第七話 鳴かない蛙
お母さんお父さん。
いや。母上、父上。
申し訳ございません。
俺は。俺は、
蛙に変えられました。
しかも鳴かない蛙です。
そなたら煩い暫くおとなしくしておれ。
だそうです。
自分では気づいていませんでしたが、俺はギャーギャーギャーギャー叫んでいたそうです。
はは。
通りで喉が痛いなーって思っていたんですよ。
嘘です。
逃げる事と竹職人と魔女の声の聞こえない振りに必死で他の感覚は遮断していたので感じていませんでした。
はは。
情けない話です。
この国で一番強い剣士、あの方に憧れて、俺も何とかかんとか剣士になれたっていうのに。
かあ、母上と父上にあんなに。あんなに応援してもらったのに。
行き着いた先は、蛙。
最初は下っ端でも、最終的には中盤になるはずだったのに。
蛙。
しかも鳴かない蛙。
あなたに憧れて剣士になりました。
そう、少し。少しでも胸を張って、あの方の前に立って、そう言える日を夢見ていたのに。
蛙。
いえ。蛙を否定しているわけではありません。
蛙も素晴らしい生き物です。
いえ。絶滅危惧種って事しか知りませんけど。
あとは、げこげことの鳴き声と、虫が大好物。虫。お虫だったかな。お花だったかな。お葉だったかな。お魚だったかな。それとも何も食べないで呼吸するだけで生きていけたのかなどうだったかなどうだったでしょう。
「おい、原符。こやつ、大丈夫か?」
「………」
「おいこら何を黙ってんだ返事くらいしろ」
「………」
「あ。そうであった。われが黙らせておったんだった」
「………」
(2022.9.28)