16話・次なる勝負へ向けて
レオとジョンの真剣勝負から十日ほどたったある日。
レオの借りている宿に手紙が届いた。
手紙の封筒には、ワイルドダック家の家紋で封がされていた。
レオは中身を取り出すと、ラウラとともに目を通していく。
「支払いについて交渉がしたい、だって。明後日の午後二時に、北東地区にあるワイルドダック家が所有する邸宅に来るように書かれてるね」
「それならスミさんも呼ぶ?」
ラウラが問うが、レオは笑って首を振った。
「いや、僕の命を狙うんならもっと早く何かしてきてるよ。これは純粋に、現金だと払い切れないかもしれないから、物品とか権利とかで賄えるものはないか確認したいんじゃないかな?」
「ふーん。まぁ、危なくないなら良いや。こういうのって、わたしもちゃんとおめかししたほうがいいかな?」
ラウラは、当たり前のように支払い交渉についていくつもりのようだ。
そしてレオも、それを当然のことのように受け入れている。
「そうだね、せっかくだからパシっとして行こうか」
◇
二日後。
レオとラウラは指定された番地の邸宅の前にやってきた。
時間は午後一時五十五分ごろ。
レオはおろしたての白スーツ上下姿。
ラウラは以前の勝負の際に着ていたフリフリミニスカメイド服姿だ。
レオたちが着いた時には、邸宅の門扉はすでに大きく開けられていた。
門扉の内側には、真っ白い髪を後ろに撫でつけた初老の男性が立っている。
「ようこそおいでくださいました、レオ様。私、ワイルドダック家にて執事をしておりますジェームズと申します。本日は旦那様から、レオ様をご案内することと、レオ様の要望を確認するよう言い付けられております。さぁ、どうぞ。こちらへ」
ジェームズと名乗った執事に促され、玄関を通って邸宅の中へ。
広々とした玄関ホールを抜けて案内されたのは、真ん中に向かい合わせのソファとローテーブルの置かれた応接室だ。
レオがソファに座り、ラウラは一応その後ろに立って待つことに。
レオが「座りなよー」と言うが、「いやぁ、今のわたしは奴隷のメイドなのでー」とラウラが断る。
少しして、まだ年若い赤髪のメイドが、ティーセットを用意しにきた。
レオは紅茶よりコーヒー派だが、目の前で丁寧に淹れてくれているので、その様子を見つめながら出来上がりを待つ。
「美味しそう。ありがとうね」
一言お礼を言って紅茶を飲むと、ふんわりと甘い香りが口の中に広がる。
一緒に持ってきてくれた焼き菓子をラウラの口に入れながら待っていると、書類束を持ったジェームズが入室してきた。
「たいへんお待たせ致しました」
「だいじょうぶー。美味しいお茶をもらったから」
「お寛ぎいただけているようでなによりです。それではさっそく、お話をお聞きしたいのですが」
ジェームズの言葉に頷き、レオも話し合いの態勢となる。
「それならまずは、契約はきちんと守ってくれるということで問題はないかどうか、それを聞きたいんだけど。どうなの?」
「はい。旦那様からのお言葉をそのままお伝えしますと、『馬鹿息子が迷惑を掛けた。今回息子がしでかしたことを黙っていてくれるなら、我が家の名と歴史にかけて期日までに必ず支払う』とのことです」
「分かった。それなら次は、ぶっちゃけた話、現金でどれだけ用意できそうなの?」
「現時点でご用意できているのが二億七千万Gで、これなら今日この後すぐにでもお支払いできます。残額についても、期日までお待ちいただけるのであれば全額現金でお支払いすることは可能です」
「へぇ、そうなんだ」
なんと、全額現金でも可能だという。
さすがは伯爵家、それなりの蓄えはあるらしい。
「ただ、我々としましても今回の契約はできるだけ速やかに終結させたいと考えておりまして、もしレオ様が現金での支払いにこだわりがないのであれば、こちらのリストに現在我が家が保有する芸術品、貴重品等々を記載してありますので、こちらで支払いに代えさせていただくことも可能です」
レオは、受け取った目録をパラパラとめくりながら、そこに書かれているものに目を通していく。
貴金属や宝石、絵画に骨董品、武器や防具に魔導機械、魔術の付与された装飾品や霊薬等もリストに載っている。
そしてその中で、レオは良いものを見つけた。
「ラウラちゃん、これ、どう思う?」
「どれ? ……ほほーぅ、もしかして、これ?」
「そうそう」
「でも、そうなるとこれとか、これも欲しくない?」
「そうだね。あと、別で必要なものがある。……ねぇ、ジェームズさん、ものは相談なんだけどさ」
なんなりとお申し付けください、とジェームズが答えたのを聞いてから、レオは支払いの内容について細かく話し合いを行っていった。
そして、この話し合いの結果によって。
大金の荒波に巻き込まれ、ギャンブルの魔の手に掴まれて翻弄される人間たちがまた数人出てくるのだが、それはまた、次のお話。
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