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40.帰り道

 

 状況から見て、マナウ神父がブライトストーンを持ち去ったと考えるのが妥当だろうか。


「こんな大それたことをする奴じゃないんですが……」

 神父は呆然と呟いた。他になにか理由があるのかもしれないし、決めつけるのはまだ早いかな。だけど早々にマナウ神父から聞き取りをしなければならない。彼はどこへ向かったのだろう。


「まだ彼が何かしたと決まったわけではない。だけど話を聞く必要はあるね」

 アレク様はまず報告をしなければならないと、ジーマを連れて早々に王都へ引き返した。マナウ神父を探すにしても人手がいる。王都の騎士を動員して一斉捜索することになるだろう。


 仮にマナウ神父が持ち去ったとすれば、考えられる目的は、レネ様の貢献度への助力……では無いわね。盗み出されたという事実はミング子爵からすぐに伝わるだろうし、レネ様が黙って受け入れることもないだろうし。

 そもそもマナウ神父ってどんな人なんだ? ゲームで名前は知っていても、この現実ではほとんど関わりは無かったのよね。


 ミング子爵領の神父はマナウ神父とは交友関係にあるみたいなので、彼について知っていることを聞いてみた。

 二人はウエストパレス学園の卒業生で、同級生だったらしい。どちらも貴族ではあるものの嫡男ではなく、婚約者も見つけられなかったため出家して神職に就いたそうだ。学生時代からの知り合いで、マナウ神父は控えめな性格だったが、神官となってからは少し活動的になったとか。実家から離れられて肩の力が抜けたのだろう、と。厳しい家の出身なのだろうか。


「マナウの実家ですか? トロアーバ侯爵家ですよ。マナウ・トロアーバ。御存知の通り、100年前の聖女の家系ですね」


 トロアーバ侯爵家といえば……そうだ、究導会の代表として表舞台に出てきたルーベラ・トロアーバの家門。マナウ神父は彼女と親族だということだ。であれば、ブライトストーンは究導会の手に渡った? いや、そんな単純な話ではない気がする。


 考えていても答えは出ないわね。神父から聞けることは一通り聞けたので、予定を早めて王都へ帰ることにした。ミング子爵やモニカ様たちにお礼とお別れを言って、子爵領を発つ。


 ブライトストーンのことは王家に任せましょう。持ち帰ることはできなかったものの、メデューサ討伐もできたし良しとしよう。


 馬車での帰り道、王都近くまで来たとき、またまた馬車が魔物に襲われている場面に遭遇した。もしかしてマナウ神父? と一瞬思ったけれど、普通に商人と護衛の馬車だった。


 魔物はオークが四体。ゴブリンよりも強敵だ。豚のような顔をしていて、脂肪をたっぷり蓄えた体は大抵の攻撃や魔法を弾き返す。護衛の人たちが戦っているが苦戦しているようだ。さらに、馬車の反対側からも新たに四体が現れ、護衛は絶望的な表情になった。


「アイスジャベリン!」


 私の得意技? アイスジャベリンを四連射して、後から来たオークを全員串刺しにてやった。護衛の人たちは唖然として驚いているけれど、よそ見してると危ないよ。そんな護衛たちを襲おうとしていたオークたちは、地面に足を取られ、すてんと転んだ。もちろんマッキー様の魔法だ。おかげでもう一度詠唱する時間を稼げたので、さらにアイスジャベリン四連射をお見舞いする。どうやらあっさり片付いたようね。


 護衛の人たちも商人も大騒ぎだ。

「すげえ! あの分厚いオークを一撃だ!」

「あの連射は究導会の魔術か? しかしジャベリン系の連射なんてできるのか!?」

「助かったよ! あんたすげえ魔法使いだな。さぞかし名のある方なんだろう?」


 皆さんの声援に答えながら馬車を降りて挨拶する。

「私はウエストパレス学園の一生徒に過ぎませんわ。それと、今の魔法は究導会のものではありません。普通の魔法でも上達すればこのようなことはできますわ」

 そう。究導会の魔術など覚えなくてもすごい魔法は使えるんだ、ということも広めていかなくてはならない。そのためには、世間の目を究導会から別の方向へ向けさせるんだ。


「これでもプリンセスロード候補生ですのよ。私の魔法は皆様の安全を守るために、日々尽力しておりますもの」

 おまけにバチコーンとウインクをしてみる。もう彼らはメロメロだ。


「うおお! プリンセスロード候補生に会ったぜ! 一生の自慢だ!」

「究導会の魔術なんかよりずっとスゲェ!」


 手を振って彼らと別れたけど、彼らはずっとこちらに手を振って騒いでいる。そこそこ大きな商会みたいだし、少しでも広まるといいのだけれどね。


「リズリー様があんなことをするなんて、珍しいですね」

 トゥーリ様もマッキー様もびっくりしている。


 なんだろう、ミング子爵領に行ってから、ずっと気分が高揚しているんだ。



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