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第三十五話 忍




「おい」

「あ、来た」

「あ、来た。ではなかろう」


 高い木の枝の上から上へと音も立てずに移動し竹葉を追っていた国王は、突然魔女が姿を見せたので一時動きを止めた。

 魔女は国王の肩に留まり、一度だけ翼で頬を打った。

 軽く、ともすれば若葉で撫でられた程度の感触であったが、国王は逆にとてつもない衝撃を受けて、思わず頬を押さえ、ひえっと言っていた。


「そなたのへその横に刻んだ痣を忘れてはおらなんだな」

「私の位置をおまえに知らせる痣を忘れるわけがないだろう」

「では、あのような置手紙でわれが捜さぬと思ったのか?」

「探さないでほしいと思った」

「なにゆえ?」

「おまえはもし私が殺されようとしたら助けるだろう。だから」

「ああ。助ける。そなたは国王だ。われが守護すると決めた国王ゆえ助ける」

「………」

「しかし、そなたはわれの手をそうそう必要とせぬ。忍の性ゆえか。強さも厄介じゃな。独りですべてを考え、なそうとする。まさか竜巻を回避する道具も置いていくとは」

「すまない」

「謝るのであれば、最初からわれを連れて行くべきであったな」

「私を連れて帰るのか?」

「そうであればわざわざ来ずとも城にさっさと連れ戻すわ」

「ではもし。もしも原符が私を殺そうとしても手を出さずに見届けてくれるのか?」

「わかりきっている答えをまだ訊くか?」

「………おまえの動きを封じるのは骨が折れるのだがな」

「久方ぶりにひと暴れするのもよかろう」

「莫迦言うな」

「先に莫迦を言ったそなたに言われたくはない」

「………ではこのまま竹葉を追う。いいな」

「よいが。その前にわれがついているゆえ心配するなと伝えて来よう。見よ。あの挙動不審っぷりを。笑えるが同時に不憫でならぬ」

「………あの者にはすまないことをした」

「褒美をたんとくれてやれ」


 すべてが終わった時にでもな。











(2022.10.16)



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