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第六話 メルヘンチック



 

 背中が、身体が重い気がする。

 いつもはもう少し軽やかに動けているはずなのに。

 しかも、背中が温かい、いや、暑い、気がする。

 耳元で生暖かい風が生易しく吹いて、呟き声も聞こえる気がする。

 気がするだけ。

 気のせい。


 竹葉は前だけを向いて走った。ひた走った。目指すべき場所はない。ただひたすらに逃げるのみだった。


「よしそのまま逃げろ魔女に捕まるな」


 あーあーあー、聞こえない何も聞こえない聞こえなければいいのだ。


「っつーかさあ。こんな幼子を殴るか?お空まで殴り飛ばすか?わしだったから華麗にあんたの背中にくっついて無事に生還できたわけだけど、他の幼子だったら最悪な結果になってたからね。まあその前に魔女が助けただろうけどさあ」


 あーあーあー、聞こえない何も聞こえない聞こえなければいいのだ。


「つーかさああ。怒ってる?ねえ、魔女、怒ってたよね?わしが若返ったから怒ったのかな怒ったのかねどうなのかね?幼馴染がぴっちぴちの若者になったから羨ましくて怒ったのかね?それとも竹職人じゃなくなったから怒ったのかね?ねーねー」


 あーあーあー、聞こえない何も聞こえない聞こえなければいいのだ。


「つーかさあああ。やばいよね理由がどうであれ魔女めっちゃ怒ってるよね土下座しても赦してもらえないくらい怒ってるよねあれかね魔法で蛙に変えられちゃうかね人間辞めさせられちゃうかねでも蛙って今絶滅危惧種に認定されてるんだっけだったら手厚く保護されて人間だった時より幸せな生活を過ごせるのかねえっそれはそれで幸せな生き方って言えるのかねねえねえ」


 あーあーあー、聞こえない何も聞こえない聞こえなければいいのだ。


「あーでもでも魔女の事だから蛙に変えられたら、何か実験に絶対使われるよ何だっけ蛙の脂汗だっけ薬に使えるんだっけ魔法に使えるんだっけそう言えば竜を召喚する時に使うって聞いた事がないようなあるようなそう言えば脂汗じゃなくて蛙そのものだったっけ蛙が生贄に使われまくったから絶滅危惧種に認定されたんだっけだから魔女は人間を蛙に変えるようになったんだっけ?」


 あーあーあー、聞こえない何も聞こえない聞こえなければいいのだ。


「違うわばかたれ。竜を召喚する時に使うのは薔薇だわ」


 やったメルヘンチック万歳。

 あ。











(2022.9.27)


 

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