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第9話 七海争奪杯

登場人物


 七海 女装すると美少女に変身

 委員長 七海のクラスの委員長、メガネ

 山田 クズ

 佐藤 七海のクラスメイト

 加藤 七海のクラスメイト

 田中 七海のクラスメイト




 くそっ、このままでは多数決で強行されてしまう!

 なんとかしなくては……。


 こいつらの一致団結を崩すには、さらに強力かつヤツらにとって魅力的なイベントを用意するしかない!


「ちょっと待った!」俺は声を上げた。


「無駄だ七海! 俺たちの絆は固くその意志は絶対に止めることはできん!」委員長が叫ぶ。


「ここにいる全員が生涯の友であり心の友だと俺は断言できる! そして七海、お前は俺たちの誇りだ! お前という存在がみんなの心を一つにしたんだ! さあ、審判のときは来た!」


「ぐうっ……」


 この状況を打破するにはクラスの連中を互いに仲違いさせるしか方法はない。

 そして、もう手段を選んではいられない。

 今がそのときだ。

 オレはオレを守るため、オレのために戦う!


「次の期末テストでオレより成績が良かったヤツには個人的に女装してやる! その代わり多数決は中止だ!」


 俺の提案に教室がざわつき始める。


「七海より成績が良かったら……」

「七海の学年順位って常に一桁だろ?」

「このクラスで七海より成績が良いヤツなんていないよな……」


 くっ、ダメか……。

 やはりこの条件では釣り合わないのか……。


「ふはは、無駄な足掻きは止めるんだ」委員長は勝ち誇った。


 オレは最後の力を振り絞って声を荒げる。

「それから女装したままなんでも一つだけ言うことを聞いてやる!」


 しん、と静まり帰る教室。


 誰もが言葉を失った。


 やはり静寂を切り裂いたのは、委員長だった。


「いいか、みんな……聞いてくれ。俺たちは仲間だ。そして友だ。友とは時として好敵手とも書く。友はライバルでもあるという意味だ。みんな、互いに切磋琢磨してこそ本物の友達だよな?」


「学年順位が常に下から数えて一桁の委員長があそこまで男らしく……」

 山田の目尻から、ほろりと一粒の涙が零れ落ちた。


「お前ら! 俺たちも負けていられないぜ! 委員長と山田に続け!」佐藤が言った。

「ああ、そうだ!」田中が続く。

「誰が勝っても恨みっこなしだ!」加藤も続く。

「よっし、こうしちゃいられねぇ! 帰って試験対策だ!」

「うおぉおおおおおおっ!」


 かくして七海争奪杯が幕を上げた。


 このとき、オレはまだ疑いもしなかった。

 自分が負けるなんて、オレより成績が良いヤツがこのクラスに現れるなんてことを――。


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