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05話・ルール説明


「次は、僕が座ってもいいかな?」


 負けてうなだれた男が帰っていくのを横目に、レオは仮面の男に話しかけた。


「おお、いいぜ。俺様もまだまだ遊び足りないと思ってたところだからよ」


 仮面の男は、背もたれに大きく身体を預けて尊大な態度で頷いた。


「ありがとう。ところで、先ほどのゲームを見させてもらっていたけど、なかなか強いんだね」


「あ? なかなかだって? バカ言うな、俺様は最強さ。さっきのは相手があまりにも弱すぎたからお情けをかけてやっただけだよ。お前こそ、この後負けても吠え面かくなよ?」


「大丈夫さ。僕も強いからね。君を退屈させたりはしないと思うよ?」


「ケッ、どーだか。まぁいい、座れよ。俺様が軽ーく揉んでや……っ!?」


 仮面の男は、レオの後ろに立っていたラウラに気付くと、とたんに怒りのこもった目をレオに向けた。


「おいテメェ、その女どうした……?」


 急に仮面の男の意識が自分に向いたことで、ラウラは驚く。


 まさか自分のことなど覚えていないだろう、と思っていたのだ。


 レオは、ニヤリと笑ってラウラの肩に手を置いた。


「ん? ()()ラウラちゃんが、どうかした?」


 僕の、という部分を強調して言いながら、レオはラウラをぐっと引き寄せる。


 そしてラウラの顔のすぐ側に、これ見よがしに自分の顔を寄せて来るものだから、ラウラもついドキリとして、少し顔が上気した。


 レオが、ラウラにそっと耳打ちをする。


「流れに身を任せて、ノッてきて」


「……?」


 ラウラが僅かに頷いたのを見て、レオはさらに仮面の男を挑発する。


「可愛いでしょ? 先日買ったばかりなんだけど、いやぁ、良い買い物だったよ。何でも言うこと聞いてくれるし、何やっても絶対に怒らないから、毎晩それはもう、たいへんでたいへんで」


「……!」


「昨晩も、可愛らしい声で鳴くもんだから、ついやりすぎちゃってね。おかげでお互い足腰立たなくなって、昼過ぎまで起きられなかったよ」


 ははは、と笑うレオに、ラウラは「なんでこの人こんな根も葉もない嘘を吐いてるんだろう?」と内心で不思議がるものの、


「ね、ラウラちゃん」


 ノッてきて、と言われたので、ラウラはレオの言葉に喜んでみせる。


「うん、わたしレオさんに買ってもらえて良かった。毎日とってもハッピーだよ!」


 実際ラウラは、レオが助けてくれたことについてはハッピーなことだったと思っているので、嘘ではない。


「今日もベッドの上で乱れさせてあげるよ。僕だけしか知らない顔を、今日も見せてね」


「やぁん。もう、レオさんのバカ」


 ラウラがおどけたように恥じらいの表情を浮かべると、仮面の男の唇の端がピクピクとけいれんした。


「おや、どうしたんだい? もらった飴玉を落としてしまった子供みたいな目をしているけど」


「なんだと……!?」


 レオはラウラから離れると、スッと目を細めて冷たく笑う。


「それとも、欲しかったトランペットのためにお金を貯めていたのに、直前で誰かに買われてしまった哀れな子供かな? そんなに直情的な性格じゃあ、なるほど仮面でも着けてないとダメだろうね。表情ですぐに内心を読まれちゃうや」


「テメー……!」


 乱暴に椅子から立ち上がると、仮面の男はレオの胸ぐらを掴み、額がぶつかりそうな距離まで顔を近付ける。


「いい度胸してんな、オイ? 俺様を怒らせるとどうなるか、教えてやろうか? あぁ?」


 突然のことにラウラは驚いて立ちすくみ、仮面の男の護衛はいつでもレオに殴りかかれるように重心を移した。


 しかしレオは、平然とした様子で笑う。


「君を怒らせたらどうかるか? そんなことに興味はないし、教えてもらう必要もないね。僕が興味があるのは、」


 レオがテーブルをトントンと叩く。


「このゲームが面白いかどうか。そして君が本当に強いのかどうか、それだけだよ」


「…………」


「座りなよ。君が本当に強いなら、このゲームで僕を負かしたらいい」


「……その言葉、後悔すんじゃねーぞ」


 仮面の男は乱暴にレオを突き放すと、ドカッと椅子に座り直す。


 レオも落ち着いた様子で襟元を直すと、仮面の男の対面に座った。


 丸メガネのメイドが、二人が席に着いたのを見てゲームのディーラーに声を掛けた。


「新しいカードを。坊っちゃまと、その無礼な男に」


 無言でやり取りを見守っていたディーラーが、静かにカードを取り出した。


 二人の目の前で外箱の封印シールを破り、中のカードを取り出す。


 そしてジョーカー二枚を最初に箱に戻すと、カードの束を四つに分けた。


「お好きな束をお選びください」


 仮面の男がアゴでしゃくって、「先に選べ」とレオに告げる。


「それなら僕は、一番近くにあるこの右端の束にするよ」


「俺様は左端だ」


「分かりました。それぞれ選んだ束をお取りください。残りのカードは回収します」


 レオが右端の束を手に取ると、ハートのAからKまでの十三枚のカードだった。


 おそらく相手側には、別のマークのAからKまでの十三枚のカードが渡っているのだろう。


「そういえば、名乗ってなかったね。僕の名前はレオだ。君の名前は?」


「ジョン・ドゥ」


「それって偽名?」


「たりめーだろ。テメーごときに名乗る名は無ぇよ」


「ま、いっか。それじゃあジョン、始めよう」



 楽しい楽しい、ゲームの時間だ。




 ◇




『サーティーン・ポーカー』



 使用道具、トランプ一組。

 対象人数、二名。


 1、このゲームは、ゲーム終了時に相手より多くのポイントを得たプレイヤーを勝者とする。


 2、両プレイヤーは、AからKまでの十三枚のカードを手持ちカードとする。同じ数字のカードを重複して使用することはできない。


 3、両プレイヤーは初めに、ディーラーに場代を払う。その後十三枚の手持ちカードをシャッフルし、一番上のカードをめくってその強弱を競う。より強いカードを出したほうが先攻となり、ゲームを開始する。同数の場合は差がつくまで二枚目以降のカードをめくる。カードの強弱は、2からKまでは数字通りであり、AはKより強いが、2だけには負ける。


 4、ゲーム開始後、両プレイヤーは自陣に十三枚の手持ちカードを任意の順番で、横一列に裏向きで並べる。カードを並べた後は、ディーラー以外の者がカードに触れてはならない。


 5、先攻のプレイヤーから選択権を得る。選択権を得たプレイヤーは、自陣のカードを一枚選択する。ディーラーは選択されたカードを表向きにし、その後さらに選択権を持つプレイヤーは敵陣のカードを一枚選択する。

 ディーラーは選択されたカードを表向きにし、カードの強弱を判定する。


 6、ディーラーはカードの強弱を判定した後、強いカードを出したプレイヤーに、弱いほうのカードの数字に応じたポイントを与える。2からKまでは、数字通りのポイントとなる。Aは、30ポイントとなる。


 7、ポイント計算終了後、選択権が相手に移る。その後は両プレイヤーが交互に選択権を使用し、両プレイヤーのカードが全て使用された時点で、ゲーム終了となる。


 8、ゲーム終了後、加点計算を行い、勝者は獲得したポイント×場代の十分の一の額を、敗者から受け取る。


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