おじいさんとおあばあさんは桃から出てきたその子供に桃太郎と名付けました。
「とりあえず、この子はどうしますかね?」
「桃に入れるとは、手の込んだ捨て子じゃのう。」
捨て子ちゃうわ。
桃を食い終わったジジィとババァがようやく自分に興味を持ち始めた。
「いつまでも、子供子供っていってるのもなんですし、何か名前をつけてあげません?」
「めんどくさいし、桃から出てきたし、とりあえず『桃太郎』でええじゃろ。」
「まあ、そうですね。」
くそう。俺は多分間違った家庭に拾われてしまった。
いや、拾われ子なんてこんなもんなのだろうか。
ともかく、ともかくだ。
どうやら俺は桃太郎に転生したらしい。
・・・うーん。
思ってたのと違う!
ちょっと萎える。
ファンタジーが良かったんだよ。
これもファンタジーっちゃファンタジーなんだけどさ。
しかも勇者っちゃあ勇者だわな。それも日本一有名な勇者だ。
でも、こうじゃないんだよなぁ・・・。
クライアントとデベロッパー間の仕様の食い違いって、こういう事なんだろうな。
「ほれ、桃食うか?桃。」ジジィが箸で桃を食わそうとしてくる。
「ばぶばぶ!!」
やだよ!
そこウンコついてるからって取り除いてたとこじゃねえか!
「桃は嫌いか。」
そういうことじゃねぇ。
「こっちなら、食うかの?」
ジジィは後ろの棚から、干物みたいなのを取り出して俺に食わせた。
固っ!そして臭っ
「イノシシの干し肉も嫌いか。」ジジィが言った。「酒によう合うのに。」
てめぇ、歯も生えてない赤ん坊になんてもん喰わしてんだよ!
「じいさん、じいさん、赤ん坊に食べ物なんてまだ早いですよ。」
分かってたんなら、後ろで爆笑してないで早く止めろやババァ!
「首座っとるみたいだし。いけるじゃろ。」
「そんなことないですよ。まだまだお乳のほうがいいでちゅよねー。」ババァが俺に言った。
「そうは言っても、今は乳など無いしのう。」ジジィが言った。「この桃の残りカス絞ったら飲まんかの?」
飲まんぞ。
「私がお乳出せれば良かったんですけれどねぇ。」ババァが言った。
「お前の大事な乳房をこんなどこの馬の骨とも分らん男ごときに吸わせるなんてできるかっ!」ジジィが吠えた。
何言ってんの?
赤ん坊にジェラシー燃やすなよ。
「まあっ、おじいさんったら・・・。」ばあさんは頬を赤らめて、じいさんをじっと見つめた。
「とみこ・・・。」じいさんも見つめ返す。
ジジィの手がそっと、とみこの胸元に伸びる。
うそでしょ!?
なに赤ん坊の前でおっ始めてんの!?
グロいグロいグロいグロい!
やめて?
やめろしっ!!