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第十五話 宣言




 恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい。

 顔から火が出た竹葉はしかし走り続けて行く中で、羞恥とは別の感情が生まれ始めた。

 このまま立ち去りたくないという剣士としての意地。

 あの方に情けない姿を見せただけでは嫌だ。

 もしかしたら、最初で最後の対面かもしれないのに。


 竹葉は意を決し、回れ右をして元来た道を駆け走って行った。


 どうか、どうか、まだいてくださいと願いながら。

 頭がぐちゃぐちゃで、言うべきことなんかまるでまとまらないけれど。

 何を一言目に言うのかさえ考えつかないけれど。

 もしかしたら、結局は情けない姿をさらすだけで終わるのかもしれなくても。

 

 竹葉は泣きそうな自分を、唇と瞼だけが小刻みに震える自分を、心底情けないと思いながら、先程飛ばす勢いで押した扉を飛ばす勢いで引き、天勝を視認するや否や。


「俺はいつか必ず貴方の竹笛を奪いに来るので待っていてください!!!」


 これっきり。

 もうこれっきりですと言わんばかりの威厳ある顔で伝えては直立不動になって。

 即座に心中で首をひねった。

 あれちがくね、と。

 俺はいつか必ず貴方の前に堂々と立てる剣士にもなりますし、貴方の竹笛を直せる竹職人にもなります。

 でしょ言うなら。

 何よ奪いに来るって何よ。


 スンっと冷たい空気を鼻の中に小さく取り入れて。

 訂正しようと全身全心に命じて。

 土下座をしようと、謝罪をしようと動いた身体はしかし、動けないまま。

 ここに来た時同様に、眼前に白と黒の縦糸が出現したのち。

 景色が一変した。

 森の中へと戻っていたのだ。


「いいいいいやあああああぁぁぁ!!!」


 全身全霊を懸けて血の涙を流し、絶叫した竹葉には届かなかった。


 粛然とした態度で応えた天勝の言葉を。









(2022.10.4)


 

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