表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

追伸 春を知らない貴方へ

作者: hal

置き手紙のようなものだから

何も知らない貴方が読んでいても

僕には関係ない。


この手紙が読まれる頃には

僕はもうこの世にいないからさ

雑書きのメモ帳みたいだけど

書いたままの詩を一節

_____________________________。


歌方(うたかた)


忘れたいのさ 高野に咲いた花

分からないのさ あの日のこと


思い出は ほろほろと

胸の奥は ころころと


様変わりする 季節の中

ただ夜風に吹かれ 愛を呼んだ


泡沫のように浮かんで割れて

行く宛てもなく 流れてこう

さぁ 夢も希望も全部置いてさ

ただただ 貴方との日々を想い乗せて


忘れたいのだ 心に空いた穴

分からないからさ あの陽を見るんだ


すれ違うばかり 君との間

また言葉に打たれ 哀を知った


歌方のように憂いて鳴いて

聞く耳なくとも 奏でよう

さぁ 夢も希望も全部持ってさ

ただただ 貴方との時間を思い出して


泡沫のように浮かんで割れて

行く宛てもなく 流れてこう

さぁ 夢も希望も全部捨ててさ

ただただ 貴方の声を思い出して


_____________________________。



【読者】


一途な貴方に二回目の嘘をつく

三つ数える間もなく涙が四粒零れる


私は貴方の何になる 貴方は私の支えなのに

私は貴方に手を出す 落ちる落ちる夜の先へ


もういっそ私の全部を知ってくれ

この苦しみを貴方にもあげるから

無垢な笑顔も飲み込んで いつかの終わりを見よう

最終列車の汽笛に貴方の声を溶かして

ほら もう世界は透明だ

それが 言えたら報われたのか?


誤解ばかりで双六の人生のよう

七日も経てば八月がやってくる


貴方は私の何者か 私は貴方を呪うばかり

貴方は私の手を引く 堕ちる堕ちる道の外れに


もう一歩進めば全部見えてしまう

後悔も哀も私だけのものさ

その優しさも押し戻して もしもの夢を描こう

最終列車の扉はもうすぐ閉まる

ほら もう貴方は自由さ

それも 言えぬまま去るのさ!


読んでわかるものか 飲んで苦しむだけさ

毒者を知らぬ貴方が 私の孤独を知るものか

それでいい 何も知らないままが綺麗だから


もういっそ私の全部忘れてくれ

この思い出も後で燃やすから

無垢な笑顔を飲み込んで いつもの世界を見よう

最終列車はもう走りだす 行く宛てなく走りだす

ほら もう世界は透明だ

そして 貴方は遠くに消えていく



_____________________________。



【秋、外灯】


風が通り過ぎた

私を透けて流れていく

この感覚はもう飽きた

ポケットに手を入れる


君が通り過ぎた

私を忘れ歩いていく

この感覚にもう慣れた

ぽろっと夢が垂れる


遠い誰かのことなんかを

想わなくなるのは明白だ

見えない何かを待つことは それだけで退屈だから

思い出の風景を眺めて

ただあの頃に憧れるだけ


赤い日々が またひとつ

目の前で 枯れて 落ちる

秋を越せない 私の心は夜道の外灯

ピアノを弾く指が躓く


時が通り過ぎた

私を置いて進んでいく

この感覚はもう嫌だ

ぽつんと 足が竦む


遠い昔のことなんかを

思い浮かべてる毎日だ

あの映画の結末なんかより 君の涙の方が綺麗だから

忘れぬよう胸に入れ

ただあの頃に憧れるだけ あの頃を恨むだけ


赤い日々が もう終わる

目の前は 白い 孤独さ

秋を越せない 私の体は(ひぐらし)の一生

ピアノを弾く指が(かじか)


遠い海を見たんだ

想うより鮮明だ

水面に映る人生は 溶けて呑まれるだけ

忘れたい 忘れたい 忘れたくない

飽きられた夢を離さずに

叶わなくてもそれでいいから


青い夏にも 白い冬よりも

君との赤い秋を


淡い日々は もう終わる

目の前は 暗い 孤独さ

哀を越せない 私の想いは夜道の外灯


赤い日々は もう消える

あの君は 遠い 記憶だ

秋を越せない 私の想いは


どこ吹く風の中


_____________________________。



春を知らない貴方へ


あれから世界はどうなったかなんて分からないけれど

春にはいつも桜が咲くでしょう


別れに悲しみはつきもので

次第にどこか記憶の隅へ溶けていく

あの日の感情は明日にはもう消えていて

飽きがくるのをただ待つだけ


愛はいつか哀になって

快は悔になる

上手いことを言いたいんじゃなくて

本当にそうなる時がくる


春はいつやって来るのでしょうか

貴方はきっと知らないまま春が去るのをただ見てる


あれから少しばかり生きていたのは未練があったから

人を呪うのは心地がいいけどそれ以上に心が苦しい

愛を捨てた なけなしの愛だったのだろうか

元よりあったかすら分からない想いは 今 溶けて消えた


友に先立つことを伝えた ちゃんと伝えた

涙を流していた けど それも一瞬だ


やっと穴が塞がった

やっとだ


春を知らない貴方へ

どうか

掲載した詩は、自作曲に使おうとしていた物語の一部です。


本投稿にてhalの執筆も終わりです。

どうか皆様の心に残りますように。

そして忘れてください、もう囚われないでください。

貴方は自由だから。


さようなら、どうか元気で。


hal

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] やはり最終列車で出発してしまうのですね。 ここで出会えたことを忘れるなんて、できません。 あなたのこと、もっと知りたかった。 この歌詞だって歌って聞かせて欲しかった。 忘れてと言われても、…
[一言]  こんにちは、元気です。貴方はどうですか?    そして、私はあなたを忘れることができませんが、心の深いところに飾ることはできます。なので、飾っておきます。  私はこのくだらないけども、愛…
2021/06/13 00:17 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ