5、じゃあ最初から、出会いたくなかった。
夏休み、毎日宿題漬けの日々を送っていた根暗ヲタクの私は、遊ぶなんてこと一つも考えてなかった。
スマホを開くと『リア充グループ』というグループメールに招待されていた。
参加するとそこには私のクラスのリア充が私含め、4ペアもいた。
中には、付き合っていると知らなかったペアも。
何を話すのかと思いきや、夏休みの話になった。
『夏休み、暇〜?:朱里』
『私暇〜てかみんな暇でしょ:朋花』
『暇やな:咲』
『俺も〜:浩』
『じゃあ、遊ぼ〜:美玖』
「いいよ〜っと」
『どこで遊ぶ〜?:瀬奈』
『今から浩の家の近くの公園にしようぜ:咲』
『りょ:浩』
『分かった〜:朋花』
『OK:朱里』
『はーい:瀬奈』
『俺、ここちゃんと行くから:龍樹』
『うん、そういうことで:心那』
『(仲良いな笑)|咲』
『俺遅くなるわ:康太』
『りょ:咲』
ピロリン
咲から浩くんの家の近くの地図の写真が送られてきた。
「ここってスーパーの近くか」
『ありがとう:瀬奈』
『いいえ:咲』
何となくだが分かった気がする。
バックに持ち物を詰め、自転車の鍵を外し玄関から出した。
自転車を走らせると風が涼しかった。
夏だって、秋だって、冬だって、春だって、いつだって吹いてくる風は冷たい。
亡くなってしまった人の肌のようだ。
*
つくとみんな仲良く水風船で遊んでいた。
よく見ると男子対女子だった。
流石に卑怯だと思った私は、次々と水をかけ始めた。
濡れたくないと思う女子がたくさんいる中で唯一私だけがびしょ濡れだった。
めっちゃくちゃ前は水が大嫌いだった。
大きなプールに潜るのも、目の周りが濡れることも、水を浴びることさえも嫌いだった。
でも一つ、スイミングプールに少し行ってたおかげか、水が好きになった。
もう一つ、水泳のアニメの影響で好きになれた。
今ではまた水泳をしたいと思うほどだった。
少し遊んで康太と写真を撮っていた。
楽しかった。
その時間は。
この日遊んだ時はすとぽりの24時間リレー生放送が行われていた。
急に聞こえてきた莉斗さんの声に反応した私は声が聞こえた方に行った。
すると龍樹くんのスマホからその声は聞こえていた。
「龍樹くん、ちょっとスマホ借りていい?」
「うん」
「うわ、やば。すとぽりや」
「はい、ありがと」
「うん」
それから少しして、女子たち一人一人が急に泣き始めた。
「大丈夫?」と心配するも頷くだけ。
何かあったと聞けば、無言の時間が流れた。
「私帰るね」
心那ちゃんが帰って行った。
「俺も帰るわ」
龍樹くんが帰った。
次第に人は減って行き、ちょうどいいタイミングで私も帰った。
何故だろう、こんな変な空気が流れたのは。
何故だろう、みんなおかしかったのは。
家に着くと、一件のメールが届いていた。
『ねえねえ、瀬奈ちゃん:心那』
『ん?:瀬奈』
『今日、何であんなことしたの?:心那』
『あんなことって?:瀬奈』
『みんな泣いてたじゃん:心那』
『何で泣いてたの?:瀬奈』
『まだ分からないの?瀬奈ちゃんが男子たちと仲良くするからみんな泣いてたんだよ:心那』
『え?私のせいだったの?:瀬奈』
『そうだよ、私だって朱里だってみんな怒ってるんだよ:心那』
『そうなんだ、ごめんね:瀬奈』
『他の子にも謝ったら?:心那』
『うん、そうするね:瀬奈』
私はこの瞬間に思った。
このクラスに私がいなければ、みんな楽だった。
康太と付き合わなければ。
みんな、私に出会ってなければ、幸せだった。
なら最初から、出会わなければ良かった。
最初から、出会いたくなかった。
次回、 6、きっと嫌われる、嫌われた。 です。現在別の作品も書いているので投稿遅くなります。