隣占領恋花火
いつもと同じようで違う恋。きっと他の子たちも同じような恋をしてるんだろうけど、きっと、私ほど全力で恋をしている子は、私だけ。それくらい、好きな人ができた。
私は撫子 翠大学2年生。軽音楽部と写真サークルに所属していて、大学生活はとても充実している。特に写真サークルのメンバーとはよく遊びにも行っていて仲がいい。
「翠、今度の写真会、近くの海岸沿いに行くんやって。」
私と同じ写真サークルに所属する友達、神楽 すみれが写真サークルのグループLINEに流れてきた文章を私に見せながら話してきた。
「え、いいやん。海岸沿いやったら、どの時間でも綺麗な写真撮れそうやね」
「えそれな!しかもしかも、海沿いって言ったら、オシャレなカフェとかもあるし」
「たしかに!みんなでそこでまたおしゃれな写真撮れそうよね!」
「翠はほんまに写真しか目がないなあ」
「え?」
お昼の1時間休憩の時間、コンビニの菓子パンを口に含みながらすみれは、にやにやして前のめりに話しだす。
「写真会があるってことは、すず先輩とも話せるチャンスなんよ?」
「あ、う、うん…」
写真サークルの先輩、早見 すずと先輩。一つ年上の先輩で、部活に入った去年の冬のときに私が一目惚れした。ずっと先輩一筋なんだけど、緊張してあまり話すこともできず、動くこともできていない。
「帰りにさ、カフェ二人で寄って行きなよ!」
「そんないきなりできるわけないでしょ…」
「そんな待ってるだけじゃ、何もできないよ?しかももう夏休み入るし、夏祭りっていうイベントもある!頑張りどきでしょ~」
「そりゃいきたいけどさあ…」
今までの恋愛もそうだったが、私は持ち前の不安症でいつも自分から行動できずにうまくいかないことが多かった。前の恋愛も、その前の恋愛も、その前も。ずっと眺めることしかできなかった。そんな恋愛も知っている、高校時代から仲良しのすみれは、いつもこんな弱気な私に寄り添って応援してくれる。
「今回こそはうまくいかせたいんでしょ。がんばろ!」
「そうよね…」
すず先輩は、私が出会った中で一番一目惚れした人。出会った中で、一番素敵だと思った人だから、今回は、今回こそは…。
放課後。今日の写真サークルは、今度行く海沿いでの写真会の打ち合わせと、その時のためのカメラの準備。今日もまた、すず先輩と会うことができる。このひとときがとても幸せ。
「お疲れ~」
すず先輩が部室に入ってきた。すみれが振り返り、挨拶をする。それに合わせて、私も勇気を出して挨拶をする。それがいつものルーティーンとなってしまっている。
「あ、お疲れ様です!」
「お疲れ様です」
すず先輩は、続けて話しかけてきた。
「今日って写真会する日の最後の部活よね?」
「そうですね」
「今回は海沿いやから、夕焼けになった時間も写真撮りたいんよね~」
「え、分かります!夕焼け空に海、いいですよね~、ね、翠!」
「まじで綺麗な写真撮れそうでわくわくしてます!」
すみれの言葉に合わせて話す。ああ、これが私の限界だなんて。
「それな?すみれちゃんも翠ちゃんも、やっぱり写真好きやから分かってくれて嬉しい笑」
「私は翠に全部教えてもらいましたから!翠、生粋の写真家やもんね!」
「写真家!?笑」
「じゃあ写真会のときに翠ちゃんの写真期待してる笑」
「そ、そんな、やめてくださいよ笑」
そう言ってすず先輩は、同級生のグループのところに行った。
「翠の写真見てくれるって」
ニヤニヤしながらすみれは言った。意地悪そうに言ってくるけど、こういう手助けがいつも助かっている。今日もありがとう、すみれ。
「明後日土曜日の写真会は、部長と副部長は朝10時からいるんで、そこから各自来たいタイミングで来てくださいー」
部長から写真会について、思ったよりも短かった話が終わり、首から一眼レフカメラを提げた私たちは帰ることにした。
「翠、ぽやぽやしてるね」
「んふふ、明後日が楽しみ」
「翠、明後日も頑張るんよ」
「うん、今回こそ、自分から話しかける」
「打倒、もねさんだね」
「もねさん…」
私の今世紀最大の敵…もねさん改め葉保田 桃花さん。もねさんは、私と同じくすず先輩を好きになった人。そして、私よりも恋愛経験がある、大人な人。こんな人なんかに勝てるわけないやとも思うんだけど、それでも諦められないくらいに素敵なのがすず先輩なんだから、私は困っているのだ。
「明後日は、可愛くしていこね!」
「うん…!」
次回、ドキドキわくわくの写真会…のはずが…
ご覧頂きありがとうございました!来週くらいに二話を出せたらなと思います。お楽しみに☺