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第四十四話 剣と鞘
『魔女から話は聞いている。竹職人と剣士の二足の草鞋を目指すそうだな』
声が響く。
あの方の声が。
『俺は受け止める。必ず』
あの方は必ず受け止める。
魂とも言える剣で。
避けない。
退かない。
受け流さない。
前からも後ろからも上からも下からも予想だにしない方向からでも。
真正面に身体を向けて受け止める。
真正面から相手の目を見る。
人間でも人間じゃなくても違わない。
相手がその拳を、その力を下ろすまで。
暑苦しい。
時間の無駄だ。
効率的に事を収めるべきだ。
揶揄や叱咤の声もあるが。
俺はあの方に釘付けになった。
憧れになった。
剣士になりたいと思った。
『竹職人と剣士の二足の草鞋を目指すそうだな』
「ああ、ごめんな。ごめん。存在を忘れていたわけじゃないんだ」
腰に佩いていた剣に触れて、落下時の風圧に弄ばれて苦心しながらも、鞘から抜いて、片手に剣を、片手に鞘を持って、両腕を大きく広げて、笑った。
さあ来いよと。
笑ったのだ。
(2023.4.5)




