキスをしてくれた。
そのあと、初めて目を開けた状態でキスした私は、マジかで見る恭太君の顔にびっくりして、そしてドキドキしてしばらく顔をうつむかせたままだった。
「まったく、彩音は警戒心が薄いね。高校にいる俺の兄貴に虫除け頼んどいてよかったよ」
自分のことでいっぱいいっぱいだった私は、そういってニヤっと笑っていた恭太君に全く気付かなかった。
誤字脱字報告やアドバイス・感想大歓迎です。
そしてこの彩音はかわいいとは言われずとも、学校でかわいいものを見るような目で友人に見詰められ、頭をなでなでされていそう(妄想)
というか、むしろ私が友人にしていますけどね(笑)