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第7話 剣聖杯決勝

「はぁぁっ!」


「うぉぉっ!」


 ルーノの剣とラーゼンの拳。

 普通なら、拳の負けだが、それは魔法がなかった場合だ。

 身体強化魔法。

 人類が無詠唱で発動できる数少ない魔法。

 魔力を体に巡らせることで、身体そのものを強化する。

 達人クラスにもなれば、その一撃で鉄すら粉砕する。

 ラーゼンは鉄と互角、そのレベルまで身体強化魔法を高めていた。

 だから、ルーノと戦えているのである。


『ルーノ選手!剣という長い間合いを持っているが、ラーゼン選手の人より大きな体のせいで、そのリーチはあまり差がありません!それに、ラーゼン選手は剣とぶつかり合える程の身体強化魔法!今まで、他の選手の攻撃を避けながら、叩き潰していたため、ここまでとは思っていませんでした!両選手、決め手に欠けて互角!ですが、両選手ともにここまで勝ち進んできた強者!奥の手を持っていてもおかしくは・・・ないっ!つまり、奥の手が勝利の鍵を握ります!』


「分かりやすいな・・・この解説。」


「そうですねぇ、陛下。」


 激熱する戦いに対し、非常にほのぼのとしている特等席。

 解説のおかげで、盛り上がっていく会場に、遠い目をしている。

 ルーノもラーゼンも全力で身体強化を行い、動いているため、その速度は、かなり速い。

 戦いというものに触れてこなかった人では、ほとんど見えないだろう。

 全部がブレて見えるはずだ。

 だが、それでも飽きずに見れるのは、この勝手に解説している解説役のおかげである。


「はぁっ・・・はぁっ・・・やるじゃないか。」


「そっちこそ・・・坊ちゃんだと思って侮ってたぜ。」


 お互い疲労が蓄積し始め、肩で息をしている。

 あともう数分。

 それが2人の限界だろう。


「近衛兵は実力重視。その中でも期待されている私は負けられないのだよ!」


「俺も負けられねぇ!賞金が必要だからな!」


 お互い、理由はそれぞれだが、負けられないことは変わりない。


「ふむ、このまま戦っても平行線か・・・次の一撃で決着をつけようじゃないか、ラーゼン。」


「いいぜ!俺がお前の剣を折ったら俺の勝ち!お前が俺の拳を斬ったらお前の勝ちだ!」


「よかろう!」


 お互い、バッと数メートル程離れて、構える。

 次の一撃に自分の全力を込めるために。


「おぉぉぉぉぉっ!」


 ラーゼンが雄たけびを上げると、徐々に徐々にラーゼンの体が赤くなりはじめる。

 まるで赤熱してるかのような状態だ。


「はぁぁぁぁぁっ!」


 ルーノの方も声を絞り出すと、徐々に徐々に剣の周りに青白い靄が発生し始める。

 まるで冷却しているかのような状態だ。


『おーっと!両選手、次の一撃に全てをかけるつもりのようだぁ!ラーゼン選手は、身体強化魔法をオーバーヒートさせることで、一時的に限界を超える過剰限界!ルーノ選手は、魔法を剣にまとわせることで威力を上げる魔法剣!さぁ、お互いに奥の手を出してきたぁっ!』


 この解説は詳しすぎないだろうか。

 魔法剣はそれなりに有名だが、過剰限界は一部の人しか知らない秘儀である。

 だが、そんなことを知らなくとも、2人の様子を見れば、何か凄まじいことをしようとしているのが分かる。


「行くぜっ!」


「来いっ!」


 お互いは準備は万端。

 あとは、一撃を放つのみ。


「『越拳』!」


「『氷魔剣』!」


 同時にお互いに向かって飛び出した2人。

 ルーノはラーゼンに向かって、剣を振り下ろし、ラーゼンはルーノに向かって、拳を突き出す。

 お互いの剣と拳はぶつかり合うと、衝撃波と水蒸気を発した。

 観客達はあまりの衝撃に叫び声を上げながら、身を守る。

 もちろん、魔法により直接的な被害は防がれているのだが、軽い衝撃波や水蒸気程度なら通してしまう。


『両者激突ぅぅぅっ!』


 そんな中、目を開いていれたのは、完成している勇者達と、魔法でより厳重に防御されていた特等席の重鎮、そして、本選に参加するクラスの強者と解説役のみだった。

 これであっさりと解説役の人が本選に参加するレベル以上であることが証明されてしまった。


『さぁ、決着は・・・決着はどうなったぁ!えぇーい!水蒸気よ!晴れろ!』


 解説役の掛け声とともに、微風が吹き、闘技場にある水蒸気をそっと押し流す。

 明らかに解説役の仕業である。

 そして、水蒸気が晴れ、見えたのは、氷ついて倒れ伏したラーゼンの姿と、ひびの入った剣を持って立っているルーノの姿だ。


『試合終了ぉぉっ!栄えある第1回剣聖杯の勝者は・・・近衛騎士の若き天才剣士!ルーノ・カインズ選手だぁぁっ!』


「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」」」


 解説役の言葉と同時に、観客が一斉に歓声をあげる。

 舞台の上にいるルーノは倒れているラーゼンに声をかけた。


「へへ・・・おめでとうだな、ルーノ。」


「あぁ・・・紙一重だった。強かったよ、ラーゼン。」


 ルーノが倒れているラーゼンに手を伸ばす。

 ラーゼンは笑いながら立つと、握手をした。


『決勝に相応しい激闘でした!両選手に盛大な拍手をお願いします!』


 わぁぁぁっ!と盛大な拍手と歓声が2人に降り注ぐ。

 こうして、第1回剣聖杯の決勝は終了した。

 そして、最後にルフィリオンとの決闘があるのだが・・・これはのちに『悪夢』と呼ばれるようになる。

今日の22時にもう1話投稿します。

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