はじまりのチャイム
衝動的に思いついた設定で書き始めます。がんばります。
20XX年12月某日。
■■高校1年2組の担任教師を含めた生徒全員が突如、姿を消した―――
―――ただし、私を除いて。
私の学校では学校生活を手助けしてくれるAIの搭載されたカード型端末「ヘルプカードくん」を生徒一人につき一台持たされる。
任意に設定したマスコットキャラクターがMR映像で宙に浮かび上がり「今日の宿題は数学ですよ~」なんて話しかけてきたりするのだ。他にもカメラ機能など色々な機能が搭載されているが、基本的に自宅に持ち帰らない規則であり、それを利用して自分の所持している個人PCやスマホとヘルプカードくんと連携して自宅に居ながら授業を受けることも可能である。とは言うものの、基本は学校に登校して対面で授業を聞くので基本的にこの機能は体調を崩して自宅で授業を流し聞きしたいときや、休み時間にクラスの子とお喋りするとき用の機能になっている。
休みの子の席に置いてあるヘルプカードくんは人気で、休みの子が出るとみんな集まってきてお喋りしだすのが私は結構好きだった。逆に自分が休みで気弱になっていたときもクラスの子がわいわい集まってお喋りしてくれて嬉しく思っていた。
さて、本題に戻ろうと思う。
その日、私は熱が出たので学校をお休みした。すぐ病院で診てもらったが、そんなに酷い状態ではなかったので母は私が一日過ごしやすいように準備をしてから遅れて会社へ向かった。
「辛くなったらすぐ連絡ちょうだいね。そしたらすぐに帰ってくるから。」
「全然大丈夫だけど、了解した!いってらっしゃ~い」
私はヒラヒラと手を振ってベッドに潜り込み、サイドテーブルに置いたPCとヘルプカードくんを接続した。
私のヘルプカードくんはふわふわのポメラニアンをデフォルメしてほぼ毛玉みたいな状態のキャラクターを設定してある。常に舌をしまい忘れてまぬけに見える顔が可愛くて憎めない。
私は「ポメ」と呼んでいる。
私の机にポメが出てきたので周りの席の子達の視線を感じた。ゴロゴロしながら授業を聞き流して、休み時間になると待ってました!とばかりに友達が私の机に集まって来る。
みんなが見やすいようにヘルプカードくん、もとい、うちのポメを持ち上げてくれたのは右隣の席の東條くんだ。彼は目立つタイプではなく、どちらかと言うと地味な方の男の子だけど、意外と背が高い。そして、とても優しい人だというのを私は知っている。彼は結構気さくな人でもあるので隣の席ということもあり、ちょっとしたタイミングでよくお喋りしているのだ。
傍から見るとポメが喋っているようにしか見えないが、ポメと化した私は感謝した。
「東條くん、ありがとう。そのくらいの高さでちょうどいいよ」
「そう?良かった。体調大丈夫?」
東條くんと私が話し出すと周りの子も一斉に話し出す。
「朝居なくてびっくりした~!」
「熱なんだって?」
「来たらノート貸してあげるよ~!ジュース奢りで!」
「えー!ずる!私のノートも写していいよ!ジュース奢りで!」
「お前らタダで見せてやれよ。病人だぞ」
「あ、俺もさっきの授業のノート見たいんだが」
「お前寝てただろ!自業自得だわ」
わいわいキャイキャイ。もはや私が発言する隙を失ったし、周りに集まっているだけでそれぞれ仲がいいグループでの話になっている。まぁ、そんなもんでしょうね。でもこういう空気は好きなので許す。復帰したら駄菓子屋に売ってるような水に溶かして飲む粉ジュースでも持って行こうっと。
とりあえず、私が話すのを待ってくれているっぽい空気を出している東條くんといつも一緒に居る友達に向かって「大した熱じゃなかったし、薬も貰ってきたから熱も下がってきた……」と言ったところで先生が教室に入ってくる。次は公民の授業でこのクラスの担任でもある河海先生はいつもチャイムが鳴る時間ピッタリに教室の教壇にたどり着くようにやってくる。
キーンコーンカーンコーン……
いつものように河海先生がタイミングよく教壇に立ち、チャイムが鳴ったところで教室の床が激しく光りだした!教室内が一斉に騒がしくなる。
「えっ!」
「な、なにこれ」
「まぶし!」
「なんなんだよこれ!」
「床にこんな機能が……!?」
「はわわ~!」
「フッ……集団転移ですか、なるほど」
「おいおい、さすがにそれはラノベの読みすぎだろ」
「えぇ……」
「ッ俺が最強だ!」
東條くんは呆然としていたけど、ふと、ポメ(わたし)と目が合うと床が見えるようにしてくれた。東條くんは気遣いの鬼だね。ほんとに助かる。床を見ると眩しいけど魔法陣のようなものが見えた。でもそれは一瞬だけ。
何故なら私が床の方を見てすぐに目の前が真っ暗になったのだから。
そして、冒頭に戻る。
・東條 勇人くん
右隣の席の人。おだやかで気遣いの鬼。
クラスの中で1番背が高い。
・河海 環先生
担任の先生。公民担当でチャイムと同時に教壇に立つプロ中のプロ。