第三十一話 錯乱
ちょっと待って!
ちょっと待って!!
ちょっと待って!!!
あれってあの方って。
国王じゃないの!?
ちょっと待って!
ちょっと待って!!
ちょっと待って!!!
え?本当に国王?国王かな?
国王見たのってえっと確か剣士の任命式にちらっと遠くからいやいや任命書を一人一人に手渡していたからって言われて演壇に登って国王の前に立ったよね近距離からバッチシ見たよね確かちゃんと顔を見たいから顔を上げてくれ目をきちんと見てくれって言われて見たもんね見たのはその時一回だけだったけどどうしてか脳に焼きついているものねバッチシ覚えているものね!!!
いや。
いやいやいやいやいや。
なんでなんでなんで国王が空から落っこちて来てんの!?
あれですかこれですか花の竜巻に吹き上げられてしまったのですか魔女の道具は使わなかったんですか失くしちゃったんですかそれとも国王だから大丈夫だって思っちゃったんですか自分の足で歩きたいお年頃になっちゃったんですか!?
そもそももそもそ!!!
護衛の剣士はいずこ!?
下っ端だからかな下っ端だからだよね気配を掴めないのはここから颯爽と現れて国王を助けるんだよねもしくは魔女が現れて禍々しく国王を助けるのかなそうだよねきっとそうだよ誰かそうだと言って!!!
そもそももそもそ!!!
もしかしてもしかしてだけど国王が助けなくていいですって言ってるから助けないとか国王の命令が第一ですか国王が大怪我を負ってももしくは死んじゃったとしても国王の命令が第一ですかそうですかそうなんですかじゃあ俺もそれに倣った方がいいんですか下っ端でも剣士ですし!!!
もしくはもしくは!!!
国王が颯爽と降り立つのかな顔から地面に向かって直立不動で落ちて来ているけれどくるりと縦回転して地面に足を向けて何とかかんとかして華麗に降り立つんですかねそれとも木々を利用して衝撃をやわらげながら降り立つんですかねきっとそうですねだって助けなくていいですって言うくらいですもんね自分でどうにかなさるんでしょうねまだ地面と顔がこんにちわしそうな体勢ですけれども!!!
(2022.10.3)




