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第十三話 じゃぼん岩





 念ずれば道は拓かれる。

 念ずれば秘密の竹林へと行ける。


 竹葉は森の中を走った。


 時には、まだらにしか立っていない木々の中を腕を大きく振りながら。

 時には、入り乱れる木々の中を縫いながら。

 時には、長く細く浅い蛇行川や点在する小さくとも深そうな泉を跳びながら。

 時には、三角や四角、五角、六角形の形で水玉模様のじゃぼん岩(触ると岩と共生している苔羽に違う場所に飛ばされる)に触れないように細心の注意を払いながら。

 時には意味不明に暗く、意味不明に明るい場所を通りながら。

 走って、走って、走りながら。


 ふと、或る事を思い出した。

 剣士専用寮の同室のあいつが言っていた事を。

 希少な七角形のじゃぼん岩に触れたら、今自分が望む場所へと飛ばしてくれる、と。


 竹葉は探した。

 七角形のじゃぼん岩を。

 血眼になって探し続けた。

 秘密の竹林、七角形のじゃぼん岩と叫びながら探し続けた。

 昨日からこっち喉を酷使しているなと思いながら探し続けた。

 剣士は体力筋力胆力喉力が大事だと先輩が言っていたなと思いながら探し続けた。

 

 結果。


 奇跡が起きた。

 見つかったのだ。

 七角形のじゃぼん岩が。


(ひ、日頃の行いがいいからな)


 竹葉はうそぶきながら鼻の下を親指で擦り、一切の躊躇なく七角形のじゃぼん岩に触れた。

 途端。

 細長い楕円形で、薄紫色の透き通るような四枚の羽がじゃぼん岩から生えて来たかと思えば、瞬く間にふわふわの深緑色の苔がじゃぼん岩に生い茂った。

 竹葉がきれいだなあと思いつつ、苔がじゃぼん岩に触れていた指にまで這い上がってきたので、咄嗟に手を後ろに引けば。

 眼前に白と黒の縦糸が出現、したのち。

 景色が一変した。

 

 竹葉はあごが外れそうになった。

 秘密の竹林へと無事に辿り着けたから、ではない。


「貴様は」


 憧れの君に剣先を向けられている状況だったからだ。












(2022.10.3)



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