07話・シーソーゲーム
「シャッフル前のカードの並びを確認しておいてシャッフルの回数を調整すれば、狙ったカードを一番上にするのなんて簡単でしょ? 君だってやってることさ。後は、君が何のカードを出したいかを読んで、それに勝てるカードを出すだけの話だよ」
「テメェ……!」
「ほら、早くカードを並べなよ。今度は僕が勝つからさ」
予定が狂ったジョンは、舌打ちをしてからカードを自陣に並べる。
レオは、その様子を笑いながら見ている。
そして自分のカードも並べ終わると、まず最初に自陣から一枚のカードを選択した。
「選択したカードは、2!」
ディーラーがカードをめくって読み上げる。
そしてレオは、ジョンのカードを選択する前に、ジョンに話しかけた。
「想定外のことで頭に血が昇ったのは分かるけど、先攻決めで使ったカードをシャッフルし直さずに並べちゃあダメだよ」
「なに? ……あっ!?」
「それが、Aでしょ?」
レオが選択したジョンのカードをめくると、宣言通りAであった。
先攻決めに続き、再びレオはジョンのAに2で打ち勝った。
「レオさん、やった!」
ラウラが両手を上げて喜ぶ。
これで一気にレオに30ポイントが入る。
このゲームでの30ポイントは、かなり大きな数字だ。
絵札を三枚とも負かしてようやく30ポイントを超えるのだ。そうそうひっくり返される数字ではない。
「特定のカードに絞って行方を目で追えば、欲しいカードに勝つことは、それほど難しいことじゃあない。このAなんかはまさにその典型で、よりにもよって裏返しながらそのまま場に置いたら、狙い打ちしてくれと言っているようなものだよ」
「……そりゃ、そうだな」
ジョンは、レオの言葉を聞きながら、自分の失策を認めた。
そして一つ深呼吸をすると、気持ちを切り替える。
「テメェが、そこらのボンクラどもよりはデキる奴だってことは、今のでよく分かった。……だが、」
ジョンは、自陣のカードを一枚選択する。
「悪いが俺様は最強なんでな。これしきのことではまだまだ俺様には勝てねぇよ」
ディーラーが、ジョンの場のカードをめくる。
「選択したカードは、2!」
「そしてテメェのAは……、これだな?」
ニヤリと笑って、ジョンがレオの場のカードを選択した。
ディーラーが、そのカードをめくると。
「選択したカードは、A! ジョン様に30ポイントが与えられます」
「ええっ!? そんな!?」
ラウラが、ショックで顔を青くする。
まさか、大幅リードを取った直後に同点に追い付かれるなんて。
「分かったか? 俺様が本気を出せば、これぐらい楽勝なんだよ」
「ふーん……。なるほどね」
レオは、楽しげに眼を細めた。
それなら、と自陣から次のカードを選択する。
「選択したカードは、K!」
「目をつけていたカードは、他にもあるんだ。さっきのゲーム中、ディーラーさんがめくる時に、少しだけクセが付いたカードがある。それは、そのカードさ」
レオが選択したカードは、Q。
これでレオはさらに12ポイントが与えられた。
しかし。
「それなら俺様は、こうだ!」
続いての選択では、なんとジョンは自陣のK、レオのQを選択し、ジョンも12ポイントを得る。
またもやレオの選択を、そっくりそのままやり返したのだ。
その後レオが自陣のJにジョンの10を当てると、ジョンも同様に自陣のJにレオの10を当ててみせた。
その様子に、横で見ているラウラはもう訳が分からなくなる。
(ふたりともなんで、狙ったカードを選べるの……!?)
レオは、まだ理屈を説明してくれるから分かる。
特定のカードを目で追ってるとか、細かい折れ曲がりや反りを記憶しているとか。
ラウラが自分でできるかと言われれば間違いなく無理だが、それでもレオはできているのだということは、分かる。
しかし、ジョンの場合はまるで分からない。
どうして的確に狙ったカードを当てられるのか、ラウラには全く分からなかった。
そして実は、ラウラが大負けした時もそうだった。
最後の最後で大勝負を仕掛けた時、あまりにも的確に完璧な狙い打ちをされたせいで、最後の加点計算が大きく膨れ上がり、結果として借金を背負わされるかたちになってしまったのだ。
それと同じことが、今も目の前で起きている。
そして。
「またまた、俺様の勝ちだな」
終わってみれば、レオが55ポイントに対してジョンは77ポイント。
レオは、最初のゲームでジョンが獲得したポイントとほぼ同ポイントを獲得したにも関わらず、今回のゲームも負けてしまった。




