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第二十八話 国王
『なあ、魔女』
数十年前の。
前王を倒したそなたは、そなたの勇ましい心はどこへ行ったのであろうな。
完全に失くしてしまったのであろうか。
それとも、深くふかく内へ隠れてしまったのであろうか。
『魔女よ。私は怖い』
『怖いのだ』
『私は、前王のように』
『罪、なき者たちを』
『早く。竹の刃を。竹の刃で早くあれを。すべての元凶を壊さなければ』
『魔女よ。早く。竹職人に。原符に創らせるのだ。早く。多く』
『けれど。竹職人は。竹職人は原符だけで、いい。原符だけで』
『いや。原符だけでは。だめ、だが。多く存在しても。多く存在してしまえば。私が。いいや。それも運命。必然。か』
「まったく。何を考えておるのか」
わのいしの国の城の国王の執務室にて。
魔女は机に置いてあった手紙を読んでは、花の竜巻に隠されて見えない森へと視線を向けた。
「探さないでください、と書かれてもな」
まさか位置は把握されていることを忘れているわけでもあるまいに。
(2022.10.12)




