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第5話 王への願い

 拍手はしばらく続き、収まった後も謁見は続いた。


「さて・・・勇者達の願いは聞いた。それでは不公平だろう。我が騎士ガランよ。願いを言うがよい。遠慮はいらぬ。」


「はっ!では、国王陛下。私は・・・妻と過ごすための避暑地、穏やかに過ごせる場所を望みます。」


 ガランは既に30歳を越える。

 子供はいないが、愛する妻は存在していた。

 だからこそ、ガランはいつも自分を手伝ってくれている妻を報いるために、王への願いを使うのだった。


「ふむ・・・よかろう。余が持つ別荘の内の1つをガランお主に与えよう。管理は今まで通り、王家の使用人に任せる。好きな時に訪れ、休暇を楽しむがよい。」


「感謝いたします!」


 ガランは大きく感謝する。

 これにより、ガランは王への忠誠心をより強くするのだった。


「さて・・・最後に、ルフィリオン殿。そなたはエルフであるな?」


「エルフじゃなくて、ハイエルフ。」


「なんと!?ハイエルフとな!?」


 ルフィリオンは途中からアルバ達と合流している。

 そのため、オルトレアはルフィリオンの詳しい情報を知らなかったのだ。

 名前などの情報は調べさせたので知っていたが、ハイエルフであるかどうかは見た目だけは分からないので分からないのも仕方のないことだった。


「ごほん・・・ではルフィリオン殿。何か願いはあるか?」


「私は婿が欲しい。私よりも強い人で。」


「ぬ・・・それは勇者であるアルバということか?」


 既に元公爵令嬢と王女が嫁ぐ予定の人物に、ハイエルフという非常に貴重な種族を婚約させるとなると厳しい、とオルトレアは思った。

 が、その考えは杞憂である。


「違う。私はアルバより強い。」


 その一言で、貴族達が今まで一番ざわめきだす。

 魔王を討伐した勇者より強いという発言は、許されないという考えが強かったのである。


「静まれ!・・・アルバよ。ルフィリオン殿が言っていることは本当か?」


「はい、国王陛下。ここにいる誰よりも、ルフィリオン殿は強いと思います。」


「なんと・・・」


「国王陛下、失礼を承知で私にも発言の許可を。」


 驚いているオルトレアに、ガランが声をかける。


「許可する。」


「ルフィリオン殿がいなければ、我々は今ここにはいないでしょう。トドメを刺したのは勇者であるアルバ殿です。ですが、アルバ殿の一撃を誘導し、魔王を抑え込んだのは、ルフィリオン殿です。その実力は・・・悔しいですが、盾ありの私でも数合ともちません。」


 もちろん、他の仲間の手助けもあってこそだが、魔王と互角に戦えていたのは、ルフィリオンだけなのも事実である。


「それほどか・・・」


「はい。」


「相分かった。」


 オルトレアはガランとアルバの意見を聞いて頭を悩ませる。

 勇者以上の実力の持ち主を野に放つわけにはいかない。

 エルフが住むという森に戻ってくれるなら、そう問題にはならないだろう。

 だが、夫として強者を求めるということは、他国を渡り歩く可能性が高いということだ。

 オルトレアは、少しの間、考え、とりあえずの案を出すことにした。


「・・・ならば、こうしよう。ファラン王国でトーナメントを開こう。強者を集め、予選、本選を行い、優勝した者とルフィリオン殿が戦っていただく。これでどうだろう。」


 オルトレアにとっては一石二鳥のような案だった。

 これでもし、ルフィリオンに勝つような者が現れれば、その者を自国で雇ってしまえばよい。

 ルフィリオンをこの国に留める理由にもなり、さらなる強者をファラン王国が手にすることもできる。

 もし、在野にいる強者がいれば、それもスカウトできる。


「分かりました。」


 コクッとうなずくルフィリオンを見て、ふぅ・・・とオルトレアは安堵のため息を吐く。

 とらえどころのないルフィリオンの様子を見て、オルトレアはこう思った。

 どこかの面倒なタヌキの相手をする方がよほど楽だな・・・と。

 これ以降、オルトレアの国王は、政治・・・特に外交に長けた人物であると言われるようになるのだった。


――――――――――――――――――――


「ねぇ・・・リオン。」


「何?」


 王城のある部屋にて。

 ルフィリオンは豪華な客間を与えられており、現在、フィルミルが遊びに来ていた。


「やっぱり、アルバじゃダメなの?」


「ダメ。私に勝てる人じゃないと。」


「そう・・・そうよね。女の子なら、守ってほしいものね!」


「うん。」


 うなずくルフィリオンを見て、フィルミルはニコッと笑う。

 だが、すぐにさみしそうな表情になった。


「リオン・・・どこかに行かないでね?」


「大丈夫。多分、10年くらいはここにいる。」


「そう?なら、その間に、リオンのお婿さんを見つけないとね。そしたら、いつか、一緒にデートしましょ。」


 楽しそうな未来を夢見て、フィルミルはニコニコと笑う。

 そんな様子のフィルミルを見て、ルフィリオンも微笑んでいた。


「じゃあ、リオン。また明日来るわね!」


「うん。また明日。」


 フィルミルは心配がなくなったようで、部屋の外へと出ていく。

 嬉しそうにスキップしながら、王城内を移動するフィルミルを見て、侍女達が微笑ましそうに見ているのだが、本人は気づいていない。

 知らない間に、マスコットのような存在になっていたフィルミルなのであった。

いかがでしょうか。

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