第二話:2人きり
キーンコーン
放課後のチャイムが教室に響いた。
「はぁ…」
昨日は散々だったなぁ・・・。再婚はともかく、これから一緒の家に住むのは、さすがに気持ち的な面で少し窮屈だよ・・・。
それにまさか、義兄がウチの高校の先生だったなんて…。学校で会ったらなんか気まずいじゃん。
ふと、その時、
「どーしたのっ?ため息なんか付いちゃって。」
突然、後ろから私じゃない女の子の声が響いた。
この声は…、多分…――――――
「夜美…!」
「あったりー!振り向かないのによく分かったね。さすが私の親友だよー」
このやけに明るい子は楠木夜美。かれこれ小学校時代からの付き合いになる。
「そりゃそうよ。何年友達やってると思ってるの」
「まぁねー。ねね、それよりもさー、臨時の君嶋先生のトコ行かない?!」
ドキ・・・─────────
うっわー。心臓に悪・・。
「え・・。何で・・・?」
私は、とりあえず、とぼける事にした。
「何でって・・・、あんた知らないの!?君嶋先生、カッコよくて人気なんだよー!だから仲良くなりたいなぁって」
・・・夜美の瞳が気持ち悪いくらい輝いて見える。
へぇ、私の‘おにいちゃん’って人気者なんだ・・・。
「私はいいや。今日はちょっと用事があるから先帰るね!」
とにかく、先生と学校で会いたくない。
絶対、変な空気が流れるもん。
「あ、そう?じゃあねー」
「うん。また」
そして、私は、全速力で走って家へと向かった。
ガチャ
「ただいまー」
しん・・・
何故か、家の中からは何も返事が返ってこなかった。
・・あれ?いつもならお母さんがいるはずなのに・・・。
それに、祐一さんもいない・・・。
「どうしたのかな・・・・ん?」
ふと、リビングのテーブルの上にあった置手紙のような物が目に入った。
「何これ・・・?
‘新婚旅行に行って来ます。2週間後には帰って来るから、それまで太一君と仲良くしてね’
・・・・って、えぇぇ!?」
「ただいま。・・・どうしたの・・・?」
さっき帰って来たらしい‘お兄ちゃん’が、言った。
私が無言で手紙を差し出すと、‘お兄ちゃん’は状況を理解したのか、まじまじと私を見つめる。
「先生、どうする・・・?」
これって、先生と2週間も2人きりって事なんですけど・・・。
先生が、完全に困り果てた様子で口を開く。
「・・・・俺たち、どうしようか・・・?」
そして、いつもより更に気まずい沈黙が、この空間に流れた・・・。