06話・まずは小手調べ
(有り金どころか、ケツの毛までむしりとって素寒貧にしてやる……! スカした顔しやがって。テメェの顔が絶望に染まるのを見るのが楽しみだぜ!)
ジョンと名乗った仮面の男は、怒りをたぎらせながらレオを睨む。
そしてちらりとラウラの胸元を見て、内心で舌なめずりをする。
(それにせっかく俺様が奴隷落ちさせた女を先に買いやがって。そこそこ仕込みが終わったぐらいで買って飽きるまで遊んでやろうと思ってたのに。こうなったらコイツをボロボロに負かして借金のカタにして、コイツから奪い取ってやるぜ)
「まずは、場代を決めてください」
ディーラーの男が両者に声をかける。
レオが「いくらでもいいの?」と問う。
「最低金額は銀貨一枚。つまり千Gからですが、上限はありませんので、両者の合意があればいくらでも構いません」
「そっか。僕、このゲームをするのは初めてだから、最初の場代は千Gにしてもいいかな?」
「しみったれた奴だな。だが、まぁいい。最初の場代は千Gでスタートだ」
両者、ディーラーに銀貨一枚を投げ渡す。
その後互いの手持ちカードをシャッフルして、一番上のカードをめくる。
出たカードはレオが8、ジョンがJだ。
「先攻は俺様だな」
「それでは続いてカードを配置してください」
ディーラーが促して、レオとジョンはそれぞれの自陣にカードを並べていく。
お互いが十三枚のカードを並べると、まずはジョンが自陣のカードの内の一枚を選択する。
「選択カードは、10!」
ディーラーがカードをめくって読み上げる。
続いてジョンは、レオの並べたカードをじっと凝視し、やがて一枚のカードを選択する。
「選択カードは、8! ジョン様に8ポイントが与えられます」
次に、選択権がレオに移る。
レオは、自陣の残りのカードをじっと見つめた。
「…………。それなら、これかな」
ディーラーが選択したカードをめくる。
「選択カードは、7!」
次にレオが、ジョンの場のカードを選択するのだが、
「選択カードは、3! レオ様に3ポイントが与えられます」
スタートの様子を見ていたラウラが、悔しそうにぐうっ、とうめく。
レオが得たポイントが、ジョンより少なかったからだ。
続いてジョンの選択。
自陣のK、レオのQを選択し、ジョンは12ポイントを得る。
次のレオの選択では、自陣の10をジョンの12にぶつけてしまい、さらにジョンが10ポイントを得た。
「ひぃぃ……っ!」
レオは、ラウラが悲鳴を上げるのを聞いて、おかしそうに笑う。
「どうした色男。さっそく点差が開いたぞ?」
「そうだね。けど、まだまだこれからだよ」
「ケッ、その強がりがいつまでもつかな?」
次のジョンの選択では、ジョンはAを出し、そしてレオのカードはJを選択した。
これにより、さらにジョンに11ポイントが与えられ、この時点でジョンが41ポイント、レオは僅か3ポイントしか与えられていない。
このゲームは、いかに自分のカードより少しだけ弱い相手のカードを選ぶか、が重要になってくる。
Kを出して3に勝つのも、4を出して3に勝つのも、得られるポイントは同じだが、Kで勝った場合は3よりも強いカードに勝つチャンスを潰してしまったとも考えられるわけだ。
逆に、自陣の3や4で、相手のKやAに勝てれば、それは強弱の比べ合いでは負けていても、実質的には勝ちなのだ。
そしてその後も終始ジョン優勢のままお互いにカードを選択していき、最後のカード同士が6と6で引き分けになったところで、最初のゲームが終了した。
ポイントは、レオが18ポイントに対してジョンは56ポイント。
最初のゲームは、ジョンが三倍以上の点差を付けて、レオに圧勝した。
「ひゃはは! なんだなんだ、デカイこと言う割には大したことねぇな!」
「ま、最初はね。あんまり最初から全力を出しても、楽しめないから」
「ぬかせ。この調子なら、テメェに泡吹かすのもすぐかもな。そしてこれよりお楽しみの、加点計算タイムだ」
このゲームは、ポイントの大小で勝敗を決めた後、勝負の内容に応じて、勝者のポイントにボーナスがつく。
一つ目のボーナスが、勝数ボーナス。
カードの強弱の比べ合いで、相手のカードより強かった回数に応じて、ポイントが増加する。
増加量は、五勝で30ポイント、七勝で80ポイント、九勝で180ポイント、十一勝で380ポイント、十三勝で880ポイントだ。
今回のジョンは七勝しているので、80ポイント足されて138ポイントになる。
そこにさらに二つ目のボーナス、連勝ボーナスが乗る。
これは、カードの強弱の比べ合いで、複数回連続で相手より強い数字を出した場合に、その回数に応じてポイントを倍増させていく。
三連勝で二倍、五連勝で三倍、七連勝で四倍、九連勝で五倍、十一連勝で七倍、十三連勝で、倍率は十倍になる。
今回のゲームでジョンは、三連勝までしているので、ポイントはさらに倍。
276ポイントが、このゲームでジョンが取得したポイントになる。
「場代の十分の一をポイントにかけるから、このゲームでの僕の負けは二万七千六百Gということか。なるほど」
レオは、大銀貨三枚を懐から取り出すと、ジョンの目の前に置く。
「けど、まだまだ額が少なすぎたね。せっかく勝ったのに、たかだか三万G足らずだなんて。可哀想だから、お釣りはいらないよ。代わりに次のゲームは、場代を十倍にしようよ」
「レ、レオさん!?」
ラウラが驚いて悲鳴のような声を上げた。
「大丈夫だよラウラちゃん。次は勝てそうな気がするから。それで、どう?」
レオの提案に、ジョンはニヤリと笑う。
(分かりやすい奴だ。負けたから次は賭け代を増やして負けを取り戻そうってんだな。それが自分の首を絞めることになるとも知らずに)
「良いぜ。次の場代は一万Gだ」
「そうこなくっちゃ」
レオとジョンは、ディーラーに大銀貨を投げ渡す。
ディーラーが十三枚のカードを両者に渡して、お互いに手持ちカードをシャッフルした。
そしてジョンが一番上のカードをめくると、Aが出た。
ジョンは当然、このゲームも自分が先攻になると思った。
しかし。
「なんだか、そんな気がしたよ」
「なっ!?」
レオが一番上のカードをめくると、2が出た。
2は、唯一Aに勝てるカードだ。
今度のゲームは、レオが先攻となった。




