第8話 悪夢
すいません。昨日の22時に投稿する予定と言っていましたが、急な用事が入ってしまったため、投稿できませんでした。
今日、できれば、22時に投稿するかもしれません。
剣聖杯の優勝者は、カインズ子爵家長男、近衛騎士団所属のルーノ・カインズに決まったのだが、ルーノの剣が壊れかけであることや激闘での疲労もあるだろうというオルトレアの判断により、ルフィリオンとの決闘は、明日へと延期となった。
ルフィリオン本人も「いつでもいい」と言っていたので、問題はないだろう。
観客もオルトリアの言葉に賛同していたので、満場一致の判断という訳だった。
これにより、国民のオルトリアの支持率が上がったのだが・・・当の本人は気づいていない。
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『今日も元気に解説するぞぉ!』
解説役の言葉を聞いて、「私にも役目をください・・・」と控室で泣いている本来の司会役がいるのだが、まぁそれは置いておこう。
『さぁさぁ!本日の出場選手カモーン!』
解説役の言葉により、両側から選手が現れる。
『右から出てきたのは、今大会優勝者!初代剣聖杯覇者の~!『若き魔剣士』!ルーノ・カインズ選手だぁぁっ!みんなも知っての通りぃ!決勝戦で見たその実力はピカイチ!このファラン王国でも10本指に入ると言っても過言ではない気がするぞぉ!』
颯爽と現れるルーノは、新たな剣を腰に下げ、周りに向かって手を振る。
今回は女性だけではなく、男性も観客全員が歓声をあげた。
『そしてそしてぇ!左から出てきたのはぁ!魔王討伐の勇者パーティー所属!圧倒的美貌!圧倒的実力!自分に勝った者に嫁入りすると言った豪胆さ!今大会の超目玉!『至高の剣聖』!ルフィリオン選手ぅぅ!』
ルフィリオンはルーノのようにファンサービスすることなく、周りを見ることなく、舞台に向かう。
だが緊張しているわけではなく、その様子は完全にリラックスしているように見えた。
「今日もハイテンションだな・・・」
「はい、ギアアップしてますね・・・」
昨日、解説役にスカウトを送ったのだが、誰が解説をしているのかわからず、スカウトできなかったのである。
非常に謎だ。
『さぁ!これでルーノ選手が勝てば・・・なんと!ルフィリオン選手と結婚となります!ルーノ選手!お気持ちをどうぞ!』
『あ・・・あぁ、これ魔法で拡声してるのかい?すごいな・・・では、一言。ルフィリオン様、女性であろうと、私は本気で行きますので、手加減なしでお願いいたします。』
遠くにいる他人の声を拾って拡声するのをさらっとやり遂げている解説役だが、かなりの高等技術である。
自分の声ならともかく、他人のそれも観客席から中央の舞台まで離れている人物の声を拡声するのは難易度が跳ね上がるのだ。
『では!ルフィリオン選手!一言どうぞ!』
『・・・本気出していいの?』
『構いません。』
今度は遠くにいる2人の声をほぼ同時に拡声している。
もちろん、途中で切り替えた可能性もあるが、それでも凄まじい魔法技術だった。
『さぁ、両選手ともに意気込みは十分かぁ!それでは、剣聖杯エキシビションマッチ!レディー・・・ファイトォ!』
試合が始まった。
その瞬間、キンッという音が鳴る。
音が鳴った直後にはもう決着はついていた。
シンと静寂が響く中、いつの間にか空中に飛んでいたルーノの剣がルーノの後ろでグサッと地面に刺さる。
その音で正気を取り戻した解説役は、ルフィリオンの剣がルーノの首筋に突き付けられている姿を目視した。
『へ・・・な、なんと決着ぅぅぅっ!たった一瞬!すいません!私、見えませんでしたぁ!』
謎の実力者、解説役さんも、さすがにルフィリオンの動きは見えなかったらしい。
代わりに説明をしよう。
ルフィリオンは開始の合図と同時に身体強化魔法を発動。
化け物じみた魔力により強化されたルフィリオンは、一瞬でルーノの懐に潜り込むと、ルーノが持っていた剣を上へと弾き飛ばし、剣を突き付けた。
ただそれだけの話である。
勇者や魔王と身体能力が互角の時点でよくよく考えてほしい。
身体強化を使える化け物達の速度は、どれくらいかということを。
答えは音速と同等、あるいはそれ以上だ。
『ルーノ選手には申し訳ありませんが・・・ルフィリオン選手、別格!まさしく別次元の実力です!流石、魔王を討伐した勇者パーティーの1人!これで勇者でないなら、勇者の実力はどれほどなのでしょうか!』
解説役の言葉に、観戦に来ていたアルバは冷や汗をかいて、「いやいやいや!」と高速で首を横に振っている。
それをエルカーナやフィルミルが苦笑いで見ているのだった。
『あれ・・・?でもそれなら、勇者様が大会とルフィリオン様が結婚すればいいのでは・・・?』
解説役は、気づいてはいけないことに気づいてしまった。
アルバは慌てて、解説役の話に介入した。
『あーあー。割込み失礼するよ。僕の名前はアルバ・アーカイン。勇者だよ。』
『わっ!?さすが、勇者様!私の妨害を突破するとはやりますね!』
解説役の言葉に、アルバは肩を落とす。
拡声のための風魔法がやけに使いづらかったのはそのせいだったのか・・・と。
『通りで・・・使いづらいわけだよ・・・ってそれはともかく、リオ・・・ルフィリオンさんは僕より強いですからね!勇者である僕は魔王に対してのみは特効だったというだけで!単純な戦闘力で言えば、僕より上です!』
『な、なんとぉ!勇者様本人からのお墨付き!『至高の剣聖』ルフィリオン様は勇者よりも強い!つまり、王国最強、いや世界最強という訳だぁぁっ!』
わぁぁぁぁっ!!と今までで一番大きな歓声が上がる。
アルバの発言はもちろん、ようやく観客達がルフィリオンの勝利を理解し始めたということのもあってのことだ。
『まさかまさかの!優勝者ですら手も足も出ない圧倒的な実力!ルフィリオン選手に敵う者はいるのかぁぁ!これは第2回剣聖杯が楽しみだぞぉ!』
解説の言葉に特等席の重鎮達が「やめてぇ!書類仕事はもう嫌だぁ!」とか「第2回か・・・何回まで続くんだろうな・・・あはは・・・」とか叫んだり呆然としていたりと混沌と化しているのだが・・・誰も気づいていない。
今後、複数回剣聖杯が続くのだが、それを観戦したある人物が、この大会に参加し、ある波乱を巻き起こすことを・・・まだ誰も知る由もなかった。
いかがでしょうか。
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