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第十七話 すすす葉




「ざ、さがぞう」


 王都に戻って天勝に土下座をするか、秘密の竹林を探し出すか。

 悩みに悩んで悩み抜いた竹葉は、喉も足も腕も腹もぼろぼろになった頃に決意。

 息を大きく吸って、息を大きく吐いて。

 ぐぎゅるるるるると、盛大な空腹音を出して。

 世界を緩やかに溶かしてしまう夕陽に向かって歩き出した。


 まずは腹ごしらえだ。

 暗くなる前に明かり苔を飛び提灯に入れて周囲を見渡せるようにしてから、嗅覚を最大限に開いた。

 息を大きく吸って、留めて、息を大きく吸って、息を大きく吐いて。

 あれこれもう空気だけでお腹いっぱいじゃない。と。

 脳が錯覚するくらいに繰り返して。

 薄目にしていた目をかっぴらいては、匂いがする方向へと歩き出した。

 空腹と疲労で走り出す気力は、なかった。


「み、みづげだ」


 すすす葉だ。

 緑と白の三つ編み葉で、味が少し苦くて辛くて口の中がスース―するのだが、一枚食べるだけで腹は膨れるので、緊急食として重宝されている。

 竹葉は初めて食べた時から毛嫌いしていたが、贅沢は言ってはいられないと一枚引っ張り抜いて口の中に放り込み、無心で味覚を閉ざしてもぐもぐと噛み続け、目を瞑って気合を入れて飲み込み、ぽんと腹が膨らんでへこむと同時に地面に仰向けになった。


 少し、ほんの少しだけ、休息を取る為に目を閉じた。

 途端、羞恥心が再来してごろごろどこまでも転げ回りたくなったが、ぐっと堪えて直寝不動を貫いた。











(2022.10.5)




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